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手合わせ(弐)

 所変わって、剣術の訓練場。


 玉の次の相手は、グレイブ副団長。


 木剣を携え、互いに礼。


 「お願いします。」


 (ふむ、副団長の表情が硬いな。・・・、初めは、打たせるか、少しは(ほぐ)れるだろう。)



 一本目開始。 


 玉が副団長の顔を見て、少し(ひる)んだ素振りをする。

 左半身中段の構えから、左脚を引き右半身に下がりつつ変わった。


 玉が怯んだ表情を見逃さず副団長が打って出る。

 上段からの連続正面打ち、からの右袈裟打ち、(かわ)されてからの左下段水平打ち、上段受けの型からの更に右袈裟打(みぎけさう)ち。


 (さすが、副団長。 中々(つか)う。 少しは解れた様だな、では、反撃と行くか。)


 玉が右袈裟打ちを左後方に下がりつつ躱し、左半身に構えると、副団長は、右を向きつつ右脚を引き、左半身から正面打ちに出る。 左半身のまま、左上段に受け、巻き払い、副団長の左側から入身し、左後ろから頸部へ剣を打ち込む。


 「左頸部への打ち込み有り、玉」



 二本目開始


 早々に、右八双(みぎはっそう)の構えから打ち込んで来る副団長。 右上段霞(みぎじょうだんかすみ)の受けから先程よりも強く速く巻き払い、副団長の木剣を飛ばす。懐へ入身し、木剣の柄を鳩尾(みぞおち)に突き込むと副団長は気絶した。


 「鳩尾への突き込み有り、玉」


 

 「副団長殿、失礼します。」


 副団長の(もと)へ近付き、屈み込んで二、三回平手で面を張ると、意識を戻した。



 「玉殿、私の敗けです。」



 両者相対して、終わりの挨拶。


 「有難う御座いました。」




 「次は、私と手合わせ願います、玉殿。」


 マーガレット団長が、副団長の木剣を手に頭を下げる。


 「此方こそ、宜しく願います。 マーガレット近衛兵団長殿。」



 イーゴ爺が立ち合いを受けた。

 

 互いに礼。


 「お願いします。」


 団長の速攻、縮地で間を詰めての正面打ち。 やや遅れて団長の剣に合わせる様に正面打ちを出す、玉。 団長の木剣の軌道が頂点を過ぎ、玉の頭に向かった。 玉の木剣が団長の木剣に重なった時、団長の木剣の軌道が逸れた。 玉の木剣は、団長の頭に振り落とされ、寸止めされた。


 「正面打ち有り、玉。」

 


 二本目開始。


 今度は、様子を見ながら間を詰めて行く団長。 三メテアの間合いに詰めてから、右袈裟打ち。 左半身のまま踏み込み左上段で受け、団長の剣の勢いを利用して左回り反転。 伸び切った団長の前腕に打ち下ろす。 寸前に緩めた掌中で木剣を横向きに変え、側面を右前腕に打ち下ろす。 痛みを(こら)え、木剣を落とす事無く開始位置に団長が戻る。


 「右前腕に打ち込み有り、玉」



 三本目開始。


 左半身に構え、重心を落とした体勢からの連続突きを仕掛ける団長。 一度、二度と左右に受け流し、三度目は()なした玉。 往なされた体勢を、一度離れる事で立て直し、再度連続突きを仕掛ける。 一度目を受け流され、瞬時に体当たりに変える団長。 玉よりも体格の勝る団長の体当たりを柔らかく受け、動きが止まった瞬間、玉が体の芯を左から右に変えると、団長の体勢が崩れた。即、玉の体当たりが炸裂(さくれつ)した。


 (強過ぎたか。 気絶したな。)


 焦る事無く、団長が飛ばされた方向へ、縮地で先回りした玉は、柔らかく受け止めると、頭を後ろに、脚を前に向け、片手で抱え、空いている一方の掌で団長の尻を目一杯引っ叩いた。 意識を戻す団長。


 「玉が団長殿に申します。 気を失って居る様子でしたので、無礼を承知でケツを引っ叩きました。 降ろしますが、立てますか。」


 優しく、団長を地面に降ろす。


 「尻打ち有り、玉」


 互いに向かい合い、礼。



 「有難う御座いました。」


 「玉殿、敗けました。 成す(すべ)が有りませんでした。 左臀部(ひだりでんぶ)が痛いけれど、不甲斐なさを悔しく思う気持ちが勝って居ります。・・・、でも、万座での尻叩き、乙女の恥ずかしさも出て来ます。 あぁ、こうなっては玉殿に(めと)って頂かなくては・・・。」


 「玉が団長殿に申します。 マーガレット団長殿がユーモアを解されるとは、嬉しく有ります。 それだけ余裕があれば、今後の精進も期待出来ますね。 此度は、手合わせ頂き有難う御座いました。 久し振りに剣を振りました。 楽しかったです。 この後の弓と組手の案内も宜しく願います。」


 「チィッ!」


 (今、舌打ちが聞こえた様な・・・。)



 「勿論です。案内いたします。 次は、弓道場へ行きましょう。」




 仕切りの土壁を挟んで暫く歩いた所に弓場を設置していた。  二十人程が指導を受けていた。 指導役のエルフ、ラルフィーに団長が事情を説明し、射場控えの場に案内される。 レイア王女と玉がラルフィーに招かれ、本座に立つ。


 「レイア王女殿下、久し振りです。 そして、玉殿、初めまして。 宗主国近衛兵団の弓訓練指導を任されているラルフィーです。先日の武勇伝聞きました。 頼もしい限りかと。 本日は、訓練場体験との事、嬉しく思います。 玉殿の体験だけで無く、殿下も久し振りに引きませんか。」


 「ラルフィー殿、お忙しい所、割り込んで申し訳有りません。 お言葉に甘えます。引かせて下さい。 玉殿も含めて。」


 「承りました。」


 射場で構えるレイア姫の手元から三本目の矢が放たれる。

 先の二本とも、図星(中央の黒点)を射て居り、三本目も図星へ。


 ラルフィーが驚きながら、王女を()める。


 「王女殿下には多少の無沙汰も、関係無いですね。 さすが。」

 

 一頻(ひとしき)り感心したラルフィーが、後ろの玉に向き直る。


 「玉殿、(つる)の引き具合はどうですか。 先程引き切った強弓(つよゆみ)の一つ上、剛弓(ごうきゅう)に変えた感触は、如何ですか。」


 指導役が、王女の二メテロ程後ろで構える玉に具合を伺う。


 「良い感じです。 良い相性です。」



 玉が一の矢を放つ。深々と図星を得て、的板を割る。

 直ちに左隣の的に向かい、二の矢を放つ。 これも図星を得、的板を割る。

 次に、最初の的の右隣を向き、三の矢を放ち、同様。


 「我々エルフの里でも、これ程力強く、正確に的を射抜く者は居りませんよ。 姫様、とんでもない人を伴って来ましたね。」


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