84 騎士団長の息子はお祖父様と戦う
プチバトル。
「なるほどのう・・・すると、エクス、お前の中に今あやつの力があるのじゃな?」
お祖父様に起こったことをありのまま話すとすぐに理解したように頷くお祖父様。少しだけそのことに驚きつつ俺は首を縦にふって言った。
「ええ、その通りです。あの女・・・『プレデター』が俺の身体を乗っ取ろうとしたのを防いだらそうなりました」
「ふむ・・・して、身体に異変はないのじゃな?」
「ええ、問題ありません」
魔法を一気に手に入れたとはいえ、特に変化はない。そもそもこの奪う力はどうやら魔法を更に強力に操れる上に、きちんとコントロールできるという特典もあるようなので一切問題はない。異物なので少しだけ心配がなかったと言えば嘘になるが、コツさえわかればなんとでもなるものだ。
「ちなみに聞くが『プレデター』は強かったか?」
「そうですね・・・普通に考えれば私がこれまで相手をした中では最強クラスの化け物ですね。そして、これまでの誰よりも心が強かったと言えなくないですね」
あの女を狂人の一言で片付けることは俺には出来そうになかった。あれだけ自分と同種の人間には会ったことがなかったし、これから先も会う予定はないからだ。そして同時にあの女をここまで駆り立てた『プロメテウス』に少なからず興味も出てきた。まあ、ついで程度のものだけどね。正直、あれだけの魔法をストックしていたほどに警戒する相手。父上やお祖父様のような化け物でも怖れる存在なので俺の手におえるかわからないが、まあ、なるようになるしかないだろう。結局俺はアリスを守ることだけを考えればいいのだ。
「私からは以上ですが、お祖父様は何かありますか?」
「そうじゃの・・・どれ、少しだけ試すとするかのう」
そう言ってから、それは一瞬だった。油断なんてしていなかったが、俺はお祖父様が俺の首筋に刃を薄く突きつけるまでの反応がほんの一瞬遅れてしまった。なんとか防いだとはいえ、この力にこの速さ、そして薄く斬られた首筋から少しだけ血が滲むのを見てからお祖父様は本気で俺を殺しにきたのがわかった。
「いきなり孫を殺そうとする人がいますか?」
「うむ、防ぐとわかっておったからのう。しかし、思ったよりも早くに対応したのは見事じゃ」
「軽く傷がありますけどね」
まあ、既に治りかけているほどに自然治癒も早いのだが。それでもいきなりトップギアでくるとは思わなかったのでそう言うとお祖父様は刃先に付いた俺の血を眺めてから言った。
「少なくともベクトルよりはしっかりしておるようで安心じゃよ。あやつは肉親だとこんな可能性は一ミリも考えずに首早々にはねて終わっておったろうからの」
「本来それが正しいのです。常に敵を探すのは決して褒められた行為ではありませんから」
「それもそうじゃのう。じゃが、これでハッキリとした。現時点でワシよりお主の方が圧倒的に強いことをのう」
「強いって・・・さすがにお二人にはまだ敵わないと思いますが?」
そう言うとお祖父様は笑って言った。
「その謙虚さは美徳じゃが、冗談抜きでお主は強い。我が一族の歴史においても天才と言ってもいいほどの才と、頭脳を持っておる。そして今後もそれは伸びるじゃろうが・・・さらに魔法を奪う魔法という力にプラスして他の魔法を使える上に、我が一族の魔法を無効化する剣『ゼロ』も使いこなすほどじゃ。その存在は間違いなくいつか最悪を生むことになるじゃろう」
「まあ、その可能性を否定はしません。事実やろうと思えばおそらく不老不死もできますから」
現実ですでに魔法としてそれを得てしまったのだ。だからこそ不死身と言えなくはないが死ぬことができないわけではない。
「俺はこの力を墓場まで持っていきますよ。アリスと一緒に天寿をまっとうするのが俺の老後の目標ですから」
永劫の時を生きるなんてなんの意味もないことはしない。老害にならないうちに隠居して若い人間に託すことも大切なのだ。まあ、年をとらないこともできるだろうけど、俺はアリスと一緒にきちんと老いて人間として生涯を終えたいのだ。だからこそこんな力は使わないで俺と一緒に消えるのが一番だろう。
「なるほどのう・・・結婚式にはワシも呼んでくれるのじゃろうな?」
「ええ、もちろん」
「ならばいい。お主が決めたことならワシは祖父として応援するだけじゃ。老兵は早々に退くのが若い者のためにもなる。ただ、気をつけるのじゃ。お主がどう考えていようと誤解する者も多いということを」
まあね。これだけ力を持ったら排除する連中も当然出てくるだろう。まあ、負けるつもりはないが、アリスを危険にさらしたくはないのできちんと準備をする必要はあるということだろう。あの女から厄介なものを押し付けられてしまったが、過ぎたことを口々言っても仕方ない。なら、俺は俺にできる方法でアリスを守って幸せにしてみせる。あの女の思惑がどうだろうと、俺は自分の好きな人をきちんと守りきってみせる。うん、結局やることは変わらないと思いながらその場を後にするのだった。




