【Turn 悪鬼】22.
だが、その作戦はあっけなく破綻を迎える。
『では、今から通知音を鳴らすことにしよう』
むぅなから電話がかかってきたかのような通知音が鳴り響く。
「…………っ!!!」
狭い場所での大きな音は跳ね返り、むぅなの鼓膜を破ろうとする。
それもロッカーは金属製だったからか、音は吸収せずに跳ね返る量が多かった。
超音波のように武器にさえなってしまうのではないだろうかとも思う。
むぅなは急いでロッカーを出た。
この音を聞かれたらマズい。数少ない参加者がきっとむぅなを狙うだろう。
どこに行ったらやり過ごせるだろうか、とむぅなは考える。
――とりあえず、自室だ。
ルールは何でもありだとΩが言っていた。つまり、たとえゲーム中であっても部屋にいることは許されるはず。
そうなったら話が早い。むぅなは自分の部屋に移動した。
奇妙なことに、音が鳴っている最中にも関わらず、一人にも出くわさなかった。
強烈に鳴り響く音を漏らさないよう、部屋に駆け込んだむうなは急いでドアを閉める。
そこには、なぜか懐かしさを感じる光景が残っていた。
『ぜったいに、むぅなは勝つから! むぅなのこと、応援よろしくねー‼』
ちょうど一日前、むぅなが今までとは比べ物にならないほどの視聴者たちに向かって宣言した言葉だ。
あのときと同じように、画面は光って見える。
『……あ、部屋に戻って来た。』
『おかえりー。』
と、今も見ていたのだろう視聴者さんたちのコメントが来る。
「ただいまー。」
ふと現在の視聴者数も見てみたが、少し減ったものの、このゲームに参加する前では考えられない数だ。
『どう? 今のところ順調?』
一人の視聴者からコメントが送られてくる。
「今のところ生存圏内にいるからいいけど、結構大変。夜が明けたら急に三位に下がっちゃうし、ポイントを稼ぐのにミスったら死んじゃうし。危ないところも何回かあった。」
そう言いながら思い出すのは、Qとの出会いと鬼羅との戦いだった。
あのときは死んでもおかしくなかったとむぅなは思う。
『そういえば、音消えたね。』
「あー、三位以内の場合に来る通知か……。本当にうるさいよねー。もう十分たったのかな。」
『え、消えたの? 戦宮司堕蜘斗の配信だとまだ音鳴ってるよ。』
「……?」『……?』
『ほんとだ。鳴ってる。』
『てか、あの人ヤバいよね。』
――戦宮司堕蜘斗。
たしか、現在一位の参加者だ。つまり……。
「生存、圏外……?」




