不信と犬猿の仲
「最後に凜どうぞ」
悠に促されて、話を切り出す。
「初めまして、名前は凜といいます。18歳です、多分魔力も無いので戦えないです。助けてもらって感謝しています。できることはなんでもするのでこの家にいさせてください、お願いします」
頭を下げる。
「凜、顔を上げて」
顔を上げるとキラキラとエフェクトのかかった悠の笑顔が目に入る。
「記憶も無いんじゃ、行く所もないでしょう?凜さえ良ければ一緒に住まない?その代わりと言ってはなんだけど、無理ない程度に家事を手伝って欲しいんだけど、ダメかな?」
願っても無い好条件、呑む以外に道はない。
「はい、もちろんです、よろしくお願いします!」
ああ、なんと言うことだろう、こんなにトントン拍子で悠と一緒に住めるなんて、夢みたいだ・・・
「反対ですの」
案の定の闇の横槍
相変わらず凜にだけ睨みつけるような視線を向ける。
「よく聞きやがれですの凜、この辺り一帯はこの家を中心に24時間、常に私の結界魔法が広範囲に貼られていますの。モンスターの位置や、人の存在、またそれらが敵意を持っているかどうかなど詳細にわかるようになっていますの。昨日凜が狼に殺されかけた場所もこの結界の範囲内でしたの」
場の空気がピリつく、灯もこちらを見つめているようだ。悠はと言えば心配そうな顔でこちらを見つめている。
「瞬間移動は、『バハムート』という天災モンスターの素材を使った魔道具でしか行うことができないし、当然魔道具を使えば魔力反応で私が気付きますの。にも関わらず、魔力反応は無かったのに凜は結界内に急に現れやがったんですの」
闇は指をパチンと鳴らす、空中に黒く燃ゆる小さな火の玉が生まれた。
「答えなさい凜。魔力反応0のあなたが、どうやってあの場に道具も使わず現れたんですの?正直なことだけ言いやがれですの、嘘ついたら殺しますの」
「ちょっと闇、怖がらせすぎだよ、凜に敵意は感じないって言ってたの闇でしょ」
「これは悠を守るための質問なの、悠が何と言おうと引く気は無いの」
先程と違い、悠の言葉にたじろぐ事なく凜を見据える闇、同時に右側から痺れる気配を感じる。灯もこの問いかけについて大いに興味があるらしい。
ハーデースの話では
『前の転生者と仲の良かった人の所に転生させるから彼から色々聞くと良い、住む場所も何とかしてくれるだろう』
とのことだった。
結局今まで悠本人に案内役か?などと、確認を取ることが出来なかったが、住む場所を提供してくれたのが悠なのだから、この言葉を信じるなら、悠が前の転生者と知り合いと言うことになる。ならば色々教えてもらえるはずであり、転生したことは別に隠す必要はないはずだ。
「多分、転生したんだと思う。転生前にハーデースって人、というか神様から、転生した後は悠に色々聞くと良いと言われました」
悠が困った顔をする。
「悠、あの変態から何か聞いてますの?」
「私、ハデスさんから何も聞いてないよ」
闇の手元からあの黒い火の玉が消えている、問い詰められてないと言うことは今の答え方でセーフだったようだ。二人の反応を見るにハーデースはこの世界にいるのだろうか?
「灯、あの変態から何か言われてますの?」
「師匠を変態呼ばわりするな、訂正しろ」
闇と灯の目線が交差する、火花が舞ったかに見えた。
「変態と言って何が悪いんですの?」
「師匠は、この国の守護神だ。お前みたいな人とろくに会話もできないお子様とは違う」
神?やはり、ハーデースのことを指しているのだろうか
「誰がお子様ですの!」
「そうやってすぐ怒る、まさにお子様って感じだな」
「お前が喧嘩売ってくるからですの」
「はぁ?喧嘩売ってきたのはそっちだろ!」
絵に描いたような喧嘩が始まる。
灯の言い分は最もだ、喧嘩を売ったのは明らかに闇だろう。ただ、先刻ハーデースに対して内心変態と思っていたので、闇を責めきれない自分も確かにあった。