6.西城宗
数日後、昼休み。
自分達はいつも通り当番をしていた。
「あれ、宗は?」
「いないね」
「さぼりかな」
「遅刻とか?」
「ああ、そうかも」
「ま、いいじゃん。放課後の仕事少し押し付ければ」
「ははっ、そうだね」
予鈴が鳴った。
「結局来なかったね」
「進路相談かもね」
「ああ、そうかもね」
自分達は校舎へ向かった。
「ごめん、ちょっとトイレ行って来る。先行ってて」
佳魅が外に残った。
「わかった」
教室に着いた頃には本鈴二分前だった。これは佳魅、授業間に合わないな。
そして宗もいない。
「宗もトイレかな?」
「そうだろうね、お腹痛いとか」
「だよね、真面目な宗がサボるわけないよね」
授業が始まっても二人は戻ってこなかった。
ふと、窓から外を見ると佳魅が校舎に入ってくるところだった。
少しして。
教室の後ろのドアが開いた。
「おお、藍喘。作業でトイレに行く時間がないのは判るが、なるべく時間管理はしろよ」
佳魅の顔が真っ青だった。
お腹痛くなったのか。ノロウイルスでも流行ってるのか、気をつけなきゃ……。
なんて思ってたが、彼はとんでもない一言を口にした。
「家畜小屋の裏で……宗が倒れています……早く……」
佳魅が口に手を当て、しゃがみこんだ。
「わかった。藍喘は落ち着くまで保健室で休みなさい。僕は小屋の裏に行って来ます。皆さん、自習していてください」
「私、藍喘君を保健室まで連れていきます」
悠子が立ち上がった。流石彼女、こういう時は助けなくちゃね。
「ああ、頼む」
先生、佳魅と悠子が教室を出た。
「佳魅、顔色ひどかったな」
御琴が言った。
「大丈夫かな」
「そうだねー」
「でも、何でトイレ行くだけが小屋裏まで行くことになったんだろうね」
たしかに。小屋へ行くのとトイレの方向は真逆だ。
「忘れ物じゃない?何か落としたとか」
「あ、そうかもね」
「……悠子遅くないか?」
「そうだね」
教室が少し明るくなった。
それからかなりの時間が経った。
あきらかに遅い。
「大丈夫かな」
「心配になってきた」
少しして悠子が帰ってきた。
顔色が真っ青だった。
「悠子、大丈夫?」
「そうだよ、悠子も体調悪いなら彼氏と一緒に休んでればよかったのに」
「みんな……聞いて……」
「え、どうした?」
「し、宗が……」
「宗が?」
みんなが悠子のそばに寄る。
「死んだらしい……」
皆が言葉を失った。
「嘘だろ……」
慎太が静かに言った。
「そんなわけないだろう……」
「うん、そうだよ。そんなわけ……」
「佳魅が見たんだよ……」
「何処で?」
「小屋の裏……だって」
桐生が口を開いた。
「俺らも見に行こう」
「え、いいの?」
「だって、確かめなきゃいけないだろう?」
桐生がふりしぼるような声で言った。
「じゃ……行くか」
陸が言った。
「そうだよ、宗が死ぬわけないじゃん。体調悪くて動けなくなってるだけだよ、きっと」
慎太が少し大きな声で言った。
無断で校舎を出て、自分達は小屋裏へ向かった。
走りながら自分は感じた。どこか異様な感じを。
裏へ回った僕達は絶句した。
「う……」
「うわ……」
「宗……」
「き、君達……自習していなさいと言っただろう……」
「嘘だ……」
「そんな……」
宗は血溜まりの中にうつ伏せで倒れていた。
その周囲をよく見ると指が何本か落ちていたり、短いけど、束になった髪の毛が落ちていたり血に混じってとんでもないものを見た気がした。手首、首筋にナイフで裂かれたような大きな傷があり、骨が覗いていた。
「見て判るだろうけど、西城宗は死んだ。自殺には見えないから他殺であろう。担任がすぐに向かうから君達はとりあえず教室に帰りなさい」
自分達は何も言えず、ただ道を引き返した。
やっと始まった感じがします。あまり多くを書いてネタバレになってしまうのが嫌なので、後書きは以上終了とさせていただきます。