どうしてこうなった……
えぇ~国内でやらせることがなくなったので、ナナシを旅に出させてみるテスト。
「は?」
あの手合わせから2週間、なぜかそのまま王城にお世話になってる俺だが、今日は朝起きてすぐに王様に呼び出され玉座の間で間抜け面を晒しながら情けない声を出していた。
「して、行ってくれるかな?」
王様が凄い笑顔で言ってくるが、ここの王族の方はやっぱりどこかおかしいらしい……。
「お父様!それは困ります!」
どうやったら断れるか考えていたらなんとアリシアが反論してくれた。
ありがとうアリシア、手合わせは嫌だけどそれ以外のことなら聞いてあげるよ!
「彼がいなくなっては私の相手がいないではありませんか!」
やっぱその関係ですか……そうですよね。あなた脳筋族の方ですもんね。
なんか無性に王様の言っていたことをこなした方が生存確率が上がる気がする。
いやでも外はモンスターとか出るって言ってたし、結局俺詰んでる状態なんですね。
「でもお姉さま?ナナシ殿が強くなって帰ってくればお姉さまとしても嬉しいことなのではないですか?」
そこにリディアが割り込み、もっともっぽいことを言ってアリシアを丸め込もうとした。
だがリディアよ、いくらアリシアが脳筋だとしてもその程度の稚拙な口車に乗せられるとでも思っているのか?
「む、確かに一理あるな。ナナシ殿、私も鍛錬して強くなっておく!あなたはもっと高みまで登っていて欲しい!」
…………丸め込まれてんじゃないよ。
「はぁ、グラン様詳しいことをもう一度お聞かせ願えますか?」
「ナナシよ、貴殿には魔国の調査をしてもらいたいのだ」
…………やっぱ聞き間違えではなかったか。
「理由を聞いても?」
「うむ、貴殿はアリシアを超える武に、ミザリーに匹敵する目を持っている。それに聞くところによるとリディアですら知らない知識を持っているというではないか?そういうわけで少数ではあるが、隊を組み魔国の調査をしてもらいたい。無理にとは言わないが……」
うん、あのね王様。その言葉には間違ってるところがいくつかあるんだけど良いかな?
まずアリシアのあれはまぐれ、ミザリーさんのは否定はしない。
というかリディアの奴喋ったな?
何日か前に前の世界のことを少し喋ってしまったんだが、どうにもリディアが興味を持ったもんでいろいろ俺の知ってる限りのことを教えたんだ。
口外するなと再三言ったはずなんだがな。
まあそれはいいや、それにしても魔国か。
誰も踏み込んだことの無い秘境。
ふふふ、何か心をくすぐられるものがあるな。
しかしこの好奇心も命と天秤にかけるには軽すぎる。
「もし私がいかない場合、どうなるのでしょうか?」
するとグラン様は悲痛な表情になって告げた。
「他の貴族からの希望でハードレイ伯爵が行くことになっている。平民層からの叩き上げの貴族であるハードレイ家は他の貴族からは良く思われてなくてな……。彼の愛国心や民への愛は尊いものだから失いたくはないんだ。幸い彼はキサラギ公爵家との仲は悪くないから表立っての行動はされないんだが、やはりこういう仕事があるとよく押し付けられるというのが現状だ」
どうもこの国でまともなのはアルヴィスさんのところと、公爵家だけっぽい。
王族?比較的にまともだけどなんかネジが一本飛んでるから除外。
「もし私が行けばアルヴィスさんは大丈夫なんですか?」
「うむ、ハードレイ伯爵の私兵という名目で行ってもらうことになるから成功させればハードレイ伯爵の爵位も上げる口実にもなる。だから行ってもらえないか?」
命は惜しいがアルヴィスさんへの恩もある。
竜の涙?あれはダメだ。
そもそもミザリーさんのあの店が国の物らしく、優秀な人材を集めるためにやっているらしい。
一応多額の報酬は出たみたいだけどね。
仕方ない、頑張ってみようかね。
きっと運がよければ生きて帰れるだろ。
「分かりました。やらせてください」
「やってくれるか!?」
「はい、それで同行してくれるのはそっちで侍女の格好してるミザリーさんとそこの柱の上で隠れてる人で良いんですか?」
俺がそう言うと久しぶりに空気が凍りついた。
うん、めんどくさいから暗殺者とかじゃなさそうだったらいきなりいる場所とか正体暴露するのを自重しよう。
そう心に決めた。
なんかちょっと急展開過ぎる気がしないでもないけど1日1日進めるようなことは出来ないからこんな感じで少し飛ぶことがあるかも。
次もよろしくお願いします。