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Links / Revolutionized Warfare  作者: やたか
第六章「Battlefield」
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 機動装甲歩兵"ストラティクス"の装甲には、大小無数の傷が刻まれていた。現代に創造されたダビデの如くあった艶やかな美しさは失われていた。そして、その魂もまた同様に無垢ではなくなっていた。


 身も心も、血に穢れていた。


 戦場に堕ちたその日から、二一日が経過していた。既に、人を殺すことに躊躇いを覚える者も、人を殺すことに懊悩する者もいない。


 アヴァロンは、ただ命令を遂行していく。だが、それは逃避ではない。アヴァロンは、考えていた。感じていた。そして、戦っていた。ただ一つの目的のために、戦っていた。その意志は強く、故に、戦場に転がる無惨な死体を直視しても、なお、怯えることも、怯むこともない。


「ベル、ノーマッドは輸送車を後ろから順に、スリープは最後尾の軽装甲車を、ムーンキャットは重火器で武装した兵士、逃走する兵士を優先して狙撃。以上だ、質問はあるか?」


 ベルの視界、共有されている映像を望みながら、ネームドは端的に告げた。


 地平線の彼方まで一面に広がる緑、彼方に聳える荘厳な山々、樹冠よりも高い何処かから一望する自然の風景。そして、壮大な景色の中で、ゆっくりと動いていく人と機械。密林の中に拓かれた荒れた土の道を、軽装甲車と輸送車で構成される車列が、その意志を誇示するかのように侵攻する。


「軽装甲車をつぶした後は?」


 誰も何も言わないので、とりあえずとスリープが呟いた。


「状況に応じて判断しろ」

「いつになく、アバウトですね」


 ネームドの答えに、スリープは首を傾げた。


「判断は、各機に委ねる」

「あら、面倒くさくなったの?」


 ジェーンの言葉は、近くはないが、遠くもなかった。


「敵は中隊規模の部隊を投入してきた。時間をかければ増援も考えられる。持久戦になれば、敵兵の殲滅は困難となり、情報を持ち帰らせることになる」

「それで?」

「行動を縛るより、自由にやらせた方が効率がいいいと踏んだ」


 寧ろ、面倒なのは、ジェーンへの説明である。ネームドは、そう考えながら、言葉を紡いだ。


「それは、どうかしら?」

「どうだろうな」


 ネームドとジェーンの話を妨げるように、ベルが口を挟む。


「これ示威行動だよね? 放置しちゃダメなの?」


 さらに、ノーマッドが言及する。


「戦力はさて置くとして、数的な差は歴然だ。大規模な戦闘を避けて、ゲリラ戦に終始したいというのが本音ではある。こちらが姿を隠していれば、すぐに諦めて帰ってくれるのであれば、そうするが」

「そうはならないでしょうね」


 ため息をつくように、ジェーンが言葉を接いだ。


「何回か、それらしい部隊が偵察に来たことはあったが、今回は規模が違いすぎる。政府軍部隊の行動目標は、偵察ではなく、掃討であると考えるべきだろう。放っておけば、やがてはターミナルの周辺まで、踏み込まれる可能性が高い」

「やるしかないってことだね」


 ノーマッドの声は、物憂げだった。ネームドは気づいたが触れなかった。


「戦うのであれば、先制しない手はない。踏み込ませても良いことはない。我々が何者かは解ってはいないだろう。だが、我々が存在していることは解っている。そして、既に脅威であると認められた。だからこそ、こうなっている。つまり、遠慮する必要はないということだ。もう少し、静かな戦いを続けたくはあったが仕方がない。何もかも、予定の通りには行かないものだ。だが、焦る必要はない。想定外ではない。何れは、こうなっていた。前倒しになった。それだけのことだ」


 ネームドの言葉を掠れるようにして、終わった。ベルも、スリープも、ノーマッドも、何も言葉を持ってはいなかった。数瞬、音が消え、それから、ジェーンが問いかけた。


「ネームド、貴方は何をするの?」

「スポッターとして、ムーンキャットにつく、視界は広い方がいい」

「あら、そう、了解」


 ジェーンは、微笑むように応えた。


「自由にやらせると言いつつ、後ろから監視するわけですか」

「心強いだろ?」


 スリープが絡むが、それを綺麗に捌かれてしまう。


「反省会の主役になるのは避けたいね」


 ノーマッドは、冗談めかすが、声は柔らかくはなかった。


 ベル、スリープ、ノーマッド、前線の三人が強いられるストレスは大きい。自信がないわけではない。不安はない。戦力差は歴然としている。敗北することなど、ありえない。そして、絶対に死ぬことはない。だからこそ、心が躍ることはない。それは、強者の傲りであり、弱者の嘆きだった。

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