4
「敵部隊はポイントD-6-3に到達。行動を開始する」
ベルは、ささやき、戦端の鐘を鳴らしにかかった。
一つ、二つ、三つ、そして、四つ。
車列の前方から数えて、四両目の兵員輸送車へ、樹上から黒い影が飛び移った。
影は、人型は、機動装甲歩兵は、ストラティクスは、いや、ベルは、這うようにしてキャビンのルーフに張り付き、助手席側のサイドウインドウから、運転席を覗き込んだ。瞬間、助手席にいた兵士と視線が絡み、数瞬、時が止まる。兵士は声を上げようと息を吸った。だが、叫びが響くことはない。許されなかった。兵士の首の骨は機械の指に握り折られ、そのまま車の外へと引きずり出され、放り捨てられた。
次いで、ベルは助手席のドアに手をかけ、引いた。ドアの可動部は、わずかに抵抗したが耐えきれず、歪み、裂かれ、外れ、先の兵士と同様に、流れていく景色の中へ、放り捨てられた。
運転席にいた兵士は、振り向いたが、何もできなかった。状況が理解できない。理解できるはずがない。走行中の兵員輸送車に、巨大な霊長類の如き輪郭の何かが、ぶら下がっていた。そう考えるのが限界だった。
兵士は、ただ奇妙に笑いながら、両手でハンドルを握り締め、前を視て、横を視て、前を視て、横を視てと、視線を彷徨わせ、そして、放り捨てられた。
運転席を制圧すると、ベルは、窮屈な座席に機体を押し込み、アクセルを踏み抜き、優しくハンドルを回した。
フロントガラスから、導くようにあった赤茶けた道が失われ、立ち塞がるように緑が広がり、そして、間もなく、兵員輸送車は、跳んだ。樹々にぶつかりながら、はじかれながら、ひしゃげながら、斜面を転がり落ちた。
ベルは、既に運転席から、抜け出している。惨事を他人事のように眺め、そして、転落が終わり静止したことを確かめると、横倒しになった兵員輸送車の荷台に、躊躇いなくグレネードを放り投げた。
荷台のソフトスキンが破裂し、白煙が上がる。数瞬の間を置いて、燃料タンクのガソリンへと誘爆し、黒い炎が立ち昇る。
「ベルは、デルタの殲滅を完了」
ベルは、踵を返しながら、ささやくと、跳んだ。次の獲物を求める猟犬が如く。




