【Turn 悪鬼】36.
一人の少女の声が聞こえた途端に、堕蜘斗は大きく目を見開いた。
だけど、むぅなの方を警戒しているのだけはわかる。
むぅなは銃を構えながらも撃つことはしなかった。
その少女たちは堕蜘斗とは正反対の真っ白な髪と服を着ている。見分けがつくのは髪の長さぐらいしかない。
「陽葵⁉ 日陽もいるのか⁉」
「今は本名じゃないよ。」
一人の女の子、肩ぐらいの髪の子がか細い声を出す。
「そうだったな、夜雲。月雲もごめんな。」
そう堕蜘斗が言うと、「うん。」と言って二人ともにっこりと笑った。
「でもな、今は危ないから、逃げてくれ。」
「なんでー?」
「見たらわかるだろ、戦闘中。」
はーい。と言って二人の少女は出ていこうとする。
自分のことをバカだと思ってるむぅなでもわかった。
こいつは、三人そろって生き残るつもりだ。だから、むぅなや冥王を殺そうとしていたんだ。
だったら、こいつらを殺さないと。
むぅなは構え続けていた銃のトリガーを引いた。
「……っ! お前‼」
どうやら、そのことに堕蜘斗は気づいたらしい。
「お兄ちゃん、何?」
「いいから逃げ、」
人が倒れる音がした。
静かに赤は身体から流れ続ける。
「……ぁ」
その少女の声はまさに消えてしまいそうだった。
今から消えるから、その表現は的確かもしれない。
「…………夜雲?」
倒れた少女、夜雲は今も赤い血を流しながらぐったりとしている。
「おい、返事をしろ! 起きろ! 陽葵っ‼」
堕蜘斗は夜雲の肩を揺さぶる。
しかし、彼女が目覚めることはなかった。
これでゲームは……。
「……終わら、ない?」




