表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
カトゥオール シアンティフク 2  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/6

第2章 火山の懐で、地球が息をする

「この坂、マジで心臓にくるんだけど」

大翔がハンドルにしがみつきながら、白根山方面の登り坂を見上げた。

「それ、地球の心臓に向かってるって思えばロマンあるでしょ」

陽翔が笑う。湊斗はスマホで現在地を確認しながら、結菜の背中を見ていた。

彼女は黙々とペダルを漕いでいる。


標高が上がるにつれて、空気が薄くなり、風が冷たくなる。

木々の種類が変わり、足元の土の色も少しずつ赤みを帯びてきた。

「標高が100メートル上がると、気温は約0.6℃下がるって言われてるよ」

湊斗がつぶやくと、結菜が振り返る。

「じゃあ、今の気温と標高を記録しとこ。あとでグラフにできるし」


スマートセンサー付き温度計がピッと鳴る。

陽翔がその数値をスマホに打ち込みながら、投稿文を整える。

《#草津科学部 #白根山登坂中 #気温15度 #標高1350m #地球の鼓動》


投稿して数秒後、「いいね」がじわじわと増え始めた。

「お、反応きた。あ、顧問の先生も見てる!」

「マジか、プレゼンのとき見られるやつじゃん……」

大翔が苦笑する。

「てか、俺の“地球の心臓”ってフレーズ、タグに入れてよ」

「それ、結菜が言ったやつじゃない?」

湊斗が冷静に突っ込む。


火山岩が転がる斜面に差しかかる。

黒く焦げたような岩肌、白く沈殿した硫黄。

「火山岩。たぶん安山岩系。マグマが冷えて固まったやつ」

陽翔が即答する。

「あと、あの白いのは硫黄の沈殿。火山ガスに含まれる成分が冷えて固まったんだよ」


「火山ガスって、何が入ってるの?」

「主に水蒸気、二酸化炭素、硫化水素。H₂Sってやつ。あれが温泉の匂いの正体」

「へぇー、じゃあ温泉って、地球のゲップみたいなもん?」

「それ、言い方!」

結菜が笑いながらツッコむ。湊斗も吹き出した。


展望台に着くと、眼下には草津町が広がっていた。

湯畑の湯気が、遠くでふわりと立ちのぼっている。

「ここから見ると、町が火山の懐に抱かれてるみたいだね」

湊斗がつぶやく。陽翔がスマホを構えて、また投稿。


《#草津科学部 #火山の懐 #安山岩と硫黄 #地球の鼓動 #湯畑見えた》


投稿後、「地球のゲップ」に反応したスタンプが大量に届く。

「いや、そこ拾う?!」

湊斗が頭を抱える。

「でも、印象には残ったよね」

結菜が笑う。

「俺のタグ、バズってるってことにしていい?」

「それ、結菜のタグだから」

陽翔がぼそっと言う。


風が吹き抜ける。

火山の懐で、地球が静かに息をしていた。

その息づかいは、僕らの問いに、少しだけ答えてくれた気がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ