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頂上到達

 坂道を登りきった先には、奥行きがある草原が広がっていた。草原の周囲には木々が植えてあり、様々な果実が実っている。林檎の隣に葡萄が成っていたりと季節感があったものではないが。

 少し奥に目線をやれば、大きな湖が見える。俺達が使用していた川の水はそこから繋がっているようだ。

 楽園と言われれば信じてしまいそうだ。


 センが言っていた石板を探して見るも見当たらない。

「石板はどこにあるんだ?」

「ここからだと反対側だね。丁度湖の向こう側だよ」

「まだ歩くんですね……」

 どうやら此方からでは見えないようだった。

 歩き疲れてはいるが仕方無く、湖の反対側に回る事にした。



 反対側な近づくと、宙に立体的な島のような物が発光するように写し出されているのが目に入る。恐らくは彼処に石板があるのだろう。

 近付いて見ると、立体的な地図の山頂部に三つの青い点がある。

 センの言葉通りであれば、これは人を現しているようだ。


 石板を見ると、『生存者よ集え』日本語でそれだけ記述されている。どう見ても人工物だ。無人島では無かったのだろうか。


 再度地図を覗いてみる。山の周囲に森が広がり、森が途切れると砂浜になっている。そして島の片側を横断するように川が伸びていた。これがこの島を現しているのなら、人が住んでいるような場所は見当たらない。


「あれ?点が減ってる……?」

 センの呟きを受け、地図の点を見ていく。

 川を挟んで反対になるように森の中に一つずつ。俺達が来た方向とは逆側にあたる山の中腹に一つ。山の山頂に三つ。

 山頂は俺達を指しているとして、残りは三つ。恐らくはここに人がいるのだろう。


「……最初は何個あったんですか?」

「昨日見たときは10個くらい青い点が合ったんだけど……」

 二人とも暗い表情で地図を見ている。


 点が減った……つまり人が居なくなったと云う事だ。人が唐突に消滅するなんてあり得ない。ということは、死んだのだろう……。

 二人も口には出さないが、暗い表情を見る限り理解しているようだ。


 これ以上地図を見ても仕方ない。地図を消そうと思い、石板に触れてみる。触れたら地図が出てくるなら、再度押せば消えるだろうと考えての事だ。


「え、なんですかこれ……」

 ちよりの絶句する声が聞こえる。


 無理もないだろう。

 石板に触れたとたん、地図に変化があったのだ。それも消える事なく、地図上に異常な数の赤い点が浮き上がってくる。特に森の所々に集中している。

 山側には数少ないが、赤い点が他のものよりも大きく表示されていた。


「これは、獣か……?流石に人ではないと思うんだが……」

「ぇ、獣ってさっきの熊が一杯って事!?」

「いや、流石に熊限定ってことはないだろ……。というかそれは本当に嫌だ」

「違うんだ……残念。宝石取り放題と思ったんだけどなー」

「残念です……」


 ……女性陣の反応がおかしい。センはまだしも、ちよりまで残念がっている。さっきは熊に脅えていなかったか……ちよりさん?

 センに毒されたのか、環境に毒されたのか……何故か娘を持つ父親の気分になってくる。父親になった記憶はないけど。


 思わずはぁーっと溜め息を付き、空を見上げる。

 月明かりはないが、空一杯の星空で心が洗われるようだ(現実逃避がはかどる)


 隣では、ダイヤモンドがどうとか、耳に入るが気のせいだろう。

 気のせいと云う事にしてくれ。




 閑話休題(それはさておき)、赤い点だ。

 山頂付近には赤い点が存在していない為、いきなり襲われると云う事もないだろう。


 それならばと、夜営の準備を開始する。

 二人に焚き火用に枝を拾ってくるように頼み、俺は石板の付近でシャベルを使用して穴を掘る。

 辺りが草原になっている為、火が移らないように広い範囲の土を掘り返す。

 掘り返した範囲の中心に半径10センチ程の穴を開ける。深さは適当な所で止めた。空気の通り道の為に、Φの字に成るように溝を作る。

 そこに丁度枝を広い集めて来た、二人が帰ってきた。

 その両腕には、枝が積まれている。センのピアノ線には薫製肉の他に果物や野菜らしきものが乗っていた。ついでに採ったのだろう。


 枝を貰い、穴の中にセットしているとあることに気づいた。

「あ、発火装置忘れてた……」

 食料を優先して、他の道具の存在を忘れていたのだ。

 今から作るのは面倒だと考えていると、先程統合した時の特徴を思い出す。

 そう、『炎熱化』だ。

 何処まで熱くなるかは試していないが、やってみる事にした。


 手元に呼び出したジャベリンの刃先を、枝に向けて触れる。

 熱くなれと考えると、ボッという音と共に刃先全体に炎が纏わりつく。あっという間に枝に燃え移り、竈に火が回った。


「おぉー……、便利だわこれ」

 火の用意が容易になった。……いや、洒落ではないのだが。

 しかし、竈の近くのせいか熱い。『炎熱無効』が効いてないようだ。火に手を近づけるも熱さで触れる事は出来そうになかった。


 ジャベリンの持ち手である棒部分を火に当ててみる。見た目、手触り共に木製だ。本来であれば燃えるだろうが、焦げる様相も見えない。

 火から引き上げ、火に炙った所を触ってみるも熱さを感じない。『炎熱無効』はどうやらジャベリンのみが対象だったようだ。残念。


お読みいただきましてありがとうございます。

次回話もよろしくお願いします。


(2014/12/10) 地図の描写加筆

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