7.君が居なくなって
教室は静まり返っていた。
佳魅はまだ保健室から帰ってこない。まああれを見たなら誰だって保健室から出てこられなくなるだろう。
血にまみれてどこか遠くを見るような表情、でも何も見ていない空虚な目。
ついさっきまで一緒に勉強していたとは思えない。あまりに突然な友人の死。
だれもこの現実を受け入れられないだろう。
教室のドアが開いた。
「待たせたな」
先生が入ってきた。
「明日からしばらく学校は休みだ。再開される時は連絡網が回る」
焦りを隠せない担任の先生。
「なるべくかたまって帰りなさい。いいね」
「……はい」
桐生だけが返事をした。
皆、無言で起立した。
「さようなら」
佳魅は結局現れなかった。
帰り道、紫苑は泣いていた。
御琴が気の利いた言葉をかけているようだ。紫苑にとっては大切な生命を2つ失ったに等しいからな。性格からも、誰よりも今を悲しんでいるだろう。
自分は何もできず、ただ二人の後ろを歩いていた。
陸はそんな御琴をただ見ていた。
慎太は静かに泣いていた。幼い頃からべったりだったらしいが、残された慎太はどんな気持ちなのだろう。
分かれ道に立った。
「じゃあ、な」
御琴が紫苑の肩を抱いて帰っていった。そんな二人の後ろを陸が黙ってついていく。
慎太も無言で帰っていった。
悠子も小声で別れを告げると、分かれ道を帰っていった。
一人で立ちすくむ自分。
皆、強がってるな。
自分は倒れそうな自分を支えるように腕を組み、帰り道を歩いた。
数日後、慎太からチャットが届いた。クラスメイト全員宛だ。
「宗の日記が出てきた。すごく病んでたみたいなんだ。相談に乗ってやればよかったと後悔している」
それに対して返答が来ていた。
「宗の近くにずっと居たからって自分を責めるなよ。それに、それが原因で死んだわけじゃないだろう?」
御琴からだった。
「うん、桐生の言うとおりだよ。悲しいのはみんな一緒だよ」
これは紫苑。
「そうだね。その通りだよ。その日記、私たちは読めないの?」
これは悠子。
「宗の両親に聞いてみないと判らない」
「せっかくなんだから皆で見ようよ」
悠子が投稿した。
「賛成」
陸が同調した。
「聞いてくる」
慎太が退室した。
佳魅が入室した。
「大丈夫?」
悠子が投稿した。
「うん」
「心配したよ」
「ありがとう」
おいそこ、通話でその会話しろ。なんて思った。
「宗のご両親から了承を得ました。明日、僕の家にきてください」
「時間は?」
御琴の返事。
「午前十時、学校近くの分かれ道で待ち合わせしよう」
「了解。じゃあね」
陸が退室した。
「わかった」
「おっけー」
「おk」
御琴と紫苑と佳魅が退室していった。
「無理言ってごめんね、ありがとう」
悠子が退室した。
「ラジャ」
自分もそう打って退室した。
翌日。寝起きは最悪だった。暑苦しいし、変な夢は見るし……。
時計は8時を指す。
待ち合わせまで2時間だ。
自分は部屋を出て用意を始めた。
猛スピードで執筆しております。春休みは暇なのです。面白いと思っていただけたら幸いです。ではまた。