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ショートショート3月~

説教

作者: たかさば

誰かを叱る夢を見ている。


自分が発したとは思えないような言葉で、誰かを叱っている。

自分が知らぬ難しい言葉で、誰かを叱っている。


私は、誰を叱っているのだろう?


叱る私の中にあるのは、悲しみの感情。


なぜ、わかってくれないのか。

なぜ、聞いてくれないのか。

なぜ、逃げ出すのか。


叱る私の中にあるのは、喜びの感情。


良かった、自分自身を持っていて。

良かった、言葉を出す力があって。

良かった、行動する気概があって。


叱る私の中にあるのは、願いの感情。


この人が、迷いませんように。

この人が、悲しみに包まれませんように。

この人が、進むことができますように。


誰かを、叱る、夢を見ている。


私が叱っているのは、誰なんだろう。

私が叱っているのは、なぜなんだろう。


私に叱られた誰かは、私に叱られたことを受け入れない。


私を拒否して、どこかに行ってしまった。

私を置いて、どこかに行ってしまった。


私は、誰もいなくなった場所に、一人、残された。


・・・私が、叱ったところで。


選ぶのは、誰か自身なのだ。

生きていくのは、誰か自身なのだ。


誰かが、私の言葉を受け取ることなど、ないのだな。


・・・ただ漠然と、納得、した。


誰かを叱る、夢を見た。


私が叱っていた誰かは、もういない。


私は、誰かを叱る資格など、持ち合わせてはいないのだな。

私は、誰かを叱る技量など、持ち合わせてはいないのだな。

私は、誰かを叱る余裕など、持ち合わせていないのだな。


私は、口を噤む事を決め、目を開けようと。


・・・夢が微睡み、また夢に落ちてゆく。


誰かを叱る、夢を見る。

誰かを叱る、夢ばかり見る。

誰かを叱る、夢しか、見えない。


伝わらないというのに、いつまでも同じことを説教する自分がいる。

受け入れてもらえないというのに、いつまでも同じことを伝える自分がいる。


誰かを叱る、夢を見る。

誰かを叱る、夢ばかり見る。

誰かを叱る、夢しか、見えない。


伝えたいのは、何なのだろう。


誰かを叱る、夢を見る。

誰かを叱る、夢ばかり見る。

誰かを叱る、夢しか、見えない。


なぜ私は、こんなに叱っているんだろう。


誰かを叱る、夢を見る。

誰かを叱る、夢ばかり見る。

誰かを叱る、夢しか、見えない。


叱ったところで。


私の言葉など、聞いてくれるはずがないというのに。

私の言葉など、届くはすがないというのに。


どうせ、私の、言葉なんて。


「だから、ダメなの。」


声が、聞こえた。


「ぜんぜん、わかってない。」


声が、聞こえてきた。


私を叱る、声が聞こえる。

私を叱る、言葉が聞こえる。


私を叱る、声が届く。

私に、聞きたくない言葉が、届く。


私を叱る、言葉がのしかかる。

私を叱る、力に押しつぶされる。


私は、叱られたくないと思った。

私は、叱られたくないから、逃げ出そうと思った。

私は、叱られたくないと思ったから、逃げ出すことにした。


私を叱る誰かから、逃げだそうと、決めた。


「どうして逃げるの。」

「逃げ出しても解決しない。」

「逃げてもまた同じことが起きるだけ。」


私を叱る言葉が、私を追いかけてくる。


「卑怯者。」

「弱虫。」

「勉強不足。」


私を否定する言葉が、私を追い回す。


「ねえ、何考えてる?」

「ねえ、それでいいと思ってるわけ?」

「ねえ、いいかげんにしたらどうなの!!」


私を責める言葉が、私を追い込む。


「―――。」

「―――?」

「―――!」


私には理解できない言葉が、私を囲む。


ここから、逃げ出さなければ。

ここから、逃げ出さなければ、いけない。


ここにいては、ダメだ。

ここにいては、ダメになってしまう。


私を叱る誰かから、逃げ出した。


逃げる。

逃げる…。

逃げる……。


私は、何から、逃げているのだろう。

私は、何から逃げ出そうとしているのだろう。


私は、何から逃げ出せなくて、つぶれそうになっているのだろう?


懸命に、逃げる、最中。


私は、叱る誰かの、顔を見た。


叱る誰かは、私だった。

叱る誰かは、私だったのだ。


・・・私は、私から逃げ出したのだ。


私の叱った誰かは、私だった。

私の叱った誰かは、私だったのだ。



・・・ああ、なんだ。



私の吐く言葉は、私自身が否定していたのか。


私の言葉を、私は受け入れることができないのか。


私は、自分の言葉さえ・・・聞こうとは、しないのか。



「なるほど、ね・・・。」



全てが、腑に落ちた私は、ようやく…目を、覚ますことが、出来た。


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― 新着の感想 ―
[一言] 自分自身を叱りたくなるとき、はい。ありますよねー。 聞く耳も持ちたくないですがねー。ねー。
[良い点] その辺にありまくる日常風景ですね(^.^) [気になる点] とってもほのぼのしました(≧∀≦) [一言] いえーい(o^^o)
[一言] 自分でも納得してない言葉が他人に届くわけがないですね。
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