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中篇

 

 死神の仕事はだいたいこんな感じ


 1.神様が最後の願いを必要だと感じた者(願者かんじゃ)へ行く

 2.その者の最後の願いを聞く

 3.できる願いならば叶え、安らかに死へと導く


 と言った感じ

 しかし、願い事にはできないことがある

 人を殺す、命を延ばすなど普通の人間ができないものは叶えられない

 例えば、最後に何かを食べたい、誰かに会いたいなどなら叶えられる

 そして、死神は最低限の力。つまり現世で言う奇跡と言うものを使ってその願いを叶えていく


 そうそう、死神になって気が付いたんだけど、大きな鎌みたいなやつは持たないらしい

 今の死神は服装は自由で、昔みたいに死神だから黒い布を被ったみたいなやつを着るというルールは無いらしい

 だから神様もジャージなのかもしれない

 でも、一応、死神さん達は黒い服を着ている

 ちなみに僕も一応、上は黒いパーカーに下は黒いスポーツパンツ

 だって、これが動きやすいんだもん・・・


「レン、いるかい?」


 僕が暇つぶしにゲームをしていると神様の声がした


「なんでしょう?」

「これから君に初仕事。名前は『上谷かみや 奈央なお』女性、年齢は35歳、交通事故にあって今は意識不明。あと3日で死ぬ予定だ」

「・・・僕がその方の願いを聞けばいいんですよね?」

「そう。この子に関する資料は・・・ほら」


 気が付くとテーブルの上に2~3枚の紙が置いており、『上谷 奈央』に関する物だった


「それじゃ初仕事がんばってくれ」

「はい」


 僕は彼女の今いる所を頭の中で繰り返し読み上げる

 そうすることで移動ができる


 目を開けると目の前に大きな病院が現れる

 現地時刻は22時15分から16分に変わるところだ

 僕は残り6日と23時間59分までに願いを叶えなければならない

 さっそく彼女の願いを聞くために病院の中に入る。僕の姿は願者以外見えないのですんなりと入れた

 そして、今回の願者である『上谷 奈央』のいる病室まで行く


 上谷奈央は子供と買い物の帰りに飲酒運転の車に当たり、今の意識不明になった

 僕は彼女の頭に手を置き、彼女の中心部へと入る


「こんにちわ、上谷奈央さん」

「え?」


 広い何もない所に1人で立っていた女性に話しかける

 すると彼女は不思議そうな眼で僕の方を見てきた


「あ、あの・・・どちらさまで?」

「僕は死神のレンです。あなたの願いを叶えるために来ました」


 彼女は不思議そうな顔で僕を見てくる

 当然だ、いきなり自分の前に「死神です」みたいなこと言われても冗談だとしか思えない

 僕も同じような感じだったし


「上谷 奈央さんは交通事故で現在意識不明です」

「え?でも・・・」

「この世界はあなたの空想世界です。だから身体の痛みも無い。でも、実際のあなたは病院の集中治療室にいます」

「・・・・」

「・・・理解しがたいと思いますけど」

「・・・あの、私死ぬんですか?」

「あと・・・3日です」

「そ・・・ですか・・・」


 彼女はまだ本当のことだと思っていないのか、それともなんとなくわかっていたのか、分からないが「そっか、そっか」と何度も自分を納得させようとしていた


「・・・上谷奈央さん、何か最後に願い事はありますか?」

「・・・・」


 辛い・・・人の死を目の前にするのはこんなに辛いものなのだろうか?

 彼女は必死に自分に言い聞かせようとしていて、その姿を見るのが辛い

 でも、これは僕の仕事だと自分に言い聞かせて話を進めようとしたとき、彼女が質問をしてきた


「・・・あの、一つ聞いてもいいですか?」

「なんでしょう?」

つよし、私の横にいた男の子は無事だったんでしょうか?」

「えっと・・・はい。大丈夫です」

「そうですか・・・よかった・・・」


 毅とは資料では彼女の息子と書いてある

 彼女は息子を助けた際に車と衝突して、今の状態になる

 もし、彼女が息子を助けなければ、息子さんが僕の初仕事の相手になっていただろう


「あの・・・死神さん」

「なんでしょう?」

「願い事ってどんな願いも叶えてくれるんでしょうか?」

「願いにも叶えられないものもあります。例えば人を殺す、命を延ばす、余命より長く時間がいる、などは無理です」

「えっと・・・最後にもう一度弟に会いたいんです」

「わかりました。会うだけなら」

「いや、あの・・・その・・・会って話したいんです」

「えっと、それは自分から息子さんに会いに行くということですか?それとも息子さんがここに来て話すということですか?」

「できれば会いに行って話したいんですけど・・・」


 僕は少し考えながら僕にできることを考える

 後者の方なら力を使って弟さんをここに来るように促して、彼女を一時的に意識を取り戻せば良い

 でも前者の方は少しの間でも、彼女の体を歩けるまでにして、病院を出ないといけないことになる

 こればっかりは死神になりたての僕にはどうしようもできないことだ


「・・・無理、ですよね。すみません、忘れてください」


 彼女は乾いたような笑いで僕に笑いかけてくる

 その笑顔は何もかも諦めた笑顔だ

 もしかすると、この笑顔が今から自分は死んでいくと理解できたからできる顔なのかもしれない

 そして、僕はその笑顔を見るとどうしても彼女の願いを叶えたいと思える


「・・・後者の方なら可能です」

「でも、身体が傷だらけなんですよね?あまりそういうのは見せたくないので・・・」

「・・・・・・5分」

「え?」

「5分の間なら僕がなんとかしてみせます。弟さんと話す間だけは傷を隠します」

「・・・できるんですか?」

「はい、なんとかします」

「でも・・・」

「死神も一応神ですから、任せてください。絶対になんとかしますから・・・だから、最後に話したいことがあるなら話してあげてください。残される人はあなたの声を聞きたいと思っているから」


 僕がもし、残される方ならそう思う

 少しでもいいから話したい

 それが些細なことでも、心の支えにはなると思うから


 僕は彼女に2日後に弟さんを連れてくると言って、彼女の空想の世界から出る

 そして、現世に戻ると人工呼吸器など様々な機械が付いている彼女の体があった

 僕はその身体を見て、自分にできるだけのことをやろうと心に誓って、彼女の弟のいるところまで飛んだ



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