ナナシ、商店街へ行く
今回はナナシが街で色々買う話です。
次かその次辺りで魔国に向かう予定。
さて城を出てきたのは良いけど、買う物も特に決めていないしどうしようかと迷っている俺の横を、1人の何やら防具のような物を着たおっさんが通り過ぎていった。
そしておっさんは俺の3mくらい先で止まると、知り合いらしきこれまたおっさんに話しかけた。
「おい、聞いたか?2番街の武器屋がもう店を畳むから今格安で色々売ってるらしいぞ?」
いきなり躓いてた俺の耳に飛び込んできたのはそんな会話だった。
うん、モンスター出るのがほぼ確実ってこと忘れてたよ。
武器は必要だよね。あと防具。
ひのきのぼうとかぬののふく並に心もとない装備で旅に出るところだったよ。
あれ一応防御力あるみたいだけどね。
俺なんか丸腰でジャージだもん。
完全にただの自殺志願者ですね。
危ない危ない。
この世界コンティニューなんかないだろうしね。
おぉ、ゆうしゃよしんでしまうとはなさけない。なんてなるならいいのに。
なんていう現実逃避はさておき2番街だな。
「あ、すいません!」
といっても2番街の場所が分からないので近くを歩いていた人に道を尋ねることにした。
「はい?」
「少し道を聞きたいんですが、2番街はどちらですか?」
「2番街ならこの大通りを真っ直ぐ進むと中心に噴水のある広場に出るので、そこまで行けばあとは各々の通りの番号が書かれた門が立っているので分かると思いますよ?」
凄く丁寧に教えてくれるお姉さんに少し感動しつつ、俺は広場へ向かうことにした。
おっとその前に親切なお姉さんにお礼言わなきゃな。
「ありがとうございました。ではミザリーさんまたそのうちに!」
うん、失礼かと思ったけどチラッと見たらミザリーさんだったんだ。
有名人ぽいし変装してるんだろうと思いながら改めて広場へ向かった。
後ろで「またバレた」とか聞こえたけど特に気にしないでおこう。なぜなら俺は空気の読める男。
「ふむ、それにしても城下なだけあって小奇麗な店とかが多いな」
主に白い建物に茶色の屋根が多く、なんだか絵本の世界に入ったようだとか思いながら街並みを観察していると、結構すぐ噴水のある場所に着いた。
「ここだな。んで門だったか?」
ミザリーさんの言ってたことを思い出しながら辺りを見ると、確かに門が立っていた。
どうやら広場を中心として、放射状に何番と分かれているらしく1~4までの門が見える。
「2番街はこっちだな」
2番街と書かれた門をくぐり、俺は武器屋へと足を進めた。
「ここだな」
門をくぐってから20分ほど歩き回り、ようやく目的の武器屋を見つけた。
「この店を閉めるのか?」
俺はまず外観を見た時点でそう思った。
確かに古い感じではあるけどミザリーさんの店みたいなお化け屋敷ではないし建物もだいぶ大きい、それに眼で見る限り建物に使っている木やレンガなどもまだまだ新しいからだ。なんか中が騒がしいのが気になるけど。
それでも安く武器が手に入るならいいか。
特に気にすることもなく店に足を踏み入れて……すぐに出た。
「……なんだよあの裸祭り」
中に入った俺が見たのは、武器ではなく一面に広がり蠢く肌色。
むさ苦しい半裸の男共がどたばたと店内を走り回っているところだった。
どうやらバーゲンみたいな感じになっているらしく、それを取り合ってるみたいだ。半裸なのはすぐに試着できるようにだと思うし、そう思いたい。
おばちゃんの服の取り合いかと……こっちのトラウマ度はその比ではないが。
だって半裸の男共が一箇所に群がってなんかやってるんだよ?
あれはさすがに無理だ。あそこに入る勇気はないし、おとなしく人が捌けるのを待って残った物で妥協しよう。
残り物選んだせいで死にましたとかはマジで勘弁だけどね。
しかし店の前に突っ立ってるのもあれだし喫茶店みたいなところあれば入るか。
「ねぇミザリーさん。この辺に軽食屋みたいな所ないですか?」
眼を最大限発動させながらキョロキョロしていると、さっきとはまた違う格好をしたミザリーさんを発見したため、案内してもらうことにした。
ミザリーさんが完全にストーカーですね。
まぁ負けず嫌いってことで。
また次もよろしくお願いします。