水泡に帰す
進めど進めど、桃モドキの木が続いている。
体感では、30分程歩いた筈なのだが終わりが見えない。
流石に繁殖し過ぎだろうとは思うが食料に困らないという点では良いことだろう。
更に30分程歩いただろうか。
やっと黄色の果実がない、普通の木々が見えてきた。
やっと、抜け出たとも思ったが、先を見る限り木々は永遠と続いてるように感じてしまう。
もう目の前の木でも伐採して仮住まいでも作った方がいいかと思ってきた。
木の直径は大体25センチ位だろう。
桃モドキより、硬い事も考えると正直やる気が出ない。
後一時間位歩いて何も無ければ、諦めて伐採する事にしよう。
普通の木々の合間を進む事にした。
更に20分も歩いた所で、少し先の場所に今までの道のりにはない箇所を見つけた。
地面から生えている雑草などが、踏まれたような跡が有ったのだ。
思わずその場所に走り寄る。
すぐに雑草が踏まれている付近の地面を確認してみた。
「人の足跡ではないか……はぁ……」
土部分に見事に動物の足跡らしきものを見つけ、思わず溜め息をついてしまう。
踏まれて、獣道が出来たのだろうか?
足跡の先を見れば真っ直ぐに道が出来ている。
人の足跡でなかったのは残念だが、獣道があると云うことは近くに水源がある可能性が高いと思い直す。
目的地が有るわけではないので、このまま獣道を進む事にした。
「おぉー!川だ!」
10分も歩くと、目下には河原が広がっていた。
途中から土に小さな石が混ざっていた為、もしかしてとは思ったが
見事に川があった。
少々段差があり、50センチ程の高さから降りる。
水の純度はどうだろうかと確認の為に、川岸に近寄ってみる。
川幅は5~6メートルはあるだろう。見た感じ底も見える程に透き通っていた。底もそんなに深くは無さそうだ。
良く川を観察してみると、エビらしきものが見える。
このまま飲んでも問題無さそうだ。
手に水を掬い、飲み込んでいく。
「っぷはー、生き返る!」
桃モドキで多少水分補給出来ていたとはいえ、やはり体が水分を欲していたのだろう。
思わず親父臭い台詞が口に出てしまう。
水分の補給も済み、慌てて周囲を見渡してみる。
考えてみれば、獣道を通って来たのだから何かしらいる可能性を忘れていた。
幸い獣らしきものは、存在していなかった。
とはいえ水に集中し過ぎて、確認を怠る自分がバカ過ぎる。
これからは、先に確認をしないといけないと自分を戒める。
改めて、ゆっくりと周囲を確認していく。
対岸には、3メートル程の高さの崖がある。そこから先は木々が邪魔をして特には見えない。
自分が来た道側を見てみると。此方も3メートル程の崖がある。
先程通った道付近は何度も通ったのか、崩れたのかは分からないが他の所よりも低くなっており坂道のようになっていた。
下流側、上流側は見ただけではどこまで続いているのか分からない。
さて、此所からどうしようか。
やはり、川と桃モドキの中間ら辺で伐採して仮住まいを作るべきかな……。
桃モドキで思い出してしまったが、水源を見つけた今、水を得る為のあの苦労は全く持って意味が無かった事になる……。
「はぁー……」
思わず溜め息が出るのも仕方ないというものだろう。
お読みいただきましてありがとうございます。
次回話もよろしくお願いします。
(2014/11/21) 字下げ修正