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大地には、黒い密林が果てなく広がり、月のない空に星だけが輝いている。天球に漂う数えきれないほどの星々は、瞬きながら、ゆるやかに流れていく。
人の灯のない世界、第四世界の夜空は、ただ、比類なきまでに美しい。だが、それを尊いと想う者はこの世界にはいない。星のない空を知る者はいないからだ。
仰ぐ者もなく、ただ、夜は静かに過ぎ去り、生まれる朝に置き換わり、そして、忘れられる。今夜もまた、そんな何時もの一夜の筈だった。だが、そうではなかった。この夜は違っていた。
空には、静寂を穢す者がいた。
世界を統べる者。そう称する者たちが、はじめようとしていた。
「現地時間、午前三時二四分、指定空域に到達。高度は一一五〇〇メートル、レーダーに反応なし、オペレーションオーダーに従い貨物の投下を開始する」
輸送機のパイロットの声に応えるものはいない。ただ、フライトレコーダーが記録する。
「後部ハッチ開放。一番から五番まで、一五秒間隔で貨物を投下する」
自身が何を運んできたのか、何を投下しようとしているのか、パイロットは知らない。ただ、任務を全うする。
「投下開始。一番の投下を確認。続けて二番の投下を行う」
妨げる者はなく、パイロットの任務は滞りなく遂行されていく。
そして、
「投下完了。後部ハッチ閉鎖」
間もなく、パイロットの任務は終わる。
夜空へと放たれ、音もなく闇の中へと沈んでいったモノが何か、パイロットは知らない。知ることはない。
「これより帰投する」
その身を軽くした鳥は、迷いなく、振り返ることなく、帰路についた。




