伯爵にお礼をするとしよう①
「ここが王都……」
尻の痛みを我慢して約三時間半、やっと王都に到着したけど何なんだコレ?
とりあえず目の前にそびえ立つ壁。
おそらく周り全部こんな感じだと思うけどすごいね。
まあ、王族が住む城があるわけだしこんなもんなんだろうと強引に頭を納得させ、僕慣れてます的な感じで都に入る手続きっぽいことをしている伯爵を見る。
適当に喋ってたけどやっぱ偉い人なんだと、門番の頭が低いのを見て再確認していると手続きが終わったらしい伯爵に呼ばれた。
「ナナシ君、一応君の通行証を発行してもらったんだが」
どうやら都に入る手続きなどではなく、俺が都に入るための通行証を発行してくれていたらしい。そして通行証があればそれを門番に見せるだけで都への出入りができるようだ。
アルヴィス伯爵、なんていい人なんだ。いやマジで。
「ありがとうございます。何かお礼ができればいいんですが……」
伯爵は「いや、構わないよ」と言ってくれるが、正直何かお返ししたい。
打算などなく純粋にお礼がしたいと思う。
見ず知らずの人間にここまでしてくれたのだ、お礼の一つでもしないことには気がおさまらない。
そんなことを考えるがまず金が無い、何かツテがあるわけでもない、あるといえば自分でも良くわかっていないステータスを見ることのできる能力だけ。
そこで俺は気付く。
もしかしたらと、今考えていることが能力でできれば伯爵にお礼ができるかもしれないと。
それを早速実行すべく、俺は伯爵を呼んだ。
「アルヴィスさん、この辺りに骨董品店などはありませんか?」
「……?あるにはあるがそんなところに何か用事かね?」
伯爵は一瞬訝しげな顔をしたがすぐに顔を戻し、答えを返してくれた。
「いえ、私は鑑定眼に関しては少々自信がありまして、掘り出し物の一つでもアルヴィスさんにお返しできたらと思ったんですが……」
-アルヴィスside-
彼の実力を見たくて誘ったが特にモンスターなども出現しなかったため、少し拍子抜けだと思っていたところだ。
まあ今日の護衛は新兵ばかりだったからモンスターが出なかったのは良いことだとは思うが、会話からでは全く彼のことがわからない。
今までの会話だけで判断するなら彼はどこにでもいる普通の青年といったところだろう。
普通に礼儀正しい普通の平民層の青年だ。
だがこの骨董品店で彼の一端が垣間見えるかもしれない。
そんな期待を胸に抱きながら私は彼を評判の骨董品店に連れて行った。
-side out-
「ここだよ」
伯爵に連れられてやってきたのは本当に営業しているのかと思う空気をかもし出す古びた骨董品店だった。
「ここはね、置いてあるものが本当に価値のある物か、贋作かという少し変わった店でね。熟練の鑑定士でも間違えるほどの精巧な贋作が置いてあるらしい。うちは伯爵家と言ってもあまり大きくないからね、大きな博打はできないんだ。まぁこの店は通常の相場よりかなり安くはあるんだけどね」
そんなことを聞かされたら俄然やる気が出てきたよ。
「この店はもう一つ変わったところがあってね、一人ずつしか入れないようになってるんだ。鑑定の仕方も人それぞれだからその辺りを配慮しているらしいが。それで、どうかね?」
「当然やらせてもらいます」
「もし、贋物を掴んだらだが……」
「何でもしますよ。奴隷商に売ってもらってもかまいません」
「そうか、ではこれには10000G入っている。これだけあれば大体のものは買えるはずだ」
お金の入った袋を受け取り、これで戻れないと自分に言い聞かせながら俺は店に足を踏み入れた。
でも駄目だったらどうしようか。奴隷になるのはやっぱり嫌だぞ。
微妙に長くなりそうなんで分けてみるテスト。
次もお願いします。