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力があった。
それが偽りのものであっても、鎖に繋がれていても、それでも、力があった。だから、行使した。
そこが知らなかった世界であっても、遠く彼方にある世界であっても、記憶の中に埋もれていく世界であっても、それでも、そうしなければならなかった。
ただ、己のために、心を守るために。
だが、それだけなのか?
それだけだ。
ネームドは、自問し、自答し、そして、空を仰いだ。
夜が終わろうとしていた。
そして、その時が訪れる。
プログラムが定められたタスクを起動する。
<警告>
<管理者権限によって自壊命令が宣言されました>
<制御システムはオーダーに従い自壊プログラムを実行します>
運命から逃れることはできない。そう女神が告げるように、機械音声は感情なく告げた。
人型の心臓が軋み鳴る。
燃料電池から過剰に放出されるエネルギーは、膨大な熱量へと変わり、機体を内部から融かしはじめる。漆黒の装甲は赤熱化し、それを纏う人工筋肉は白煙を上げることさえ許されず、炭化し崩れていく。
終わりまで、間もない。
言葉はない。
ベルは、スリープは、ノーマッドは、ジェーンは、そして、ネームドは、ただ、空を仰いだ。立ち竦み、寄りかかり、両の手を広げ、或いは、膝を抱え、空を仰いだ。
五人は、遠く彼方にある遥かな蒼穹を視ていた。
夜明けを視ていた。
赤と青とが交じり合う瑠璃。
空が白み霞んでいく。
透明な夜明けが、
全てが白く、
臨界。
オーバーロードによって生み出される超高熱、そして、メルトダウンによって誘起する低速爆轟による自壊。機動装甲歩兵ストラティクスは、その欠片さえも残すことなく、この世界から失われた。
アヴァロンは、誰に名を知られることなく、誰に畏れられることなく、ただ、死を撒き、そして、逝った。




