狂い桜
掲載日:2015/05/04
今宵、泡沫の夢となりて、貴女の涙を拭いましょう。
枯れ木の我が身を一時人の身に変えて、貴女の思いし人の代わりを。
日だまりの笑顔に枯の身は浮かれ、泣き崩れるその姿に花さえも忘れた。
この憐れな枯木をお笑いだろうか?
儚き一瞬の願いに身を散らす私を、残酷だと月は諭した。
それはどちらの願いのことか?
人の身に化けて迄触れても、その眼差しが私を知ることはなく。
成ればいっそうの事、連れて逝こうか?
抱き締めて、笑う貴女に唇を寄せて。
共に在りたいと―――――――
嗚呼、月よ。
お前は正しかった。
置いて逝く辛さに、空の身が啼く。
色の無い餞は狂い咲きの。
透けて朽ちる私にすがる貴女が、堪らなく愛しい。
月よ。少しの間だけ、その光を曇らせてはくれまいか
私の姿を隠しておくれ。
人の写しを保てずに。
月よ。少しの間だけ、その身を隠してはくれまいか。
私の願いを隠しておくれ。
花よりも赤い雫が見えぬように。
せめて最後は痛まぬように。
そしてその夜、私達は朽ちたのだ。




