表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

僕は今、旧校舎で追われている

黄昏の校舎に女子生徒の恐怖に満ちた悲鳴が響き渡った。


「つかまえた」

「何でもしますから許してください」

「ダメ。今日こそあなたはここで使命を果たす」

「何で私だけ」

「貴女だけじゃないわ。これから残りも探しに行く。分かったら、さっさと入れ!」

「いや。やめて! 汚い。臭い!」

「黙りな」


金属の板が落下したような音。その後、女子生徒の声は聞こえなくなった。恐らく、溜まった怒りにやられたのだろう。


これで捕まった人数は、3人目となる。


「何で俺たちこうなったんだ。いいや、元はと言えばお前のせいだろ」


俺は、真横で口元を押さえているクラスメイト真鍋香織を睨みつけた。


「おい、聞いてるのか!?」


真鍋は反抗的な目で俺を見た。


「声が大きい」

「ご、ごめん。でも真鍋のせいだ。いざというときは、俺はお前を盾にする」

「はぁ? それでも男子!?」

「多様性を尊重しないと怒られるから。今は西暦2025年だぞ?」

「さいてー」


真鍋は、蔑むような眼差しで僕を見た。僕はイラッとした。

こいつがプールで泳ぎたいからと、無断で閉鎖期間の学校に入りたいと言ったのが悪いんだ。

水泳部の僕を拉致監禁して顧問から鍵まで奪わせた悪女だ。


「お前のせいで俺たちは、追われる羽目になったんだろ。俺の休日返せよ」

「悪かった。でも、まさかこんなことになるなんて思ってなかった。美久も楓も今頃……」

「拷問のような状態だろうな。埃臭くて光も届かないあの旧校舎で終えるんだ。お前のせいでな」

「私を責めないでよ」


真鍋は頭をムシャクシャと掻いた。長くて艶やかな黒髪に血が付着する。


「血が……血、なんで??」


みるみるうちに顔色が悪くなっていく。目を見開き小刻みに体を震わせている。


これはまずいと僕思った。真鍋の口を塞ごうと右手を伸ばすも遅かった。


女子特有の高くて耳障りな声が校舎に響き渡る。


「みーつけた」


声はすぐ下の一階から聞こえてきた。コツコツとゆっくりと着実に近づいている。


「おま、本当にふざけるなよ」


僕が小声でそう言うと、真鍋は「だって血が。なんで?」と言った。


「そんなの知るか。この状況なんだぞ。血なんて安いもんだろ。まぁいい、とにかく僕は先に行くからな」


震えている真鍋を横目に僕は立ち上がると、真鍋は弱々しく制服を掴んでくる。


「離せよ。僕はな、完全に被害者なんだ。こんな場所着たくもなかったんだよ。大人しく生贄になってくれ」

「待ってよ。置いてかないで」

「知るか。女子らしく強いとこ見せろよ」


コツコツとリズムよく階段を登る音に合わせて、僕は反対方向に向かう。少しでも足音を立てて、相手が予測不可能な行動をするリスクを防ぎたいからだ。


階段手前の壁際には、真鍋がいる。僕が追いつかれることはない。


完璧な計画は、予想通りの展開になった。


真鍋の悲鳴が聞こえたのと同時に僕は、階段を一気に降りる。古びた旧校舎特有の軋みなど気にせずに。


「やめて! こないで!」


よしいいぞ。一段飛ばしで一階の廊下に着地した僕は、左を向くと全速力で駆けた。


「グフェ」という気味が悪い声は、幸運の女神が唄う自らのレクイエムに聞こえた。


僕は救われる。あとは昇降口から出るだけだ。


心臓がバクバクする。息が切れ、限界だと叫んでいる。それでも明日への執着が、脅威的な加速として現れた。


このまま曲がり切れるだろうか。いや、曲がらなくてはいけない。


全速力。左半身が下駄箱にぶつかる。痛い。それでも行きたい。


ゴールは眼前にあるはずだ。僕は、外へと繋がるガラス扉を見た。幸運なことに開かれたままだ。


広いグラウンドやプールがこんなにも輝いて見えるなんて。


香る木々の匂いを堪能しながら、僕は扉を通った。


「つーかまえた」


瞬間、はがいじめされていた。完全に僕を連行しようと力強く抑えている。


「捕まえた」

「離せ。僕は被害者なんだ」

「被害者? よくそんなことが言える。仲間を裏切った分、君には特別なことをしてもらう」


ねっとりと言い聞かせるように喋った。


「私はそういうの嫌いだな。被害者かもしれなくても、クラスメイトでしょ?」

「先生は何も知らないんですよ。脳内お花畑ですか」

「君は口が悪いなぁ。まぁいいや。罰として視聴覚室の清掃お願いね。埃すごいからマスクは美久さんから貰って」


先生はそういうと、僕から手を離した。


「痛かったんですけど。そんなことするから血がでるんです」

「は? 何のこと」

「真鍋、血が出ているらしくて。だから先に保健室連れて行った方がいいと思います」

「あのさ、真鍋って誰? そんな子いたっけっか」



--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

AIに聞いたら推論や抽象的な思考を刺激する作品だが、読者を置いてけぼりにする可能性があると言われたので補足。


・主人公はプールに入りたいと望んでいる美玖らに協力していました。

・しかし先生に見つかり、先生と追いかけっこする展開です。

・物語は美玖らが捕まり旧校舎で清掃作業中のところから始まります

・主人公の傍には、妄想あるいは幽霊の真鍋香織がいます。

・主人公は真鍋を犠牲に旧校舎から逃れようとします

・真鍋は主人公にだけ聞える幻聴を聞かせたため、主人公は真鍋が先生に捕まったと錯覚します

・旧校舎からでたら先生に捕まります。

・学校に侵入した生徒の中に真鍋はおらず、先生は真鍋の存在に気づきませんでした。

・だから「真鍋って誰!?」と先生は言います。

・タイトル回収です。『僕は今、旧校舎で追われている』誰に!?真鍋に。清掃活動に従事させらるので、また旧校舎に戻ることになります。捕まった状態です。


つまり、分からない人は、○○ってことです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ