【Turn 悪鬼】18.
「お前、バカだな! 周りが見えなきゃ狙えないぞ⁉」
「……。」
むぅなは鬼羅の言葉を無視する。
だが、彼の言っている通りだった。
確かに、これが打開策かもしれない。
だけどその代償に、鬼羅の動きを予想するのも狙っている場所を確認も不可能になった。
試しに一発撃ってみた。
何も手ごたえはない。考えてみれば当たり前だった。
もう一発撃ってみた。
だけど戦況は変わらないとむぅなは悟った。
残りの弾数は?とむぅなは考える。だが、最初に入っていた数がわからず、予想しようがなかった。
バン、ともダンとも言えない音が聞こえた。
何かはわかっている。どうせ銃声だ。
つまり、こちらに弾が来ている。
むぅなは右側に走った。
重い右脚が足かせとなる。
急いで逃げるも、その右脚は床に引きずられているから、ちゃんと走ることはできなかった。
「……っ!」
一歩前に出した右脚がついに限界を迎えたのか、むぅなはただの床でつまずいてしまった。
そのまま勢いよく前に倒れる。
右肘と左脚を使ってなんとか頭をぶつけずに済んだ。
「ハッ。転んでしまうとは情けない‼」
もう終わりか。とむぅなは思った。
ここまで来たら殺される。
むぅなはきつく目を閉じた。
銃声は――聞こえない。
「……クソッ! なんでこんなときに…………!!!」
これが意味するのは一つだけ――弾切れだ。
今なら、とむぅなは思った。
きつく閉じた目を少し和らげる。
弾が切れるまで、むぅなは適当に撃ち続けた。
これは賭けだった。




