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Links / Revolutionized Warfare  作者: やたか
第七章「Enemy Territory」
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 地図に記された、その場所には確かに、麻薬精製工場が存在した。農場のようにも視えるが、付近の広大な畑で栽培されているのは芥子、薬物の王者と称される麻薬ヘロインの原料に他ならない。


「政府が麻薬製造とはね」

「驚くようなことでもない。かつては英国もしていたことだ」


 基幹産業の存在しない発展途上国において、麻薬は大いなる利益をもたらす、代えがたい商材に他ならない。政府の資金源として栽培されていても、おかしな話ではない。ただ、それを認めることはなく、そして、暴く者もいない。それだけの話だ。


 軍事独裁政権の指導者は、麻薬というものを知らないほど愚かなわけではない。故に、政府が製造に関与している麻薬が国内で流通することはない。


 事実、この工場で製造されるヘロインは、その全てが海外へと輸出され、外貨へと替わる。そして、その外貨によって、武器がもたらされる。麻薬と武器の貿易。それは、過去から現在に続く、途上国と先進国の不変の経済関係に他ならない。


「で、どうする?」

「偵察だけなら、一機でいい」


 ベルが問い、ネームドが応えた。最初から、そのつもりだった。そのために、戦うために、此処にきた。


「畑を焼く。車両を奪って、ガソリンを撒け」

「非武装の作業員はどうしますか?」


 ライフルスコープで麻薬精製工場の様子を覗いていたスリープが判断を仰いだ。ネームドは数瞬、考え、そして、


「考慮しなくていい」


 そう告げた。ネームドは、殺すなとは言わなかった。それは、つまり、必要であれば殺しても構わないという意味に他ならない。


「倉庫の大きさから、想定するなら、貯蔵されている麻薬はかなりの量になる。それを使えば、周辺の空気を汚染することができるだろう」


 それが、ネームドが導き出した答えだった。


 武装した兵士以外は殺さない。


 そんな誓いも、傲りも、弱さもネームドにはない。殺してもいいと考えていた。


 仮に、彼らが、生きるためにという言葉で、麻薬精製工場で働くことを正当化するのであれば、ネームドは、生きるためにという言葉で、彼らを殺すことを正当化する。それだけの話しにすぎない。だから、殺すなと言わなかった。


 殺せと言わなかったのは、戦う力を持たない者に対する慈愛によるものではない。それは、誰のためでもなく、自身のために、そして、アヴァロンのためにされた、極めて功利的、合理的な判断によるものであった。事実、ネームドは犠牲者が出ないとは考えていなかった。


「倉庫を爆破して、ヘロインを辺りに撒け。ヘロインを吸入して、正気を失った人間になら、視られても問題ない。弾薬、時間、手間の節約をしろ。そういうことでいいのかな?」


 ノーマッドが、わざとらしく言葉にした。ネームドが頷くと、ノーマッドはにやりと笑い、言葉を接ぐ。


「なら、ボクは単独で先行して、倉庫にC-4を設置してくるよ」

「私は、ノーマッドのバックアップですね」

「俺は車を奪って、ガソリンを撒こう」


 ノーマッド、スリープ、ベル、それぞれがそれぞれの行動方針を言葉にし、共有し、確かめ合う。


「で、どうする?」

「そうだな、考えてる」


 ベルがネームドに言葉を求めるが、答えは返らなかった。


「施設の破壊だけだし、やることがないといえばないね」

「兵士の数も少ないですね。反政府勢力のおかげですかね?」


 ノーマッド、スリープの声は軽く、そして、明るかった。


「私は、周囲を警戒しよう。増援が来ないとも限らない。何かあれば、報告を、何もなければ、」

「何もなければ?」


 ベルが首を傾げるようにして問いた。


「報告をしたければ、すればいい」


 それから、間もなく、白い霧が辺りを包んだ。


 黒い影が舞い、紅の炎が生まれ、穢れた白を祓うように、全てを土に還した。この国に財をもたらしていた経済拠点の一つは、あっけなく失われた。


 その日から、アヴァロンの戦いは、はじまった。


 その戦いは、命令されたからではなく、アヴァロンが選び、アヴァロンが求めた戦いだった。

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