前篇
3話完結予定です。
僕は「鷹見 蓮」
どこにでもいる普通の高校生で優秀でもなく馬鹿というわけでもない本当に普通の高校生だった
今朝までは……………
「自殺」
所謂、ビルから飛び降りるとか駅のホームに入ってくる電車に飛び込むとか…色々な方法がある
僕自身あまりそういうことを考えたこと無かったけど自殺する人は年間3万人以上いるらしい
つまり1日平均82人ぐらい自殺していて、1時間で平均3人だ
その3人の中でビルから飛び降り自殺をする人は何%だろう?
たぶんあり得ないぐらいの確率なんだろう…
そのあり得ない確率の中で更にあり得ない確率、つまり天文学的確率で僕はビルから飛び降りる人に当たって死んでしまった
「ん…んん?」
目を開けると真っ白い部屋の中にいた
僕は知らない所に戸惑いながらキョロキョロして今の状況を確認する
キョロキョロと見回していると部屋の端に動くものがあるのに気が付いた
それは僕の方をじーっと見てくる
「………ぬいぐるみ?」
僕の方をじーっと見てくるぬいぐるみはパンダみたいな熊みたいな微妙なキャラクターのぬいぐるみでお世辞でも可愛いとは言えない
「違う。神様だ」
「うわっ!?ぬいぐるみが喋った!」
「だから、ぬいぐるみじゃない。神様だ」
自分は神様だとをいうぬいぐるみは胸を張りながら訴えてきた
僕には中途半端なパンダのぬいぐるみにしか見えないけど…
「…………そのパン…神様はどうしてここに?」
「謝るために君に来てもらった。すまなかった。殺してしまって」
ぬいぐるみはそういうと頭を下げてくる
その絵はシュールで何故か笑えてくる
僕は我慢しようとしたがどうしても肩が揺れてしまう
「なんだ、自分が死んだのに笑うなんて…君は死にたかったのかい?」
「そんな訳ないじゃないですか。ちょっと面白い冗談だなぁと思っただけですよ」
「冗談では無いぞ?君が飛び降りた人に当たる前に宝石を拾っただろう?」
神様は俺が起きたことを当てていく
実際に死ぬ前のことを思い出してみると、何か光っているものが落ちていて、お金かと思い拾ってみると変な宝石みたいなものだった
そして、立ち上がろうとしたら上から人が落ちてきて僕に当たった
「つい落としてしまったのを君が気づき、あそこで止まってしまった。そしたら君が死んでしまった。本当は君はあと62年生きられたんだが…。そこでだ、君を死なせてしまった責任もあるので私は君の願いを叶えようと思う。
なんでも良いぞ。天才に生まれ変わることも、お金持ちに生まれ変わることもできる
ただ、今の君の鷹見 蓮としてはもう戻れない。そんなことをすれば大変なことが起こるからな」
神様は一人で淡々と話していくが僕の頭はそれについていかない
僕が死んだのは神様のミス?
本当はあと62年生きられた?
そんなことが頭の中をグルグルと駆け回っている感じだ
「まぁそうなるだろうな…。まぁじっくり考えてから返事をしてくれたらいい。
ここは君の精神空間、空想の世界だからご飯が欲しいと思えば出てくる。
まぁ死んでいるから腹は減らないが…
あと、君が私の事を呼びたいなら来て欲しいと思ってくれれば私がここに来る。
それでは、じっくり考えてくれ」
神様はそういうとパッと消えた
そして、白い部屋の中には僕しかいない
僕はさっき神様が言っていたことを整理しながら理解していく
「つまり…僕は神様のミスで死んで、そのミスを補うために願いを叶えてくれる…と言うことなのかな?」
僕以外誰もいない部屋の中に聞いても誰も答えてくれない
…と思っていたのにさっきの神様の声とは別の声が聞こえてきた
「そのとおりですよ。蓮さん」
僕はビックリして周りを確かめて見るが声を発するものなんて無い
「うふふ、私の姿が見たいと思えばそこに行けますので、思ってください」
声からするとたぶんものすごい綺麗な人なんだろうなぁと思いながら、声の主に会いたいと願うと目の前が光った
「あらあら、蓮さんは綺麗な人だと思ってくれたみたいですけど・・・ごめんなさいね」
声の方を見てみるとまたぬいぐるみで、さっきの神さまと違って羽の生えた天使?みたいなぬいぐるみだ
「・・・あの、一つ聞いていいですか?」
「なんでしょう?」
「なんでここに出てくる人はぬいぐるみなんでしょう?」
「それは姿を見られない為ですね。一応、神の使いなので」
「そ、そうですか・・・」
納得いくようないかないような・・・微妙な気持ちだけど、そもそもここにいること自体がおかしいから無理やり納得させるしかない
「それで、さっきの質問なんですけど、蓮さんの言った通りですね」
「それじゃ現世の僕はもういないんですか?」
「はい、火葬されて今はお墓の中ですよ」
天使のぬいぐるみは表情こそ無いが、ニコッと笑っている感じの声で言ってくる
「だから、現世に戻ることはもうできません」
「鷹見 蓮としては戻れないのは分かりましたけど、他の方法で現世に戻るという願いはできるんですか?」
「ん~・・・それはどうでしょうね?調べてみますけど、現世に何か思い残しでもあるんですか?」
「まぁ、急に死んだんで思い残すことはたくさんあるんですけど・・・。ちょっと僕のいない世界ってどんなのかなぁって思って」
「興味ありますか?」
「そりゃありますよ。親も悲しんでるだろうし」
息子が急にいなくなったなんてことになったら、うちの親は大丈夫なんだろうか?
家事とか色々できない親だったから今頃、家が汚くなってたりしたり・・・って死んだ僕がそんなことを思っても仕方ないんだけど気になるものはしょうがない
「ん~・・・それじゃちょっとだけ見てみますか?私の力だと見るだけしかできないですけど」
「いいんですか?」
「はい。それじゃ目を瞑ってくださいね・・・いきますよ」
天使のぬいぐるみは僕の頭に手を置く
僕は言われた通り、目を閉じると家が見えてきた
外から見た感じは・・・あまり変わってない
どんどん中に入っていくと、やっぱり思った通りでリビングは散らかっていて、洗濯物は溜まっている
母さんは髪型がくしゃくしゃで、父さんは目の下にクマができていて、僕の仏壇の前に座っていた
そして、仏壇の前で何か語っている感じだけど、何を言っているか分からない
僕は口の形を見るために回り込もうと意識すると、急に頭に痛みを感じた
すると、あっという間に家の中からさっきまでいた白い部屋に戻される
「ふぅ・・・・ごめんなさい。私の力ではここまでが限界です」
目の前にぬいぐるみが汗を拭くように額を拭う
そこに汗なんてあるわけないのに
「どうでしたか?ご両親のようすは」
「予想通りでしたね・・・。あ~・・・願い事って自分以外のことでもいいですかね?」
「え?ん~・・・内容によります。どんな願い事ですか?」
「僕の親から僕の記憶を消すみたいなことです」
「ん~、それは残念ながら無理ですね。記憶操作はいくら神でもできないです」
「そうですか・・・なんでもできるもんでもないんですね、神様って」
「そうですね、現世で思っている神さまとはちょっと違う感じですね」
「どんな願い事が叶うんでしょう?」
「そうですねぇ・・・さっきの神様が言ったことと、あとは・・・そうですね~・・・例えば、動物に生まれ変わることもできますし・・・聞いてみないとわかりませんが、死神か天使になることも可能だと思いますよ?」
「死神・・・ですか?」
死神って人の命を奪う神だよね?
そんなのになりたいと思う人はいるんだろうか・・・
「残念ながら、死神は人の命を奪う神ではありませんよ?」
「え?・・・あ、そっか。僕が思ったことわかるんでしたっけ?」
「はい。ちなみに死神は死ぬ直前の方の最後の願いを聞いて、それを叶えるという役目ですね」
「へぇ、それじゃ天使って言うのは?」
「ん~、天使は・・・そうですね~簡単に説明するなら輪廻転生って言葉はご存知ですか?」
「確か、何度も生まれ変わるってやつですよね?」
「はい、その輪廻転生を行う際のお手伝いですね」
「それじゃあなたは天使さんなんですか?」
「はい」
「へぇ、やってみたいかも・・・」
「あ、でも今、天使の数は足りてるのでなるのは無理かもしれないですね」
「そうですか・・・それじゃ死神は・・・?」
「ん~・・・ちょっと神様に聞いてきますね」
天使のぬいぐるみはそう言うとパッと目の前から消える
僕はどうして死神になりたいと思ったのか、よく分からない
でも、このまま生まれ変わるのはもったいない感じがした
「君は死神になりたいのかい?」
声がしたと思うと最初に現れた中途半端はパンダのぬいぐるみが立っていた
それにしても、なんでパンダなんだろう?
「・・・で?君は死神になりたいのかい?」
「はい」
「理由は?」
「よく分からないですけど・・・なんとなくです」
「・・・まぁいいだろう。ちょうど1人抜けた所だし・・・それじゃ確認する。鷹見 蓮、君は本当に死神でいいのかい?」
「はい、お願いします」
「わかった」
神様はそう言うとパンダのぬいぐるみから光を放ち、どんどん大きくなっていく
そして、人の形になっていく
「・・・・驚いたかい?これが私の本当の姿だよ」
「・・・・・」
「まぁ無理もないか・・・驚くのは」
これは誰だって驚くだろう・・・
だって、神様はかなりのイケメン。ここまでは予想はついたけど・・・上下ジャージは予想外だった・・・・
「とりあえず、今から鷹見 蓮は死神に転生させる」
神様は僕の頭に手を置くと、身体中に言葉にできそうにない物が中に入りこんでいく感じだ
それは気持ち悪いと言う感じでは無く、どんどん自分では無くなっていく感じ
「よし、終了だ。今から君はレンだ。鷹見では無い。わかったかい?」
「はい。わかりました」
「やることはだいたい頭の中に入れておいた。とりあえず・・・仕事が来るまでここで待機してくれたらいい。それでは私は自分の仕事があるんで行くよ」
神様はパッと消える
僕は部屋の中を見回して、まずここを自分の住みやすいように変えることを実行した