【Turn 悪鬼】10.
「終わっ、た……。」
天音――殺戮人間βを倒したことを確認したQはその場でへたり込んだ。
「Q……⁉」
むぅなはその彼に駆け寄る。
「大丈夫だ、むぅな君。……勝ったよ。」
「勝ちはしたけど……ボロボロじゃん……。」
「そうだな……。」
Qは敵と遭遇したときとは違って、作り笑いのような笑顔を浮かべた。
笑えるだけすごいともむぅなは思う。
Qの負傷箇所は数えられるほどではあるが、普通の人ならとっくに死んでいるものだ。
今もナイフが刺さった左腕。
軽く切られた左脚。
深く刺さって今も大量に出血している右手。
同じく刺された右足。
そして、きっと今も将来も見えることはないであろう左目。
計、五つ。
でもそれは、Q――万作が天音に勝った証でもあった。
「包帯でもあったら……。」
「このゲームは、死を、争うものだ。そんなものが、あるとは、考えにくいな」
Qの呼吸は荒い。こうして話している間も途切れ途切れに会話は続いている。
「…………でも、もう。あまり、戦いたくは、ない。かなぁ。目標も、達成したし。あとは、生きる、だけなんだけど。難しそうだ……。」
初めて弱音を吐くQに、むぅなは少し心配した。
そこに、二人組の参加者が現れた。
一人はか弱そうな子で、もう一人は姉御肌な雰囲気を纏っている。どちらも女の子だ。
むぅなは大きく目を見開く。
ついさっきまでは、Qが援護をしてくれてむぅなは額を撃っていた。
けど、そのQは今弱っている。
もう戦闘が困難なくらいに。
今は、むぅながQを守りながら戦わないといけない。
決して、Qを傷つけてはいけない。だって、これ以上傷を増やしたらQの命がより危険になるから。
むぅなは銃を頭を狙って撃った。
――だが、それは外れてしまった。
むぅなは再び目を見開く。
このままでは、マズい。
だが運のいいことに、その弾は腕に当たっていた。
ずらしたときに当たってしまったのだろうか。
むぅなは運の良さを感じた。
そのまま、もう一人には足を狙って撃つ。
いつも狙われる場所とは違うからだろうか。その弾は再び的中した。
そのまま三発目を撃とうとすると、カチッ。という音がする。
弾切れだとむぅなはすぐにわかった。
以前にQに教えてもらった弾の補充を行い、むぅなはその二人の額を撃つ。
まもなく、二人はこと切れた。
むぅなは大きくため息をついた。
……一人でも、勝てた。
そのとき、ぽぉん。という音がする。
『殺戮人間β君が倒された。倒したのは桐崎Q君だ。彼を倒せば高得点が貰えるだろうね。』
Ωは、それだけ言って再び消えた。




