93 騎士団長の息子と婚約者の夜
最後の夜
『エクス、起きてますか?』
卒業式と卒業パーティーが終わり、色々と準備をしてから一息ついていると、アリスから呼び掛けられる。常にアリスには思念を向けているのでこうして24時間いつでも対応できるわけだが、アリスからの呼び掛けはあまりないので少しだけ驚いてから答える。
『起きてるよ。どうしたの?』
『あ、あの・・・実は眠れなくて』
眠れないか・・・なんとなく理由を察したので俺は聞いた。
『アリス、今からそっちに行ってもいい?』
『ふぇ?来てくれるのですか?』
『ああ、それで良ければアリスが寝るまで側にいたいんだけど・・・どうかな?』
『嬉しいですけど・・・今からじゃエクスが大変じゃないですか?』
『大丈夫だよ。一瞬で着くから』
『じゃあ・・・お願いします』
その言葉に俺はすぐに魔法を使う。使う魔法は瞬間移動の魔法。これは自分の認識できる範囲と、知ってる場所にしか行けないが、アリスの部屋なら何度か見てるので余裕だ。一瞬で視界が切り替わり、次にはアリスの部屋に着いていた。そっと、アリスを見れば新鮮なことに寝間着姿のアリスがベッドに座っていたので、俺は微笑んで言った。
「お待たせ、アリス」
「エクス、今のは魔法ですか?」
「うん、まあね」
「凄いですね・・・」
驚きつつも納得しているアリス。やはりこういう包容力というのかがあるアリスくらいしか俺の嫁は務まらないんだろうなと思う。
「さてと・・・」
俺はゆっくりとアリスに近づくと隣に座ってからそっと抱き寄せて言った。
「眠れないっていうのは不安があるからなんだよね?」
「・・・エクスは私のことなんでも知ってるんですね」
「まあね」
所謂マリッジブルーというやつだろう。ナイーブな時期なので気をつけていたが、アリスも普通の女の子だ。やはり不安なのだろう。
「私、明日エクスのお嫁さんになります」
「うん、そうだね」
「ずっと憧れていたから凄く嬉しいのに、なんだか少し怖くもなってきちゃったんです」
「うん」
「私なんかが本当にエクスのお嫁さんになっていいのかなって凄く不安になって、それで思わずエクスと話したくなっちゃって・・・迷惑ですよね」
本当この子は健気すぎる。自分を過小評価しすぎてる上に俺のことを考えていてくれている。そんなアリスのことが俺は大好きすぎて思わず微笑んで言った。
「ねえ、アリス。俺はねアリスのことが好きなんだ。いつも一緒懸命でどんなことでも頑張るアリスが、そうやって一人でなんでも背負っちゃうアリスのことが、アリスの全てが大好きなんだ」
「エクス・・・」
「だからね、俺はアリスのことを守るって誓ったんだ。何があってもね。ねえ、アリスは俺のことどう思ってるか聞いてもいいかな?」
そう聞くとアリスは少しだけ恥ずかしそうにしながらも答えてくれた。
「もちろん、好きですけど・・・」
「ならさ、もっと俺には甘えて欲しいな。俺のことを気遣ってくれるのは凄く嬉しいけど、俺にだけは素直な気持ちをぶつけて欲しいんだ。それがどんな感情でも俺はアリスのことを絶対に嫌いになったりしない」
そうして微笑んで言うとアリスは俺を見て頬を赤く染めてぽーっとしだした。もしかしてこれはトキメいてくれてたりするのかな?だとしたら可愛いすぎる!どうしてアリスはこんなに可愛いのだろうか。明日と言わずに今すぐお持ち帰りしたいくらいだけど、なんとか抑えてしばらくその様子を観察する。
しばらく俺に見惚れていたアリスは少ししてから恥ずかしそうに視線を反らしたので俺は立ち上がってから俯くアリスをお姫様抱っこする。
「きゃっ・・・え、エクス?」
「じっとしてて」
囁くようにそう言うとぎゅっと目を瞑るアリス。可愛すぎて理性が溶けそうになるがなんとか抑えて俺はベッドにアリスを寝かせると震えるアリスに優しく言った。
「今日は添い寝だけだけど・・・明日はアリスのことを存分に愛でるから、覚悟しててね」
「・・・はぃ」
少しだけ残念そうにしながらほっとするアリス。そんなアリスの手を握ってから俺は微笑んで言った。
「やっぱりアリスの手は綺麗だね」
「そ、そうですか?」
「うん。アリスはやっぱり凄くきれいだよ」
可愛くて綺麗とか反則すぎる。アリスはやはり最高の存在すぎると思いながら俺はアリスに笑って言った。
「少しは不安も和らぐかな?」
「・・・エクスはズルいです」
「嫌だった?」
「いえ・・・凄く嬉しいです。ありがとうございますエクス」
そうして俺はアリスが寝つくまで側にいるのだった。明日が本番なので今日は何もするつもりはなかったがキスくらいなら許されるよね?だってアリスったら可愛すぎるんだもん!なんでこんなに可愛くのかわからないくらいに可愛い。明日の結婚式が凄く楽しみになると同時に俺は残りわずかになった婚約者という関係を素直に楽しむことにした。明日の結婚式が済めばアリスとは晴れて夫婦になれる。少しだけ婚約者という関係にも愛着はあるが、アリスとずっと一緒にいられればそれでいい。そんな夜を過ごしたのだった。




