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手合わせ(壱)

 控えの間に入り、襟元(えりもと)を緩めながら、レイア王女が声を発した。


 「取敢(とりあ)えずの牽制に成ったわね。 感謝します。 玉殿、カエサの書状、サラッと凄い事を書いていた気がするわ。」


 団長が合わせる。


 「最優秀人物、仁・義・礼・智・信・武・勇、全ての女性を楽しませる、嫁捜しの旅、カエサ殿の二つ目の内容が、良く理解できません。 レイア姫、噛み砕いてご教示下さい。」


 「マーガレット、貴女も難しい事をサラッと頼むわね。 私達は、玉殿と接した時間が短いけれど、カエサとの長い時間の付き合いの結果、分かった事なのでしょう。 大賢者が断言する程なのだから、私達が知らない秀出(ひいで)た所がたくさんあると言う事ね。 仁・義・礼・智・信・武・勇、昔、ソクラに教えて貰ったわ。 遥か東の大陸で、古代より伝わる事で、人が備えていなければ成らない七つの分野で、それぞれに秀出ている事が優秀さの目安になる、らしいと。 次の項目は、詳しくは分からないので、今度妻帯している兵士の奥さん連中に聞きましょう。 嫁捜しの旅に付いては、文字通りね。 そう言う事ね、玉殿。」


 「薬草採りの玉が申します。 王女殿下、その通りで御座います。 ・・・・、他に特段の御用が無い様でしたら、着替えを済ませたいのですが、・・・・、皆様は、それぞれの寝所が有り、其処(そこ)で着替えられますが、私が出来る場所は、此処だけなので、それぞれの寝所へ出向いて頂けますか。」


 「ああっ、玉殿、気が付かず、申し訳無い。 各自着替えてから、再度此処に集合しましょう。」


 王女殿下が指示を出してくれた。


     ※          ※


 再度集まった後、全員で近衛兵舎に向かった。 王城の敷地内にあり、常時、変事対応出来る場所に有る。 玄関扉を開け、応接・打合せの間を通り抜けると、中庭・練兵場(れんぺいじょう)に出る。 兵士達の訓練を珍しそうに見る玉に、マーガレット団長が声を掛ける。


 「兵士の訓練を見るのは、初めてですか。」


 「玉が申します。 はい、初めてでは有りませんが、覇気(はき)があって良いですね。 マーガレット団長殿。」


 先程の武・勇に気を引かれるマーガレットに悪戯心(いたずらごころ)が、少しだけ芽生える。


 「玉殿、体験しますか。 今日は、棒、剣、弓、無手全ての訓練を行っております。 お好きな手を選んで下されば調整しますよ。」


 「玉が申します。 マーガレット団長殿、宜しいのですか。」


 「ええ、宜しいですよ。 今日は、レイア姫も久し振りにお見えになっております。 姫様も久し振りにどうですか。」


 「ミラドまでの往復の旅。 (しばら)く体を動かしていなかったから、玉殿の体験を見ながら、軽く組手で(ほぐ)そうかしら。 玉殿、決めましたか。」


 「玉が申します。 団長殿、全部でお願いします。」


 「分かりました。 では、棒から始めましょう。 丁度、初年兵が鍛錬しているので、お邪魔しましょう。」


 「玉が申します。 団長殿、ぼうして棒からなのですか?」


 「玉殿、座布団一枚取りますよ!」



 二人一組、木製の長い棒を持ち、指導を受けている。 十組、二十人ばかりいる。 団長が、現役を退き若年兵の指導に回ったイーゴと相談し、玉殿を紹介する。


 「初めましてイーゴ殿、玉と申します。 急な申し出への許しを頂き、感謝します。 宜しく願います。」


 玉を一目見るなり、イーゴが言った。


 「姫様達を救った玉殿だね。 マーガレット、この人の相手だが、若年兵では務まらないぞ。 (わし)が代わる。 儂でも(かな)うか、適わんな、恐らく。 ほらよっ。」


 イーゴが棒を一本、玉に投げ渡す。


 イーゴの(つぶや)きを聞いたマーガレットが思った。

 (現役を引退したとは言え、大陸一の槍使い、串刺しの髭槍(ひげやり)の二つ名を持つイーゴに、適わんと言わせる程なのか? まだ、何もしていないのに。)


 マーガレットが立ち合い役を受ける。


 両者、棒を立て、挨拶。


 始まり、互いに構える。


 イーゴが左半身から電光石火の突きを入れる。 玉、左半身、脚位置を変えずに軽く突きを払った後に、これも電光石火の踏み込みと左半身からの突き。 イーゴの踏み込みの勢いが玉の突きの勢いを増し喉へ伸びる。 瞬時に狙いを左肩に変え、勢いを殺しながら突く玉。 ポン、軽い音を出し、イーゴの

左肩に一本入る。


 「左肩への突き有り、玉」


 仕切り直し、二本目開始。


 イーゴ、左半身からの電光石火の突き、連続して半身入れ替え、右半身からの突き。

 玉、先程と同じく軽く払った後、此度は、左脚を引いてイーゴと同様に右半身へ、イーゴの右半身からの突きを中段で受け、棒を滑らせながらイーゴの懐へ入り、柄を長く下げ、下段からの払いを、右膝に軽く当てる。


 「右膝への払い有り、玉」


 仕切り直し、三本目開始。


 イーゴ、一、二本目と同様に左半身から電光石火の突き、からの右袈裟打ち。 玉、突きを軽く払い、袈裟に構え、振り下ろされた瞬間にイーゴの左に入身し、左後方から柄を頸部(けいぶ)に軽く打ち当てる。


 「左頸部への打ち当て有り、玉」


 (えっ、イー爺が、成す術も無く負けた。玉殿の動きが速過ぎて、目で追えなかった。)


 王女、メアリー、副団長、審判のマーガレットも驚いた。


 「手合わせ、有難う御座いました。


 互いに礼を済ませた。


 「やはり、歯が立たなかったな。 現役時代に戦場で遭わなくて良かった。本当に。 即死だったろうな。 ・・・・、姫様、この御仁(ごじん)だったら誰が相手でも、間違い無く勝てる。 この年になって、又、一つ、学んだ。 自分の未熟さを。 やはり、日々、精進だな。日々の過ごし方を再考しなきゃ如何(いかん)。」


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