【Turn 悪鬼】2.
先ほどの「Ω」と名乗る男が現れた画面から、再び光が現れる。
今度は何だよ、と七海は思った。
超・高額賞金に加えて、デスゲームの開始。
もう非日常だらけだ。
案の定、その画面さえも非日常なことを伝えてくる。
『ゲーム開始中、あなたは「凩むぅな」の肉体を獲得します。なお、違和感は生じないはずですので、ご安心ください』
凩むぅなの肉体。
意味は分かる。一部の人がやっている3D配信のようなことだろう。
だけど、理解はできなかった。
七海は部屋の中にあった鏡を見る。
「おぉ……。」
七海は、これはすごいと思った。
そこにいたのは、佐藤七海ではなかったからだ。
それはもう一人の七海、凩むぅな。
七海……ではなく、むぅなは部屋の中にある物騒なものを見た。
たくさんの武器だ。
ナイフから小型の銃、スタンガンや金属バットまで多種多様にある。
七海は小型の銃を手に取る。
画面はまた光始めた。
『配信を開始いたしますか?』
その下には『YES』と『NO』のボタンがあった。
一応、『YES』にしておいた。だれかが気づいて助けてくれるかもと思ったからだ。
「凩むぅなです。今、なんかデスゲームに巻き込まれちゃってて……。助けてください‼」
コメント欄は疑問符しかない。
いつもの視聴者さんぐらいしかいないけれど。
「なんか、変なところに巻き込まれちゃって。上位三人にならないと生きてられない、みたいな……」
コメント欄は未だに疑問符で満ちている。視聴者さんも不思議でたまらないのか、どんどんその符号も多くなっていく。
――その符号も多くなっていく?
むぅなは配信の左下にある視聴者の数を見た。
それは、今までとは比べ物にならないほどで、2000人を超えていた。
「……っ! お願いです! 助けてくださいっ‼」
むぅなは二つのことを考えていた。
一つは、だれも助けてくれない焦り。
もう一つは、今までで見たことのない視聴者の数に対する驚きと喜び。
『これって、LAST CHANCE GAMEの参加者だよね?』
『配信内容的にそうなるね……』
視聴者たちで会話を始める。
『じゃあ、無理じゃね?』
『うん、俺たちでは何もできない』
それがすべてだった。
ここで生き残る方法は、戦うしかない。
むぅなは心を打ち砕かれるような思いになった。
――殺さなきゃ、生き残れない。
だったら、やるしかない。
むぅなは一言だけ言ってやった。
「ぜったいに、むぅなは勝つから! むぅなのこと、応援よろしくねー‼」
首元にはカメラがついていた。ここから画像は視聴者に飛んでくるらしい。
むぅなは部屋を出た。
既に悲鳴が上がっている。