野営
勇敢だった三名と、この場での別れを済ませ、馬車や積み荷の点検後、野営予定地に移動した。
兵士達が馬車やテントの位置決めをしている間に、玉が結界用の置石を八角形に縄張りしたそれぞれの頂点に置いた。
グレイブ隊長に向かい、玉が小声で伝えた。
「隊長殿、野営範囲の周囲八角頂点に結界石を置きました。 二重結界にし、地中にも結界が及んでいます。 襲われる心配は無いと思います。 ・・・、隊長殿、実は、気を失っている三人に拷問を掛けずにこの場で黒幕の正体を探れるのです、私には。」
隊長の声にならない、エッ。
ポカンと口を開く隊長。
「この場でって、この野営地でか。」
「はい、他の兵士が寝静まってから、隊長のテントの中で、王女殿下立ち合いの元で。」
「玉殿、本当にただの薬草採りなのか? ・・・、食事の支度をしている間に殿下に説明しよう、俺のテントで。 俺もどうやって情報を得るのか、詳しく知りたい。」
「薬草採りが国と王室の絡む複雑な案件に口を挟むのは、不遜だと思いますが言わせてもらいます。 敵が何者なのか、既に気付いているご様子なので、敢えて問います。 察しが付いているにも関わらず、強く踏み込めないのは、敵方の関係者、それも身分の高い方が、国内に、それも身近にいらっしゃるのですね。」
「そこまで推測できるのか。」
「他国にて、何度か、同様な状況に接した事があるものですから。」
「本当に、何者なんだい、玉殿は。」
「続けて宜しいですか。」
「ああ、続けてくれ。」
「今の状況では、殿下に黒幕の正体を、三人から同じ内容を確認すれば、確信になるでしょう。 確認後、速やかに三人の命を絶ち、二十人の骸を、今晩中に辺境伯、あっ、口が滑りました、黒幕の屋敷の門前に並べます。
「「此方は何でもお見通しだよ。何時でも反撃出来るんだよ。」って、マウントを取りましょう。」
「マウント? 何だ、黒幕まで気付いているのかい。 ただの薬草採りでは無いね。 二十体の骸をどうやって今晩中に屋敷前まで運ぶんだい?」
「収納魔法は、先程お見せしましたね。 実は、転移魔法も使えるんです。」
「使えるんですって、本職は魔法使いなのか? まあ、良いわ。 その辺も後で殿下と相談しよう。」
※ ※
収納鞄から、野生の大蒜と葱、野豚の干し肉を出し、料理担当の兵士に渡し、序に常時持ち歩いている香草の混合束も分け与えた。
袈裟懸けの白鞄からポンポン食材が出て来たので、驚きと有難さが入り混じった複雑な面持ちの兵士達を尻目に、隊長のテントに向かった。
既に王女殿下が居るようなので、丁寧に入幕の許可を得る。
「薬草採りの玉です。 入っても宜しいでしょうか。」
「玉殿、入って下さい。」
使用人のメアリーも同席している。
「失礼致します。 王女殿下、どこか体の痛みや気分の悪さは、有りませんか。」
「玉殿、気を掛けて頂き感謝します。 至って良好です。 メアリーを同席させました。使用人兼護衛役です。 気を遣う事は有りません。」
隊長が了承しているので、問題は無いのであろう。
メアリーに向かって挨拶。
「はっ、了解しました。 メアリー殿、宜しくお願い致します。」
メアリー、無言の頷き。




