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潜在意識

 「先程、隊長殿に説明したのですが、生け捕りにした三人、今、気を失って居りますが、この状態で黒幕の正体を探り出せます。一人ずつ、覚醒(かくせい)の有無に関わらず、私の意識が、当人の意識下に潜ります。 覚醒していれば、誤魔化(ごまか)そうとするでしょうが、表層意識の下、当人の記憶に潜ります。 真の情報を掘ります。 恐らく、三人共、同じ情報を共有している(はず)です。」


 ここで初めてメアリーが口を開く。


 「玉殿、あなたの全てを信用出来るのか、私には判断出来ません。」


 王女が驚いて叱り付ける。


 「メアリー、命を救って下さった方に失礼です。 謝罪しなさい。 玉殿、無礼な発言、申し訳有りません。」


 「王女殿下、謝罪は不要です。 主を守る立場としては、当然だと思います。 自分達の懐に入る為の狂言だと思われても不思議は有りません。 ・・・、二つ、提案が有ります。 お話しても(よろ)しいでしょうか。」


 「玉殿、提案の説明、許可します。 どうぞ。」


 「一つ目ですが、実は帝国の大賢者カエサメデス様から貴国の大賢者ソクラケロ様宛の書状をお預かりしています。 薬草を採りながら、あちらこちらをウロウロしている間に知り合いが増えまして、カエサメデス様もその一人でして。 いえ、疑うのは御尤もです。 内容をお見せする訳には参りませんが書状自体は、お見せ出来ます。 鞄から出しても宜しいでしょうか。」


 「ほう、帝国の大賢者ですか。 うむ、何度かお会いしています。 ソクラとは、長い交誼を結んでおります。 見せて下さい。」


 鞄から、丸められ封蝋された羊皮紙を出し、メアリーに差し出す。 王女へ渡す。


 「有難う。 玉殿、この家紋、確かにカエサメデス様の物です。 間違いないです。 確認出来たのでお返し致します。」


 メアリー経由で戻った書状を鞄に収納する。


 「二つ目は、私が本当に正しい情報を掘り出せるのか、本当に正しい情報を正直に伝えているのか、確証が得られない事ですね。それに関しては、王女殿下しか知り得ないメアリー殿の情報をこの場で掘り出して、確認して頂くのは如何(いかが)でしょうか。」


 「面白い、玉殿、それは面白い。 それが出来たなら、私も、隊長も、メアリーも納得するでしょう。」


     ※


 メアリーにテント中央に座ってもらい、左後方に座った玉が、軽く彼女の左肩に触れる。


 数秒、ほんの数秒静かに触れただけ。


 「三日前、ミラドで王女様と一緒に食したナポリッツァ(ピッツァに似た食べ物)が大変な美味で、車中のおやつに大判二枚を焼き増ししてもらい、堪能(たんのう)した。 その後、自国トレドの料理屋でもナポリッツァを注文したが、帝国ミラドの味には及ばず、大変落胆(らくたん)したのですね。 それと、メアリー様の幸運色は、赤なのですね。 大変、大事にされている御様子ですね。 此度の同行にも、何枚か持参されていますね。」


 メアリーの顔が、見る見るうちに真っ赤になり、両手で顔を(おお)ってしまった。 王女が吹き出し、大笑いする。


 「玉殿、当たりも当たり、大当たりです。はははっ、いけない、お腹が(よじ)れます。 メアリー、あ~可笑しい。 メアリー、メアリー、当たりですね、文句は有りませんね。 はっはっは、久し振りに笑えました。 あ~、お腹が痛い。」


 メアリーは、真っ赤な顔を手で覆ったまま、隊長はと言えば、ポカンと王女と侍女を交互に見ている。


 「ミラドのナポリッツァは、私も食し、美味しいと思いましたが、幸運色の赤とは?」


 「いいのです。 これは、乙女同士の、いや、私達と玉殿の秘密です。」


 「メアリー殿、恥ずかしがる事は有りません。 私の故郷でも、赤は幸運と財を招く色とされ、皆有難く思って居ります。 これで納得頂けましたか。」


 (ようや)く顔色を戻し、手を除けて、玉に向かって(うなず)いた。 


 「重ねて、玉が申します。 生け捕りの三人から情報を掘り出した後は、命を取ります。 今夜中に黒幕の屋敷前に二十体の(むくろ)を並べて、お返し致します。 無言の圧を掛けます。 これで、首都クリスへ着くまでは、あちらも迂闊(うかつ)に手を出すことは無いでしょう。」


 王女に向き直り言上する玉に向かってレイア王女が述べた。


 「グレイブから聞きましたが、収納魔法と転移魔法を使うそうですね。 玉殿の段取りに託します。 隊長共々、クリスまでの道中、宜しくお願いします。 良いですね、メアリー。」


 「はっ、御意。」


     ※


 夕食後、三人の潜在意識に潜り、掘り出した情報は、同様であった。


 襲撃して来た騎士・兵士は、隣国キルレオ王国のジョバンニ辺境伯の手の者であった。宗主国のタッカー辺境伯と国境を挟んで隣り合う伯爵家同士、昔からの繋がりが有り、縁戚関係でもあった。 タッカー家で揉め事が有れば、盗賊に扮し、国境を勝手に越境してジョボンニの手の者が出張って来て、武力に訴え、タッカーは自らの手を汚さず利を攫う。 反対に、ジョバンニ家で揉め事が起これば、タッカーの手の者が出張り、ジョバンニが利を攫う。 直接手を下したのは、どこかの盗賊であるとの(てい)を通す。 


 今回の襲撃を画策した重要人物が王室内に居る。 レイアの姉である第一王女スカーレットの婚約者、侯爵家二男のモリスである。 病弱の第一王女の次に継承権の有るレイアの存在を快く思わない、尻の穴の小さい侯爵家二男。


 クリス到着以降の対策は、王女と王室、為政者達の策略に任せ、玉は、先程息の根を止めた三人を含めた二十体の骸を、真夜中、タッカー辺境伯の屋敷前にずらりと並べて、返却した。 

 併せて、王国首都ヘルスレ近郊の森に転移させたクロウ(テイムした梟)をジョバンニのクリス邸へ向かわせた。 屋根の上に止まらせ、邸宅内に念を伸ばす。 敷地内のポタジュガーデンから(つる)を伸ばしジョバンニの寝室へ入れる。蔓の先端を縫い針よりも細く、そして硬化させ、仰向けに寝ている経静脈へ差し込み、注入。 蔓を戻し、念を消し、クロウは近くの森へ戻る。


 (ご苦労、クロウよ)


 (主、体感温度が二度下がったぞ。)


 (クロウよ、羽毛で覆われているから、そりゃ無いだろ。)


 (主、御尤(ごもっと)もです。)


 (クロウ、休んでくれ。)


    ※          ※


 首都クリスまでは、通常四日掛かるところを三日で達した。 

 最終日は、満月であり、明るかったことと、王城からの警護隊が加わり夜を徹しての帰還になった。


 王城に着いて直ぐに、王女殿下から、午前中、二刻後に宗主に帰還報告を済ませるから同行せよとの指示が下った。


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