生命力って凄い
ウサギも捌き終わり、ナイフの考察でもしようと思っていたが流石に臓物やら血やらが散らばっている状況で考えれる程精神が強いわけではない。
とりあえず、臓物は土にでも埋めれば良いだろうと思う。
問題は、ここが河原で小石ばかりな点だろう。
すぐ近くに森があるが、高さ3メートルの崖を登る必要がある。
仕方ないが、ここは川に流すか……。
「ナイフ、消えろ」
まだ温もりを感じる臓物や、小さな手足、勿体ないが皮を両手で持ち川に流す。
「さらば!ウサ公!」
お見送りを済ませ、今度は地面に散っている血に視線を移すがどうしようもない。
地面は小石だらけだし、そのうち流れるだろうと判断する。
次に肉を持って、川で洗う。
やはり血がついていたようで、川の流れに沿って血が流れていく。
血が流れなくなるのを確認してから、肉を持って対岸に渡る事にした。
恐らく血がある側にいたいと考える人間は少ないだろう。
それに血の臭いで他の獣が来ても厄介だしな。
さしあたって問題もなく、元の岸側に戻れた。
さて、先程の考察を……と思ったが流石に肉をそのまま持ち続けたくはない。
先程の場所まで戻って、樹から大きめの葉でも採ってくるかな。
一応上流側を確認してみる。
結構遠くだが、緑色が見える。
恐らく樹でも倒れているのか?
一度戻るよりは、進んだ方が無駄もないだろうと思い上流に足を歩める。
「植物の生命力って凄いんだな……」
先程まで樹が倒れていると思っていた場所まで来たのだが、倒れていたわけではないようだ。
横から生えていた。
崖を見てみれば、地面には根っこが見える。高さ50センチ程の所から、枝が別れ出て伸びているようだ。
よく土に埋もれながらも育ったなっと思わず感慨深くなってしまう。
感動してる場合じゃなかった。
葉を見る限りそこまで大きくはない。
崖の上を見ると、横から生えている樹よりも葉が大きく見える。
川岸に近寄って、水の中に円上になるように少し大きめの石を並べた。
その円の中に肉を置き、その上に重しがわりに石を置く。
そして横から生えている樹まで戻り、枝を足場にして崖上に登る事にした。
足場にした枝がしなる。
流石に無理があったかな?
いや、この樹の生命力を俺は無駄にはしないと心に誓い、一気に力を入れて崖上に登った。
足元からまるで何かが折れるような音が聞こえたがきっと気のせいだろう、うん。
崖上の樹は、手を伸ばせば葉に届くようだ。
とりあえず一枚取ってみると、バナナの葉とまではいかないが結構な大きさをしていた。
一枚で肉を包めそうだが何かと使えそうだと思い、追加で3枚程取る。
あとは、紐代わりに蔓があれば良いのだが、この樹には無さそうだ。
周囲の樹を見てみると、少し奥まった樹に巻きついている。
近づき蔓を取る。予備にこちらも3本ほど採っておく。
葉を蔓で一塊にして、最後に胴体部分に蔓で巻き付けていた。
あとはさっさと元の崖上まで戻る。
河原に戻るためとはいえ、高さ3メートルをジャンプは流石にしたくない。
先程のウサギのようになるのは御免だ。
崖の端に手をかけぶら下がりながら地面に落ちる。
足に強い衝撃が走るが、高さでいえば半分以下になったのだから直接落ちるよりはマシであろう。
考えてみれば、この靴では衝撃も吸収されやしない。
横から生えていた樹を、出来るだけ目に入れず肉のある川岸に行く。
石をどかし、肉を取り出すと結構川の水のお陰か冷えていた。
葉で肉を巻き、蔓でバラけないように結びつける。
最後に蔓で持ち手を作り、完成として良いだろう。
ナイフの考察……と行きたいがそろそろ真面目に寝床を探さないと不味い。
日はまだ傾いてはいないが、日が暮れる前に作らないと手元も見えなくなるだろう。
後一時間程歩いて何もなければ、戻って伐採して作るか。
……あれ?デシャブというやつか?
先程も同じ事を考えたような気がする……。
まぁ、そんなこともあるか。
お読みいただきましてありがとうございます。
次回話もよろしくお願い致します。
(2014/11/21) 字下げ修正




