【Turn 悪鬼】16.
彼が笑った瞬間、何かが飛んでくるのを捉えた。
「……っ!」
むぅなは横に避けた。銃を撃って弾を落とす技術など、彼女は心得ていなかったからだ。
……これはマズい。むぅなはそう思った。
まず、ただ今三位のやつと出くわしてしまったこと。強いくせに、ポイントの足しになると思って勝負に挑んでくるかもしれない。このレベルまで行くと、あいつに育てられたむぅなでさえも少し不安になった。
次に、鬼羅龍と名乗る奴が好戦的でありそうだということ。最初に攻められた場合、どうすればいいのかよくわからない。
最後に、「隙だらけだ」という彼の言葉。これはむぅな自身、否定できなかった。ずっとQにサポートをしてもらい、なんとか稼げたポイントだ。まあ、その大半はきっとQから得たものだろうが。
「……何をするつもり?」
「もちろん殺すつもりさ!」
とても明るく言っているが、めちゃくちゃ物騒だ。
「……理由はポイント稼ぎ?」
「ああ、もちろんさ‼ お前を倒せば、一位の戦宮司堕蜘斗を超せるからな!」
「たしか、百五十ポイント以上持っている人だよね。」
「そうだ! 俺は生き残りたいんじゃない。一位を取りたいんだっ‼」
また頭のおかしい人と出会ったな、とむぅなは思った。
別に生き残るだけでも奇跡だと思うのだが……。
「何事も、勝負をするなら一番だ! だからお前を殺す!!!」
だから朗らかに物騒なことを述べないでくれ。と言いそうになるのをむぅなはこらえる。
「その戦宮司堕蜘斗に負けたら、一位どころか死んじゃうよ?」
「それは嫌だ!」
このときむぅなはなんとなくわかった。この人、単純だ。と。
「……じゃあ、協力関係でも結ばない? 私さ、少し前までQと一緒にいたんだよ」
「本当か!!? あのβを倒したらしいやつと⁉」
むぅなは頷く。
「目標は一位を倒すこと。一位を見つけたら仕留めちゃっていいよ。それでどう?」
むぅなは鬼羅の答えを待つ。




