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出会い

 左端に立つオークの左後方の木陰に転移。


 三体の首にある隷属呪紋(れいぞくじゅもん)の確認と1キロメテロ北側に位置する“真の森(まことのもり)”内に魔物複数体を確認したので(まと)めて解呪する。


 念話で(ささや)く。


 (オーク並びに森の友よ、大人しく森へ帰るが良い。 森へ帰るが良い。)


 オークと魔物達は、目が覚めた様子で、振り向きもせず、大人しく森へ戻った。すぐさま、騎士・兵士の方を見遣(みや)り、念ずる。

           

 攻め手の兵士及び馬が動かなくなり、気を失い、倒れる。 馬から落とされた騎士達も立ち上がろうとしたが、兵士達同様、動かなくなり、気を失い、倒れる。


 攻められていた宗主国側の兵士達は、何が起こったのか分からなかったが、兎に角(とにかく)危地を脱したと思い息を着いたところに、怪しい三十路のオジサンが諸手(もろて)を挙げて、名乗り出た。                  


 「驚かせて申し訳ない。 通りすがりの薬草採りのぎょくと申します。 行き成り出て来て、あれですが、そこの長槍を持った二人、別れて、倒れた兵士達が本当に死んでいるかどうか、ちょいと突いて確認して下さい。 指示役と思われる三人以外は、息の根を止めました。 生き残りの三人は、気を失っているだけで、私の足元に転がって居ます。 その間に、誰か一名、重傷者五名の所へ順繰(じゅんぐ)りに私を案内して下さい。」


 頭一つ抜き出て大きい騎士が出て来て名乗った。


 「隊長のグレイズだ。 案内する。」


     ※          ※


 貴族用馬車の脇で、右前腕を切り落とされた兵士が、剣鞘(けんざや)を利用して布を右上腕に巻き付け止血していた。兵士の前で心配そうに(かが)み込んでからグレイズが、血の気が引いた顔を見ながら言った。


 「大丈夫、助かるからな。 気をしっかりと持て。」 


 玉に向き直り、説明した。

       

 「重傷者は、五名。 三名は、馬車の周りにいる。残り二名は、オークと戦い腕と肩、脚の複雑骨折だ。」


 (ハイヒール)


 玉が、貴族用馬車を囲むようにハイヒールの効果円を拡げる。 切り落とされた右前腕が宙に浮き、切断部に結合し、治癒(ちゆ)する。

 肩から胸に掛かる深い創傷(そうしょう)(ふさ)がり、治癒する。 下腹部が裂かれ、内臓が飛び出していたが、内臓が浄化され、元の位置に戻り、傷口が塞がり、治癒される。 


 グレイズの口から、驚きの声が漏れる。


 「おお、無詠唱で・・・、素早い・・・、治っている・・・。 こんな治癒魔法、初めて見た・・・。」


 驚きの声を他所(よそ)に、玉がポーションを出す。


 「隊長、誰か二、三人呼んで欲しい。 エクストラポーション五本を出した。 一人一本、飲ませて下さい。 多量に失血しているので、傷が塞がったからと油断せず、(しばら)くは安静に願う。」


 続けて、オークの居た場所に移り、骨折の兵士二名にもハイヒールを施し、ポーションの服用と安静を指示した。


 その後、隊長と共に命を落とした兵士の亡骸(なきがら)の元に向かい、悔やみの言葉を述べた後、血を拭き取り、遺体を整え、鞄から取り出した収納袋へ納める。


 ここで初めて、貴族用馬車内に人の動きを感じた。 すかさず隊長が駆け寄り、扉を開ける。 綺麗な眉毛の下に線を引いた様な細い眼の高貴な令嬢と、美形の女使用人が出て来た。


 隊長を始め、動ける者が近寄り、(ひざまづ)いて見守る。


 「グレイズ隊長、危地を脱したようですね。 ご苦労様です。 車中、メアリーと息を押し殺していたら、ハイヒールの光が降り注いで来て、怖さが払拭(ふっしょく)され落着きを取り戻しました。 外も静まり、危機が去ったと思われたので出て来ました。 状況を教えて下さい。」


 隊長が報告する。


 「恐らく、王女殿下の命を狙った者と思われる、騎士五名、兵士十五名、巨大なオーク三体から成る一団の襲撃に()いました。 戦闘の末、ジョン、レノン、ポール、三名が落命し、五名が重症、その他数名は軽傷で済んでおります。 戦闘中、後ろに控えて居ります薬草採りの玉殿が通り掛かり、オークを追い払い、敵二十名の内十七名を打ち取り、三名を生け捕る事が出来ました。重症者五名は、玉殿のハイヒール及びエクストラポーション投与のお陰で全治癒、回復に向かって居ります。」


 隊長が、玉に向かって言い放った。


 「玉殿、助けて頂いたお礼が遅くなり申し訳無い。 有難う、誠に有難う。 重傷者五名にハイヒール、更にエクストラポーションを施して下さり、感謝する。 そして改めて紹介致すが、此方がイルマ宗主国第二王女殿下、レイア姫である。」


 「薬草採りの玉殿、直答を許します。 此度は、危ない所を助けて頂き感謝致します。三名の尊い命を失いましたが、危地を脱する事が出来ました。 貴殿のお陰です。 重傷者への対処、重ねてお礼申し上げます。」


 前に控える兵士に小声で尋ねた。


 「あの細っこい、線を引いた様な眼をしているのが姫さんなのかい?  喜んでいるのか、悲しんでいるのか、全く分からんな。」


 「ぎょっ、玉殿、聞こえますよ あの姫様、耳だけは矢鱈(やたら)良いんですよ。」


 兵士が小声で玉に伝えた。


 (二人共、不敬罪で首を()ねちゃろうか。)


 レイア姫が自分の首に手を当てて玉を見遣る。


 「薬草採りの玉が申します。 困った時はお互い様です。 微力ながらお役に立てて光栄に思います。 皇女殿下及びグレイズ隊長の謝意(しゃい)、確かに受けました。 ・・・、厚かましい様ですが、

杞憂(きゆう)でしたら幸いです。

 心懸かりを述べさせて頂きます。 後、数刻で陽が沈みます。 今から首都クリスへ向かうには夜駆けとなり、又、不逞(ふてい)(やから)が襲い掛かるやも知れません。 ここを1キロメテロ程進み西側に入った所に野営に向いた開けた場所が有ります。取り急ぎ、馬や馬車、積み荷等を点検後、移動なされたら如何でしょうか。」


 レイア殿下もグレイズ隊長を始めとする兵士達も、ハッとした様子で、気を引き締めたのが(うかが)われた。


 「命を救われただけで無く、現状の把握と先の事まで考え及んでいたとは、つくづく有難い。 感謝する、玉殿。」


 レイア殿下が謝意を示す。


 「重ねて薬草採りの玉が物申します。 丁度私も首都クリスへ向かう途中でしたので同行させて下さい。 それに伴い、亡くなった三人の遺体を私の鞄へ収納しますので、皆さんで、この場でのお別れを収納前に願います。 収納後に、私は馬車の馬を(いや)し、御者達と馬及び馬車の点検をしますので、積み荷担当の方、数名で積み荷の梱包固縛(こんぽうこばく)状態、数量等を併せて確認願います。」


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