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情報屋

 (うたげ)の後、部屋に戻った玉。


 (明朝の謁見(えっけん)前に、今まで得た情報の確認と、現時点で詰められる所は可能な限り詰めて置こう。)




 (クロウ、何処に居る?)


 (主、兵舎の屋根に居る。)


 (今から、JKの店の屋根に移すぞ。)


 (主、了解。)


     ※          ※


 街中、繁華街の西端に建つ創業百年を越える老舗居酒屋、JK。 居酒屋を表の稼業とし、本業は代々“殺し屋屋ジョン” の屋号を継ぐ裏稼業。 当代は、まだジョンと名乗ってない三十歳に成ったばかりのアサドである。 暗殺の割合を大幅に減らし、今では主に情報屋を裏稼業にしている。


 JKの屋根に移ったクロウを介して念を飛ばす。 アサドが店内に在るかどうかの確認をする。 地下の応接室で手下と遊んでいるのが確認出来た。



 「クロウ、今からそちらへ行く。」


 「主、了解。」



 JKの屋根に立つ玉とクロウ。



 「今からアサドに会って手持ちの情報の確認をして来る。 その間、此処から周囲の監視を頼む。」


 「主、了解。」



 JKと隣接店の間道に転移した玉は、JKの門へ回る。 両手を挙げて門番へ近付き、名乗る。



 「薬草採りの玉がアサドに会いに来た。 (つな)いでくれ。」



 右手にぶら提げた緑の木の葉から作った下半分の割符を門番に渡す。 木の葉の割符を見た門番は、急に(かしこ)まり、直立不動になった。



 「これは、・・・、はっ、玉様ですね。 急ぎ頭に伝えますので少々お待ち下さい。」


 門内待機場所に取り付けの連絡管に向かった。


 「頭、門番のボブです。 薬草採りの玉殿が門前にお見えです。 ・・・・、はい、お通しします。 玄関まで案内します。 了解しました。」


 ボブがごにょごにょ詠唱して、鉄柵門を開き、玄関まで案内した。


 「中に入りましたら、カウンターを右手に直進して下さい。バックヤード入口を過ぎた左手に地下応接室へ下る階段が有ります。 帯刀での入店及びバックヤード侵入の許可は頭から通達されて居りますけれど、その(まま)お進み下さい。 階段降り口で、頭が待って居ります。 ご来店、有難う御座います。」


 扉を開けると、店内が一瞬静まり返り、探るような視線が刺さる。 直ぐに元の喧騒に戻る。


 (観(直接見る事無く感覚で人・物・事象を観る・把握する事)・推(接したり、相対する事無く推し量る事)が出来る者はいないようだな。)



 カウンター前を過ぎ、バックヤードに入ると、少し陰の有る背の高い、細身のぱっと見てイケメン。 無駄な肉の無い、(むち)の様に(しな)る引き締まった猫型動物を連想させる男。



 「玉さん、久し振り。」


 「アサド、久し振り。 四年、いや、三年振りだな。 帝都で会って以来か。 先代の後を継いだ、と聞いたが、・・・、中々来る機会が無くてな。」


 「まあまあ、下の部屋でゆっくり話しましょうよ。」



 地下応接室にて、向かい合う二人。 手下は全て一階のホールへ上げた。

 此処へ来るまでのあらましと明日の謁見予定をアサドに話した。



 「二日前にレイア姫一行を救った情報は既に入ってますよ。 近衛兵団による感謝の宴の前に練兵場で指導役や、団長・副団長を(いじ)めたって情報も入ってますよ。」


 「二日前のやつは納得するけれど、今日の昼間のやつが、もう耳に入っているのか。 お城とか兵団の情報管理はどうなっているんだい。 駄々洩れだな。 ・・・、まあ、でも、苛め甲斐が全く無かったな。」


 「来店の理由はその辺りに有るんですね。」


 「察しの通りだが、それらを含めて今晩は、四点確認したい。 一、近衛兵団は、余りにも不甲斐無かったが、本軍、陸海空三軍及び魔法軍の力に変化が有るのか。 二、情報管理、諜報関連はどうなっているのか。 三、統合作戦本部ガイア将軍が病に臥せっているとの知らせを受けた。 近衛兵団には将軍の薫陶(くんとう)を受けた感は全く無かった。 三軍も同様なのか。 四、帝国の動きに伴う宗主国内外の諜報活動の変化に付いて。」


 「玉さん、四点の確認事項、確かに伺いました。 既に玉さんが知っている事も含まれ重複しますが、先々代宗主の時代に遡ります。 人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、爬虫人族、魔人族、別大陸からやって来た異邦人等々、先々代の時代にはそれぞれが共生出来る社会を築き、維持して、宗主国に尽力しました。 その結果、この大陸の中での立ち位置を宗主国たらんとし、諸外国も畏敬の念を抱き、接していました。

 しかし、先々代末期から先代に渡り、全体の七割を占める人族の王族・貴族が、全てに於いて人族の能力を上回る他種族を(うと)ましく思い、迫害を始めました。 同国内での争いを深く悩んだ他種族は、少しずつ国外へ逃れ、今では数えるばかりです。今日、玉さんと手合わせをした方々も近い内に国外へ出る予定との情報も入っています。 それに伴い、近衛始め三軍、諜報部、輜重部、そして魔法軍までもが、主だった戦力の流出を招く結果に成りました。

 先代・当代の宗主は、明晰ではあるが、この国と縁戚関係のキルレオ王国までの範囲しか目に入らない王族・貴族の勢いを止めるような英断を下す事が出来ぬ儘、ずるずると今に至る次第です。

 只一人、ガイア将軍がこれを憂い、三軍の強化、政治・体制・王侯貴族への締め付け等々の進言を粘り強く行いましたが、一年ほど前から病に()せて居ります。 高位貴族手の内に因る呪、がもっぱらの噂です。 ガイア将軍は、国内のみならず帝国の動向を、大きな紆濤(うねり)を、注視していました。 コールマ帝国の動向に付いては、玉さんの方が詳しいかと思うので、止めます。

 諸外国も将軍同様帝国の動向に注視しています。 そして、互いの防衛体制構築情報を探り合う情報交換の場として、この温い宗主国首都が利用されています。 お陰様で商売繁盛ですが、・・・。」


 「ありがとう、アサド。 謁見前の手持ちの情報確認が出来たよ。 助かる。 ・・・そうだな、将軍の所へ寄って見るか。 

 これ、礼金。 若い衆に飲ませてくれ。」


 白金貨、五枚をテーブルに置く玉。



 JKを出るとすかさず屋根に転移。



 (クロウ、ご苦労。)


 (主、座布団一枚、取るよ。)


 (ガイア将軍の屋敷に転移するぞ。 スラ一、スラ二、出てくれ)


 ((主、此処に。))


 (俺の肩に乗ってくれ。 ガイア将軍屋敷の屋根に転移する。)


 (((主、了解)))


 三体、声を揃える。


     ※          ※


 (クロウ、周囲の警戒。 スラ一、スラ二は待機。)


 念を伸ばし、将軍の寝室を探る。 直ぐに探知出来たが、入口に(はべ)る監視役に邪な気配を感じたので、その場で意識下に潜る。


 (侯爵の手の者か。 将軍を裏切って呪を掛ける手助けをしたのか。 他に執事が一名、料理人一名が仲間か。)


 屋敷の外、寝室下部の地面から内部へ蔓を一本伸ばし、先端を固く・鋭く変化させる。

 音もなく壁沿いを這い、監視役の後頭部へ刺す。 瞬時に硬直した遺体を屋根の上に転移させる。 即、収納。 

 すぐさま仲間の執事及び料理人の寝所を探知する。


 (スラ一、今からこの者の仲間の執事の寝床に送る。 瞬殺・呑み込みの後で、即転移でここへ戻す。 対象の容姿を念で送る。 覚えたか。)


 (主、了解。 覚えた。)


 (では、送る。)


 (主、着いた。)


 スラ一、配置完了。


 (スラ二、同様に料理人を頼む。・・・、覚えたか。)


 (主、了解。覚えた。)


 (では、送る。)


 (主、着いた。)


 スラ二、配置完了。


 (スラ一、ご苦労。 スラ二、ご苦労。俺が収納した監視人の遺体も一緒に呑み込んでくれ。 スラ一、スラ二、森の友のおやつ代わりに森の中へ三人の遺体を配達してくれ。 今から、森の中へ送る。)


 二体が戻る。



 (スラ一、スラ二、ご苦労。)


 (主、なんの、なんの。)


 二体が答える。



 (何処で覚えた、言い回し。)




 (では、将軍の寝室へ行ってくる。 クロウ、監視を継続してくれ。)


 (主、了解。)



 将軍の枕元に立ち、防音結界と対魔法結界を張る玉。 将軍の体に念を送り、呪紋を炙り出す。 首の後ろに浮き出た。


 (解呪)


 苦し気だった将軍の表情が和らぐ。


 (ハイヒール)


 邪気が浄化された。 将軍の目が覚めた。


 「急に、気分が良くなった。 長い間、悪い夢でも見ていたかの気分だ。 さて、我が枕元に立つ御仁は、玉殿に似ているが。」


 「ガイア将軍、間違い有りませんよ。 玉です。 薬草採りの玉です。 将軍に呪が掛けられているとの噂を聞いて駆け付けました。夜分遅くに申し訳有りませんが。 先程、解呪してハイヒールを掛けました。 臥せって居た分、体力が落ちていると思われます。 この特性ポーションをお飲み下さい。

 お飲みに成った後で、事のあらましを説明します。」


 ポーションを飲み終わった将軍に、昨日からの経緯とJKでの話、明朝の謁見に付いて説明した。


 「玉殿、感謝する。 この分だと私も明朝目通り出来そうだ。 私も宗室の考えを伺いたい。」


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