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連鎖〜実力  作者: 崋山楽 
水水晶
7/10

第七話 会話

お話進みません…


 山の奥、普通の人間には見つけられない小屋の中、一人の老人が居た。

 鬼島だ。

 

コンコンコン…

「開いとるよ」

 鬼島が寛いでいるところに軽いノック音が聞こえた。

「弁当箱返しに来た」

 スッと室内に入ってきたのは、卓也だ。

「流しの横にそのまま置いといとくれ」

「ああ。ありがとう」

「何がじゃ?」

「弁当とかおりの気分転換」

 卓也は静かに鬼島の向かい側に座った。

「いいのか?行かなくて?」

「きっとがむしゃらにやってるだろうけど…一人の方がいい時がある」

「そうか…茶でも飲むか?」

「…お願いします」

 鬼島は脇に置いてある茶道具で卓也にお茶を入れた。

「ありがとうございます」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「…ところで卓也」

「はい」

「かおりはどうじゃ?」

「『水水晶』はかなり梃子摺っていますが、どうにかなるでしょう」

「しかし、この前つれてきた…あ〜、イツキ、そう樹じゃ」

「樹が何か?」

「あの人間には驚かされた…何せ弁当を持っていく頃のにはもう出来ていたからな…」

「樹は元々が『違う』から…でも、その『違い』も付き合っていると楽しい」

「そうか。お前が笑っていられるならそれでいい」

 二人は微笑みながらお茶をすすった。

「おいしい…」

「そうじゃろ。とっておきじゃ」


「卓也。お前どうするんじゃ?」

「何がですか?」

 しばらく静かでのんびりすごしていると、鬼島が静けさを破った。

「かおりのことじゃ」

「かおりが何か?」

「…卓也…ワシはこの『お山』から出ることはほとんど無い…しかし、色々と情報は入ってくる…」

「…そうですか…」

 穏やかだった卓也の表情に影が差した。

「お前は『仮親』の過ぎんのじゃぞ…それなのに」

「全て俺の責任で済むんなら…と、思っているんですが」

「お前はかおり宛の『組織』『科学者』の呼び出しを尽く無視してるそうじゃな」

「『組織』の呼び出しは最低限行ってますよ」

「『組織』だけはな…『科学者』の方は行ったことが無いそうじゃな」

「そこまで知ってるんですか。すごいですね」

 卓也の不自然なまでに明るい声が響いた。

「『科学者』がお前が『仮親』として不適切だと『組織』に言われたら、かおりはお前の元を去らねばならない…」

「その前に最後通告が来ますよ。そのときに考えます」

「それでよいのか?」

「俺以外にかおりの『親』…いや、『家族』に向いてる人間なんて居ません」

「『家族』とは向き不向きではないぞ」

 鬼島の声は沈んでいた。

「まあ。そうなんでしょうけどね…。俺がかおりを大切に思うことに変わりは無い。それでいいんじゃないですか?」

「卓也。ワシはお前が『お山』に来たときからの付き合いじゃが、お前は変わっているな」

「どこがですか?」

「やれやれ。自覚なしか…」

「俺より周りがキャラ濃いもんで…自分では分からないんですよ」

「お前は情が薄い。気に入っているかおりや樹は別にして、その他の人間は何時関係が切れていいと思っている。…ワシを含めてな」

「そんなことは…」

「無いとは言い切れんじゃろ?」

「・・・・・・」

 卓也は少し気まずそうに視線を逸らした。

「前々から何か『におう』と思っておったが、確信したのは父親の事があったときじゃ」

「師匠が何か?」

「それじゃよ。それ」

「どれ?」

「ワシは『父親』のことを言ったのに『師匠』と…」

「もう親子の縁は切れましたから」

 卓也はお茶をすすりつつ答えた。

「じゃがお前の父親は今でこそ完全な…とは言えないが、『師匠』と『弟子』の関係になったがお前は決まったその日、いや、その瞬間から『弟子』としての立場となったと聞く…ワシの知るがぎりそんな人間は他にない」

 鬼島は一気にそこまで言うと自分のお茶を継ぎ足した。

 卓也もそんな鬼島を見て口を閉ざした。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


「…お前は不憫な子じゃな」

「哀れまれることは何も」

「分かってはいるのじゃがな…」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「じゃぁ。そろそろ行きます。かおりもそろそろいい頃でしょう」

 卓也は妙な空気になってしまったからか、腰を上げた。

「…そうか…また来るのじゃぞ」

「はい」

 そう言うと卓也は早足で出て行った。


「お前にもっと大切な人間が出来ることを、祈っておるぞ…心から…」

 誰も居なくなった空間に鬼島はポツリと呟いた。





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