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Links / Revolutionized Warfare  作者: やたか
第六章「Battlefield」
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 空気を裂くように衝撃音が響き、瞬間、前方から三両目、ベルが襲った車両の前方を走っていた兵員輸送車の前輪がはじけた。


 足を奪われた兵員輸送車は、狂った慣性を抑えこもうと蛇行するが制御することは叶わない。荒れた道を抉り、砂埃を舞い上げ横転した。


「ノーマッドは、チャーリーを行動不能にした」


 地雷を起爆させたノーマッドが状況を報告する。行動不能ではなく、完全に大破させることも可能であったが、そうはしなかった。物資は無限ではない。攻撃能力のない兵員輸送車の破壊のために、限られた資源を浪費することは合理的ではなく、また、爆煙による視界の悪化を避ける必要もあった。


 ノーマッドが遂行すべきタスクは、退路を塞ぐ障害物をつくることであり、破壊することを求められてはいなかった。


 任務は遂行された。だが、問題の芽があった。横転させただけで、殺せていないということである。縦と横が入れ代わった兵員輸送車の荷台から、兵士が這い出してくる。


 だが、その芽は、容赦なく摘まれることとなる。


 ベル、ノーマッドによる兵員輸送車への襲撃と同時に、スリープはその後方、車列最後尾、軽装甲車の制圧へと動いていた。制圧と表記すると如何にもではあるが、費やされた時間は六〇秒にも満たない。


 運転席、助手席、車体上部の銃架、それぞれに照準を合わせ、順にトリガを引く。スリープがしたことは、それだけであった。それだけですべきことは終わった。機動装甲歩兵の携行兵器として開発されたアサルトライフル"XA-01 AR-762X SLW"の銃身から放たれた7.62x51mm装甲貫徹弾は、軽装甲車の前面に張られた積層式防弾ガラスをあっけなく撃ち抜き、赤い花を咲かせた。


 スリープは無人となった軽装甲車に跳び乗り、備え付けられた銃架につくと、アイアンサイト覗きこんだ。その視線の先、重機関銃の射線には、横転した兵員輸送車の幌があり、そして、そこから、這い出そうとする兵士の姿があった。


 一瞬、スリープと兵士の視線が交錯する。


 兵士は首を傾げるしかなかった。そこにいるはずの仲間の姿はなく、敵に対して向けられるはずの銃口が自身に向けられていた。


「スリープはフォックストロットを制圧した。これよりチャーリーを掃討する」


 スリープは告げながら、軽装甲車に備えられた重機関銃のトリガを握り込んだ。重く乾いた金属の擦過音が響き、兵士は踊るようにして絶命した。


 不必要な苦痛を与えるとされる兵器は苦痛を与えない。ただ蹂躙する。


 "M2 Browning"から、放たれた無数の威力は、兵員輸送車の荷台を優しく撫でた。装填されていた弾薬は数秒で失われ、虚しい静寂をもたらした。そこにあった気配は既に失われている。引き裂かれ揺らめく幌の間に微かに覗かせるのは闇だけだった。


「ノーマッドはチャーリーの殲滅を確認した。ブラボーの制圧へ向かう」

「スリープはチャーリーを殲滅。車列後方に待機し、逃走する敵勢力に対応する」


 感情のない声は、ただ操縦席の中で響き、そして、去っていた。彼らの声が戦場に響くことはない。

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