第5章 地球と星と、僕らの証明式
「じゃあ、次の発表です」
合宿最終日。町の交流施設で行われるプレゼン大会。
地元の人や他校の科学部も集まっていて、空気に少しだけ緊張が混ざっていた。
湊斗がプロジェクターの前に立ち、深呼吸する。
「僕たちは、草津町を“地球の鼓動”として捉えました」
スライドが切り替わる。湯畑の湯気、白根山の岩肌、残雪、星空。
それぞれの写真には、4人のSNS投稿が添えられていた。
《#草津科学部 #湯畑の温度 #地熱エネルギー》
《#火山の懐 #安山岩と硫黄 #地球の鼓動》
《#湯気カーブ #マグヌス効果 #ザスパ草津風》
《#露天風呂と星空 #光のタイムマシン #青春フィールドワーク》
「温泉の成分を調べてみると、pH2.1の強酸性。殺菌力が高くて、皮膚にも作用するんです」
陽翔が解説を加える。
「地熱って、地球の内部エネルギーの一部。火山活動とつながってるんだよね」
「あと、雪の結晶は六角形。水分子の構造が関係してて、気温と湿度で形が変わるんです」
結菜がスライドを操作しながら話す。
「それを踏まえて、サッカーの変化球実験もやってみました」
大翔が笑顔でボールを掲げる。
「湯気の中で蹴ると、気流が乱れて軌道がズレる。マグヌス効果+空気密度の変化って感じです」
「それ、地熱×スポーツ科学の融合じゃん」
会場から小さな笑いが起きる。
最後のスライドには、星空と湯気の写真。
「草津町は、地球のエネルギーと宇宙の光が交差する場所でした」
湊斗が締めくくる。
「科学って、身近で、ちょっと不思議で、すごく面白い。そんなことを、4人で確かめてきました」
拍手が起きる。
結菜がスマホで最後の投稿を打ち込む。
《#草津科学部 #科学と青春 #また来年も #地球の鼓動は続く》
投稿後、コメント欄が静かに動き出す。
「プレゼン見たよ!」「タグがエモすぎる」「来年も楽しみにしてます」
「うわ、顧問の先生が“泣きそう”って書いてる……」
陽翔がスマホを見ながらつぶやく。
「それ、スクショしとこ」
大翔が笑う。
「てか、俺らのタグ、ちょっとモテそうじゃない?」
「それ、毎回言ってるけど結果出てないよね」
結菜が冷静に返す。
「でも、科学でモテたいって思うの、悪くないでしょ」
湊斗が笑う。
「うん。だって、科学って、誰かに伝えたくなるものだから」
科学と青春の旅は、証明式として、ひとつの形になった。
でも、問いはまだ終わっていない。
次のフィールドは、きっとまた、湯気の向こうにある。




