Last-See you agan
ネタバレを含みます。本編を先に読むことをオススメします。
僕は諦めない。
僕は誰かの役に立ちたい。
私は中学の頃に帰りたい。
私は理想を追いかけたい。
私は皆が幸せであって欲しい。
僕は平和な日々を過ごしたい。
僕はもう失敗したくない。
僕はもう諦めた。
僕、死んでもいいよな?
僕はお前が好きなんだよ!小さい頃から!
なんで私はここにいるの。
私はあなたのようにはなれないの!
何が正しいの?
もう面倒だよ。
君を何より大切に思っているよ。
死んだほうがいい人間とは。
死んで欲しい人間とは。
恨んでも恨み切れないこの悔しさは。
この思いは誰にぶつければいいんだ。
何に当たればいいんだ。
「なあ、僕が死んだらどうする?」
宗は言った。
「どうしたんだよ、急に」
親友の突然の言葉にとまどう慎太。
「いや、特になにかあるわけじゃないんだけど……」
「なんだよ、怖いこと言うなって」
「ごめんごめん」
これだ後に起こす結果の始まりであると誰が予想しただろう。
慎太は宗の為に尽くした。唯一無二の親友の為に。
「なんか変わりない?」
「うん」
「そうか、よかった」
「どうしたの、急に」
「いや……」
「最近よくそう聞くよね。勉強でも教えてほしいの?」
「そういうわけじゃないよ……」
高校二年になり、慎太は焦った。
予想外の展開を示した宗の事件。
もっとも最悪な形で決着がついた。
他殺なはずが無い。絶対に――
――自殺だ。
「先生、息子の進路のご相談があります」
「それはまた希望用紙を提出して頂いてから面談しますので焦らなくとも大丈夫ですよ」
「いや、その…事情がございまして…」
「お聞きしましょう」
諦めないと誓った心が簡単にへし折れた。僕は所詮弱い人間だった。
慎太は僕のことをよく考えてくれた。いつも心配してくれた。
僕は諦めない。そんなできない約束したことを謝らなくちゃ。
裏切ってごめんね。
悪いとは思ってる。
俺はお前が好きだ。
小さい頃からずっと一緒だった。
信頼してるし信頼されてると思ってた。頼ってたし、頼られてると思っていた。
なのに……。
僕はなんの役にも立てなかった。
「進学意欲がないのですか?」
「そういう訳ではありません。ただ……」
「ただ?」
図書館で御琴と会った日。
チャットにて。
「お前、そんなに現実嫌いなの?」
「は?」
「好きではないだろう」
「それがどうかしたの?」
「いや、なんでもない」
「御琴はどうなの?」
「どうも思わないね」
「意外。嫌いというと思った」
「現実も空想も楽しいことばかりじゃない。喜劇もいいけど、悲劇だっていい。波乱万丈であっていい、日常でいい」
「ふーん」
「アニメとかライトノベルしか興味ないか」
「うん。古典なんて読まない」
「残念だね、語れると思ったんだけど」
「ライトノベルも面白いよ」
「考えておくよ」
私は思い切って聞いてみることにした。
「面白い古典ってなに?」
「それはマクベスだね」
「ふーん」
「就職するという手段もありますよ?」
「それは許しません。絶対に進学させます」
「御本人はどうしたいと思っているのですか?」
「あの子は獣医になりたがっています」
「あんたっていつも何してんの?」
「は?」
同じ中学だったやつに質問してみる。
「家とか」
趣味好みが全くわからない。いつもぼーっとしていて何を考えているのかもわからない。
「ネットとか」
ふーん。
まあ、掲示板作れるくらいだから当たり前か。
「他には?」
「動物鑑賞」
「じゃあ動物園とか行くの?」
「うん、行く」
特に意外性を掴めたわけではなかった。
「つまらない」
「なんだよ、つまらないって」
「なんでもない」
「……。」
「よいことではないですか。成績にも問題無いと思いますよ」
「ええ、成績に問題は無いとは私も思います。でも……」
「はい、もしかして推薦とか使いたいのですか?」
「いえ……」
彼は心を殻に閉じ込めたように自分らしくあろうとしない。意見しない。
平均で、非個性的。
だから私は彼の心をこじ開けた。
あとちょっとだったのにな……。
本当の彼と一緒にいられるとおもったんだけど。
「息子には医学部に進んでほしいのです」
「そうですか。いいことだとは思います。お父様がお医者さんですからね」
「ええ。ぜひ父の後を継いで欲しいとおもっております
「ですが、ご本人はどう思っているのですか?」
その日、僕は部屋の天井を眺めていた。
殺風景な部屋に一人でベッドに転がっている。枕元には小さめのナイフ。
希望がないから、生きていても仕方が無い。
僕は重い身を起こし、ナイフをポケットに入れて部屋を出た。書き遺す相手もいないから遺書は書かなかった。
僕は真っ暗な川へ腰まで浸かり、首筋をナイフで切った。
ただ無心だった。
「絶対行きたくないと言っています」
「まだ時間はあります。ゆっくり考えてください。この学校で決まらなくても来年までかかっても大丈夫。彼ならきっと第一志望に……」
「あの子の第一志望ではだめなんです。絶対医学部でないと。そこでお願いがあります。私が説得するので、志望校記入用紙を提出したら私に連絡していただけますか?」
「連絡くらいならしますが……、それで大丈夫なんですか?」
「ええ。ありがとうございますでも先生からも説得してください。東京の医学部を目指すように…」
「相談ならいつでものるつもりです」
「よい進学先を掴んだ生徒が先生のクラスから出たとなると、次の学校で有利なのではないですか?」
「え、そんなことは……」
「私の主人、先生の次の学校の校長先生の主治医なんです」
「……」
「よい結果を期待します」
僕は応接室で担任と一緒にいた。
「先生はこの事件をどう思ってるの?」
「教え子がこんなに死んでしまった。とても悲しいよ」
「そうじゃない。自殺?他殺?どっちだと思う?」
「自殺だとしたら、そこまで悩んでるのに気づいてあげられなかった自分が情けない。他殺なら犯人を許さない」
「だから違うって。彼らを殺したのは自分自身なのか。それとも誰か他人がその手で殺したのかってこと」
「自分自身ね……そうかもしれないな」
「……ちゃんと話が噛み合ってるのかな。まあいいや。先生は自殺だと考えているわけだね。なら、原因は何だと思う?」
「……わからない」
「だとしたら集団自殺とほとんど変わらない。何かが蔓延したんだよ。それは何だと思う?」
「蔓延……。みんな希望を持っていると思ったんだけどな」
「希望ね。てことは先生は絶望がクラスメイトに蔓延したと考えるんだね。確かに生きる希望を失えば絶望する。死にたいとも思うだろう。だけど一つ疑問が生まれる。何故僕は死にたいと思わないのだろうね」
「君も死にたいと思うのかい?」
「まさか。死ぬ理由がないからね」
「そうか、よかった」
「ま、殺されなかったから僕はこのまま生きるんだけど」
「ああ、もちろん」
「先生は何か責任を感じてるの?」
「もちろんだよ」
「だよね」
「今日はいつもと口調が違うね」
「はい」
「今日はしょうがない。それでいいよ」
「それはありがとうございます」
「君は誰かを恨んでいるかい?」
「ええ、それは勿論」
「聞いてもいいかい?」
「誰かの母親」
「……そうか」
実は母親から相談を受ける前に本人から獣医になりたいということは聞いていた。
彼なりに頭を使って先手を打ったようだが、中立でなければならない立場上、連絡を拒否することはできなかった。
だが、なんの解決にもならなかったようだ。
君は死にたいと思わなかったと言ったね。
この事件に巻き込まれて何も感じなかった訳ではないだろう。
君は絶望に慣れてしまったかもしれない。だが希望を失っているわけではないだろう。
君は君のまま、真っ直ぐ生きろ。君の未来を掴むんだ。
ガタンと車が大きな衝撃を受けた。
お父さんは無視して運転を続ける。
車が壊れたのかと思った。
朝、起きてみるとお父さんは家の中に居なかった。
車庫に回ってみると車を水で洗っていた。
「おはよう」
「おう、おはよう。よく寝れたか?」
「まあ。朝から車洗ってるの?」
「ああ、整備と一緒にな。父さん、車ないと会社いけないし」
「そうなんだ。すごいオイル使ったんだね。地面が汚れてる」
「ああ、まあな」
「仕事、頑張ってね」
「おう」
僕はオイルなんてどんな色してるのか知らない。デタラメを言ったのだ。
車体に損傷はないようだった。
でも誰の血なんだろうね。予想はつく。
むしろ、彼女以外考えられない。
運が悪い事件でない限り。
確信では無いから調べたいけれど、僕は調べる方法を知らない。
ま、どうだっていいか。僕は生きている。生活に困っているわけではない。
ならば、なんの問題も無い。
桐生を読んでいただきありがとうございました。自己満足で面白くも無い話にお付き合いいただきありがとうございました。どうしても古典を入れたかったのでシェイクスピアより、「マクベス」、「ハムレット」、「ロミオとジュリエット」を一部使っています。よかったら感想を書いていただけるとうれしいです。ただしお手柔らかにお願いします(笑)。今後ともよろしくお願いします




