64 騎士団長の息子は子供達に語る
そして伝説に
「先生って貴族なんだよね?」
本日の授業が終わると地面に横になっていたガリバーがそんなことを聞いてきた。
「そうだけど、どうかしたの?」
「って、ことは先生にもいるの婚約者ってやつ」
その言葉に残りの二人も興味深そうにこちらに視線を寄越した。
「せ、先生いるんですか?婚約者」
「興味深いね。こんなに強い先生の婚約者ってことは同じように脳筋な人なのかな?」
「誰が脳筋だ」
ライアに軽くチョップをいれてから、俺は少しだけ考えてから言った。
「俺には勿体ないくらいに最高の婚約者だよ」
「へー、そうなんだ」
「エクス先生はその人のこと好きなの?」
「当たり前だ。むしろ好き過ぎるくらいだよ」
その言葉にガリバーは首を傾げるが、マナカとライアは瞳を輝かせて聞いてきた。
「それって、もしかして今流行ってる『騎士の物語』みたいなことなのかな?」
「騎士の物語?」
「知らないんですか先生。とある王族の婚約者を救った騎士様の話です。なんでも不当な罪で婚約破棄する王子からその婚約者を救って自分の妃にする話だそうで、マナカが熱く語ってるんです」
「だって、ライアちゃん。凄く素敵なお話なんだもん!実話をベースにしたとかで女の子なら誰だって憧れるよ」
珍しく瞳を輝かせてハキハキ語るマナカ。しかしそうか、俺とアリスの婚約の話がここまで広がっているとは。他国に出回っているかわからないが、子供達でも知ってる童話レベルなのだろうか。だとしたら俺とアリスの婚約は未来永劫語られるのだろう。
「そういえばこの国で起こったこととか・・・先生何か知ってますか?」
「さてね。その話と関係あるかわからないが確かに俺も婚約者を奪ったことはあるね」
「奪ったですか?」
「ああ、王子様から奪って自分の物にした。今はラブラブだよ」
「へー、そうなんだ」
興味なさげなガリバーの返事だが、マナカとライアは俺の言葉で察したように頷いて言った。
「そっか、先生みたいな人なら確かに納得だね」
「う、うん。でもまさか先生がそうなんて・・・すごいね」
「そういう君たちはどうなんだ・・・と、聞くまでもないか」
「ですよ。私達から野暮なことは言いませんよ」
首を傾げるガリバーとマナカを意味深に見つめる俺とライア。薄々わかっているが、どうやらマナカはガリバーのことが好きらしい。奥手だから決して言葉にはしないだろうが。無自覚にラブコメしててなんとも凄いが、まあ、それは俺が言うべきことではないのでスルーする。
「今度、先生の婚約者にも会わせてよ」
「時間があればね」
「そういえば、先生はいずれは騎士団長になるんだよね?」
「そうだけど。それがどうかしたの?」
「ならさ、俺も先生の部下にしてよ」
ガリバーからの思わぬ申し出に驚いていると、残りの二人も控えめに手を上げて言った。
「騎士団じゃないけど、エクス先生の元でなら働きたいかな」
「わ、私もです。お役にたてるかわかりませんが・・・」
その言葉に俺は少しだけ考えてから言った。
「ま、その気持ちは受け取っておくよ。将来的にいずれ本当に俺の元で働きたいならきちんと準備するからね」
「俺が先生の部下になったら他の奴らなんかより絶対に強いから!」
「ま、そうなる可能性も高いね」
騎士団のメンバーも決してレベルは低くないが基本的なスペックが人間なので低いのだ。その点ガリバーは魔法ありならそこそこ戦えるので将来的が楽しみだ。他の二人も使用人としてもそうだけど、細かい仕事なら任せられそうだ。
「そういえば、先生の首のやつなんか変な形だね」
「これのこと?ロケットペンダント。大切な人の写真をいれておけるアクセサリーだよ」
俺は軽く中を開けてからそれを三人に見せると皆アリスの可愛さに驚いていた。
「すっげぇ・・・」
「綺麗ですね・・・」
「先生マジですか・・・」
三者三様に似たような感想が出てくることに頷いてから俺はロケットペンダントを仕舞うと笑って言った。
「一応忠告するぞ。俺は婚約者のことになると見境なくなるから、きちんと注意するように。とくにガリバー。アリスのことを少しでも意識するようなら容赦はしないからね」
「うわぁ・・・子供相手にして大人げない」
「もちろんだよ。俺は婚約者のことになれば譲らないからね」
「先生の婚約者をどうこうすることはないよ。だって、先生敵に回したくないもん」
その言葉に残りの二人も頷いているのでとりあえずは大丈夫だろう。小さな好意でも見逃しはしない。アリスに対する独占欲はもはや少しでも意識したら即戦争準備に入りかねないほどだ。まあ、子供の淡い幻想くらい許したいが、その恋心が大人まで続いてアリスが若い子に行くのは嫌なのでその芽はきちんと摘んでおかないとね。アリスを取られないためならどんな汚いことでもする。格好悪くてもアリスの前だけで格好良ければいいのだ。全てはアリスのために。そんな風に教え子達に語りながら牽制をする。まあ、この賢い子供達なら大丈夫だろうけど、一応ね。
やれることはなんでもやらないとね。




