ナイフの謎深まる
右手付近を見てみるが何もない。
ナイフの幻覚でも見ていたのか?
いや、感触は確かにあった。
……うん、訳がわからない。
さっきから同じ事ばかり考えてる気がするが、訳がわからない以外何もわからん。
とりあえず、もう一度周囲を確認してみる。
目の前に広がるのは、周囲に土地が一切見えない広い海。どこまで続いてるかもわからない白い砂浜。これまたどこまでも広がっていそうな森。
「訳がわからん……」
ついに口に出してしまった。
現実逃避のために周囲を見たが、余計に酷い現実を直視した気がする。
もしも、ここが無人島ならば刃物は必須だろうと思い、仕方なくナイフが有った場所に意識を戻してみる。
周囲にないならば、砂の中にでも入ったのかと思い、刃で手を切らないように、恐る恐る砂を手で掻いてみるが、見つからない。
少し場所を変えても出てこなかった。
「いい加減、ナイフ出てこいよ……」
そうぼやくと同時に唐突に右手に重みが生まれる。恐る恐る見ると、そこには先程まで探していたナイフがあった。
「……は?」
砂を掻こうとした時、右手付近にナイフは無かったはずだ。
いきなりその場に現れたとしか表現が出来なかった。
……もしかしてだが、出ろって言ったのが原因だろうか。
じゃあ、消えたのは何故だろう……。
触っただけで、何か言った訳でもないのにな。
一応試してみることにした。
ナイフよ消えろ!と思ってみる。
だが何も起こらない。
「ナイフよ消えろ!」
ものは試しと思い、言葉に出してみると、右手の重みが無くなり。ナイフが無くなっていた。
まさかとは思ったが、本当に消えてしまった……。
「ナイフよ出ろ!」
叫ぶと同時にまた右手にナイフの重みが出現していた。
結局最初に消えた理由が分からないが、発言することで出し入れ出来るようだ。
正直気味が悪い。
だが、持ち物が何もないよりはマシだろう。
一応ナイフを調べてみるが、どう見てもただの果物ナイフにしか見えない。
マジックの種か何かあると思ったのだがそんなものは見当たらない。そもそも物が消えるマジックの種がどんなものかも想像が付かないが。
まぁ、いいかと納得して次の行動を考えることにした。
……冷静に考えれば、質量保存の法則を無視してるのだが。
今の俺には、そんなことを考える余裕が有るわけなかった。