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Links / Revolutionized Warfare  作者: やたか
第七章「Enemy Territory」
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 野戦においては、数の優位は絶対ではない。夜間であれば、優位は優位と呼ぶに相応しいものでさえなくなる。


 軍用犬部隊が先陣を切り、横隊に組んだ掃討部隊が、それを追って領域を制圧をしていく。


 基地を襲撃したノーマッド、スリープを追った部隊が取った戦術は、合理的であり、効率的だった。部隊の練度は高く、統制も取れていた。その行軍は美しく、その速度は称賛に値するものだった。


 撤退する敵部隊を追い込むことは、時間の問題である。


 追う者たちは、そう考えていた。だが、そうはならなかった。


 一面的には、そうなっている。襲撃者と追跡者の相対距離は狭まり、交戦の時は迫っていた。だが、追い込んだわけではない。ただ、追いついた。いや、追いつかせてもらった。それだけだった。


「スリープより、ノーマッド、先行する部隊がポイントD-3に侵入」


 機動装甲歩兵に夜はない。微光暗視装置、熱線映像装置、衛星データリンクによる位置情報把握、光のない世界においても、全てが視えている。


 いや、全てと言うには、語弊がある。林立する木々の間に浮かぶ、茫洋とした無数の白い輪郭。その人型の表情だけは、窺い知ることができない。だが、それ以外は視えている。


 そう、視えていた。視ていた。俯瞰していた。


 先行する軍用犬部隊は気づかない。


 軍用犬は匂いを追う。だが、言うまでもなく、機動装甲歩兵が人の匂いを放つことはない。


「本隊が侵入」

「ノーマッドより、スリープ、了解。衝撃に警戒を、樹から落ちるなよ」


 間もなく、重く重い音が鳴り響き、数瞬後、夜の森は軋むように震えた。


 狩られる者たちは、狩る者を追っていた。それに気づいた時には、遅かった。


 軍用犬たちは人の匂いを正確に追っていた。だが、人でないものが、人の匂いを放つわけがない。だから、襲撃者たる機動装甲歩兵を追えていたわけではない。


 ならば、何を追っていたのか?


 それは対軍用犬を想定して持ち込まれたブービートラップに他ならない。


 微かな破音が森に虚しく響き、猟犬の息遣いは失われた。


 続いて、厳かな暴音が響く。


 ブービートラップに連動して、東西に線を引くようにして設置された導爆索が一斉に起爆し、土と人を跳ね上げ、追跡部隊を前後に分断する。


 だが、まだ終わらない。


 樹上から人を瞰視する黒い人型は、その手に握っていたワイヤーをゆっくりと引き絞った。瞬間、闇を裂く光と音と共に、7.62x39mm弾が虚空へとばら撒かれた。ワイヤーは樹上から、周囲の樹の根元に向かい、そして、AK-47のトリガへ括りつけられていた。


 中ることを期待してはいない。目的は、光と音、怖れを撒くことこそにある。


 爆導索による制圧から逃れた追撃部隊を次に襲ったのは、展開する部隊、その中心部から放たれた銃撃だった。


 惑わざるを得ない。そこに敵などいるはずがない。だが、撃たれている。攻撃されている。それが事実だった。


 惑いは、怖れとなり、そして、遂に、誰かがトリガを引いた。同調するように、一人、また一人、トリガを引いていく。意志のない銃弾は、何も視えない虚空へと吸い込まれた。


 反撃はなかった。


 手応えのなさに、やがて、熱狂は褪せ、静寂は広がっていった。トリガを引いた兵士たちは胸を撫で下ろし、銃を下ろそうとした。


 だが、その瞬間だった。あまりに精確な射撃が左右両翼の部隊を襲い、数人の兵士を絶命させた。それは、報復の灯ではない。そう錯覚させるように放たれた攻撃だった。


 仲間の死が、撒かれた恐怖が、躊躇いも冷静さも失わせた。


 中央の部隊は、左右両翼の部隊からの攻撃を誤射であると判断し、反撃を控えていた。間もなく、混乱は収束するはずだった。だが、そうはならなかった。そうはさせなかった。


 左右両翼の部隊は、我を失い。中央へ制圧射撃をはじめてしまった。こうなれば否応なく、反撃するしかない。生き残るために、仲間を殺すしかない。


 識別のための笛の音も、仲間を呼ぶ叫び声も、銃声に霞んでいく。そして、その銃声さえも、失われていく。整然としてあった戦線が崩壊するまで時間は掛からなかった。


 中央、左右両翼の主だった部隊は同士討ちによって自壊し、同士討ちから逃れるように侵攻を急いだ部隊は、ブービートラップの犠牲となっていった。


 やがて、弾薬が撃ちつくされ、光と音は失われた。


 何故、こうなっているのか? いや、そも、何故、此処にいるのか?


 生き残った兵士たちは、闇の中で、惑い、立ち竦むしかなかった。


 だが、まだ終わってはいない。まだ、夜は明けてはいない。まだ、狩る者は去ってはいない。

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