【Turn 悪鬼】20.
ここは運営本部。大きな建物の中にある大きな個室だった。
「すごいよ、もう上位三人で600ポイントだってさ。」
Ωは、彼の横に立っている秘書に声をかける。
「えぇ……。まだ一日目ですよね?」
そう、驚くべき事実は、まだこれが一日目の夜にもなっていないということだった。
「そうだね。いつもは四日目になるまで百人程度しか死なないというのに……。どうやら今回は獰猛で特出した素晴らしい参加者たちで溢れているのだろう。」
秘書はため息をついた。
「……そうですね。納得できます。」
今は亡き元三位の鬼羅龍は、相手の視線からどこに狙いを定めているのか見破るスキルを心得ていた。
凩むぅなの手によって現在二位に降格した戦宮司堕蜘斗は、視界に捉えてからの行動が異次元だった。
――そして、絶賛一位の凩むぅなは、とにかく運がいい。
殺戮人間βを倒した伝説――桐崎Qと真っ先に出会って才能を認められ、先ほどの鬼羅龍との勝負で危機一髪のところをよく言えば才能で、悪く言えば運だけで勝って見せた。
これほどの豪運の持ち主がこのゲームに参加したことさえ不思議に思ってしまうくらいだ。
「……だが、人が死ぬのはここからだ。」
「そうでしたね……。いつもより残りの生存者が半分になるスピードが速すぎて気づいていませんでしたけど。」
そう、人がたくさん死ぬ時間。
弱肉強食。残念至極。
気づくか気づかぬかが命取りとなる時間が始まる。
空はすっかり赤みを帯びていた。
「きっと、気づいている参加者もいるだろうね。」
Ωは子供のような笑みを浮かべた。
これから始まるのは夜の時間だ。




