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連鎖の遭遇 後編

 また更に七日の時が過ぎた。再びこの大森林へやってきた。


 今までは快晴の中、愛車を飛ばしてきたが辺りは夕闇に覆われつつある。先日は寝るのが遅くなり寝坊し、ここまで来るのに時間がかかったからだ。

 とはいえ、奥地へと長距離で飛ばすのも慣れてきた頃合いだ。こんな車でも悪路は走れるようにメンテをした甲斐があるというもの。


 さて、今日もいつもの仕事を始めることにする。既視感がある森林の中のキノコの群生地の近くに出るとそこに車を止めた。たった七日間でこれだけの数のマナタケが復活する。その驚異的な生命力の高さの甲斐もあってこうして車を走らせ、狩りが出来るのだ。

 辺りを見ると、確かにキノコが沢山生えている群生地を確認出来た。もはや森の中にカネが散らばっているようなものである。


 帰りが遅くなる時はどこかで焚き火を炊いてキャンプをすればいい。

 車を降りたヒースは懐から片手で握れる程度のそれを取り出す。空から降り注ぐ夕焼けの光で一層緋色に輝く石。薪に投げてやればたちまち火がつく。


 これは炎のチカラが込められた魔石だ。魔法の心得がない人間にも扱える代物であり、投げれば効力を発揮する。当然、敵に投げて使うことも可能だ。


 すっかり慣れた動作でいつも通りキノコを収穫していると背後の茂みをかき分ける音に自然とその方向を振り向いた。

「またオマエか」


 右手に剣、左手には丸くて赤い盾。そして目を引くのが尻の下まで余裕で伸びる長くて美しい金髪。その言葉は間違いない。それまでと同じ個体だ。そう、アレット。


「今日も森の守り神ごっこか?」

「ごっこだと……? バカにするな! ニンゲン、この場所に来るのもいい加減にしろ! 殺すぞ!」

「自分のテリトリーに入ってくる奴が気に入らないという言い草だな」


 充分に収穫したキノコの入った布袋を背後に投げ置くと、背中にある剣に右手を伸ばした時──!


 手首にしてあった防具が腰にしていたあるものを弾いた。それはヒースの真ん前に放物線を描き、草の上に一度叩きつけられると更に転がり、あろうことか目の前にいる女騎士のモンスターの足元に落下した。


「これは……チカラを感じるぞ」

 アレットは不思議そうに緋色にある石を手にとった。うんと頷き、その石を胸元に当てる。彼女の手に抱かれた石は朱色の光を放ち、消えていく。


「な、何が起きた……?」

 眩い魔石の光が消え、女騎士は開眼する。するとその全身が熱く燃える。


「礼を言うぞ。私は新たな力を手にいれた! たぁっ!」

 その剣を振り下ろすと火柱が立つ。それは鞭の形となり襲いかかる。降りかかる火の粉を稲妻の剣で振り払う。

「強い……! まさか、魔石を取り込んでそれをモノにしたっていうのか……?」


 モンスターも生き物だ。環境に適応したり外的要因によって進化する以外にも、成長もする。今の彼女の姿はまさにその象徴だ。それまで剣を振るうしか脳のなかったはずの女騎士が、炎の技を使えるように成長したのだ。


「この炎で、森を汚す者を焼き払わん!」

 彼女を中心に炎が渦をまく。これ以上刺激してはこの大森林全体が最悪枯れ木だけの荒廃した大地となる。そうなればもうキノコ狩りどころではない。集めたマナタケを入れた布袋を手に取り、それまでと同様にその場を後にした。

 モンスターだからなのか、それとも才能があるのかは知らないが、チカラは暴走することもなく彼女の周りを取り巻いている。怒らせれば彼女に挑む前に焼かれる。


 目的は果たした。退却だ。焚き火でキャンプしようと思ったが魔石はさっきので切らしてしまった。早々に乗り込んだ車のハンドルを握り、森林を立ち去った。




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