表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ポインセチア・クリスマス

作者: 月見里 桜

『ポインセチア・クリスマス』

 重たい雲が垂れこめていた。今にも雪が降りそうだった。賑やかな遊園地の入口で一人の青年が待っていた。ダウンにジーンズを身に着けている。

 「ごめん、待った?」

 左側から長髪の女性が駆けてくる。青年畑野大輝は優しく微笑み、女性川合ともよに手を振る。

 「いや、今来たところだよ」

 ミニスカートに白いポンチョを着たともよ。大輝は内心で今日も可愛いなと思った。

 「行こう」

 ともよが大輝の手を握り、遊園地に入っていく。

 「メリーゴーランドに乗りたいな。丁度、空いてるしね」

 丸く木馬や馬車の乗り物が乗ったメリーゴーランドに向かう。二人はメリーゴーランドの馬車に座り、ブザーの音と共に回りだす。ともよは大はしゃぎで手を上にあげる。子供だなぁ。大輝は今年で三十五歳、ともよは二十七歳。八つ離れていればともよは妹のように感じるだろう。そっと身を寄せて優しく微笑み楽しいなぁと大輝は考えた。

 夜になった。ともよは大輝の手を引いて誰も居なくなった劇舞台に向かった。舞台に椅子があるガランとした劇舞台だった。

 「どうした?ともよ。いきなりこんな所に来て」

 「大輝、結婚しない」

 「はっ?」

 大輝は目を見開いて呆然とする。ともよは握っていた手を離し舞台の上に上がる。スカートから足が覗くことも気にせずに、膝を曲げて、紙袋からポインセチアを出して大輝に向けて。

 「畑野大輝さん!」

 「はい」

 大輝は背筋を伸ばして返事をする。ともよはキリリッと真剣な目にきゅっと結んだ唇、王子のように凛として言う。

 「この花を受け取ってください」

 赤く色づいた円錐形の葉っぱが集まったポインセチア。大輝は葉に銀の指輪が付けられていることに気づく。本気だと感じた。大輝はポインセチアを受け取って微笑む。

 「僕で良ければ結婚してください」

 ともよは目を大きく見開いて喜ぶ。大輝はポインセチアから指輪を取って指に付ける。きらりと輝く。

 「大輝!」

 ともよは舞台から大輝のもとに飛び降りて抱き着く。

 「一生幸せにするわ」

 ともよは大声で言う。

 「それ、僕のセリフだ」

 色々残念な大輝。これは僕が先にした方がいいよな。男として立つ瀬がない。

 「ともよ」

 目と目が合う。愛しいと告げている。恋しいと言っている。好きだと心が騒ぐ。空から白い雪が降って来る。イルミネーションに光が灯り辺りが淡く光る。

 「綺麗だ…」

 「大輝…」

 二人の絡まる視線。体を寄せ合う。そして、深く、深く口づける。幸せな一時。そして、長く、長く口づける。

 「ぷはぁ」

 「大輝、大好き」

 口づけを終えて見つめ合い、微笑む。

 「愛しています」

 「僕も」

 クリスマス。イヴの今日。二人の恋人は抱き合って愛を確かめ合う。

 メリー・クリスマス。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ