【Turn kinsei】9.
「万作、死んでくれ。」
天音は持っていたナイフを万作の腹部に狙いを定め刺した。
「………っ、いってぇなぁ。」
だが、そのナイフが万作の腹部に刺さることはなかった。
万作はそのナイフの刃の部分を自分の右手で止めていたのだ。
天音はナイフを引き抜き言った。
「いいのかぁ?右手を傷つけて。」
「ふん、これくらいのハンデで十分さ。」
天音は嘲笑した。
「ハンデ?ふざけているのか?お前、ほんとに死ぬぜ。」
「そうかもな。だが………」
「だが?」
「だが、死んでも負けるわけにはいかねぇんだ。」
天音はニヤリと笑った。
「いいな。万作、お前、少しいい目をするようになったなぁ。」
「くっちゃべってねぇで早く続けようか。」
「そうだな。」
万作は天音に刺すためにいっきに間合いを詰めた。
だが、万作が刺しにいくよりも早く天音はナイフを万作の右足に刺しこんだ。
「…ぐっ。」
だが、万作はすぐに天音を殴り、間合いを開けた。
「もうやめておけ、万作、お前じゃあ俺にゃ勝てねぇ。」
「いや、僕は負けない。まだやらなくちゃあいけないことがたくさんあるんだ。」
「もういいだろう。安らかに眠れ、万作。」
天音は万作の目をめがけてナイフを突き出した。
ナイフは万作の左目に当たり万作の左目から血が出てきた。
「……ぐっ。視野が狭まって。」
「もう諦めろ万作。こんなにボロボロになっても戦い続ける今のお前は、かっこ悪いぞ。」
万作は笑った。
「最後を綺麗に飾ろうとなんざ思っちゃいないよ。最後なんだから逆に泥臭く生きてやるのさ。」
「お前らしくないな。万作。」
「言ってろ。」
万作はナイフを天音に刺そうとした。
だが、やはり防がれてしまった。
万作はナイフを地面に捨て天音に殴りかかった。
「ナイフを捨てるとはなにを考えているんだ?万作。素手で俺に勝てると思っているのか?」
「僕は今、なにも考えちゃあいない。お前を殺す以外のことはなぁ。」
天音は一瞬の隙を見つけ万作の腹部に狙いを定めナイフを突き出した。
だが、予想外なことに天音は先程捨てた銃を踏んでしまい足を滑らせ転んでしまった。
そこにナイフを拾ってきた万作が馬乗りになった。
「ふん、ここまで隙だらけとは、お前らしくもない。」
天音は最後の最後にやらかしたのだ。
「殺せ、万作。おめでとう、お前じゃあ俺に勝ったんだ。」
万作は天音の胸に、死に損なわないように深く刺した。
天音は最後に掠れるような声で言った。
「万作よ、ようこそ。この先はなにを選択しても地獄だぜ。」




