【Turn 悪鬼】32.
二人は人差し指をひっかけるように自分の手元に引き寄せた。
その瞬間、物騒な音が響く。それも二つ。
むぅなは左に駆け込んだ。冥王はしゃがんでまたすぐに立ち上がった。
「やっぱ、あなたのことは嫌いだわ。妹を殺しておいて死んでくれないんだもの。」
「私もかな。卑怯な手を使うよね。」
「それはあなたがおっしゃることでして?」
そんな会話も最後に安らぎを求めているからではない。
お互い、隙を探しているのだ。それをどちらも実践しているからだろう、空気は凍りついている。
むぅなはもう一度銃を撃った。
「……っ。」
カラコロ、と何かが落ちてくる。
それは小さな1センチほどの金属だった。
これってもしかして……。
「あら、私だってその技術は心得ているわよ? だって私が彼らに教えたんだもの。」
「ほんっとうに卑怯だよね。」
「確認はしたわ。今すぐ死ぬか、数日後に死ぬか。大抵は少しでも生き延びたくて仲間になってくれたのよ。」
「別に聞いてないけど。」
再び、二つの銃声が響く。
案の定、どちらにも当たりはしなかった。
……今までがラッキーだっただけか。
銃撃戦なんて、奇襲でもかけない限り当たることなんて滅多にないだろう。
だからむぅなは策に出た。
今の弾数を確認したむぅなは、最大まで装填する。
一つは冥王の頭を。
一つは彼女の両腕を。
一つは彼女の両脚を狙った。
残りの何発かは予備といったものだ。
当たれ。
むぅなはそう願いながら一つずつめがけて撃っていく。




