59 騎士団長の息子は祖父に会いに行く
少しだけ時間が進んだ・・・のかな?
「おう、来たか。元気そうじゃのエクス」
「お久しぶりでございます。お祖父様」
本日、俺は何故か領地の祖父を訪ねていた。何やら用事があるとのことでわざわざ足を運んだのだが、お祖父様は俺の顔を見ると頷いて言った。
「なるほど。お主が変わったとベクトルからは聞いていたが、予想以上じゃの」
「お祖父様はお変わりないようで何よりです」
記憶にある白髪の髭の長い初老の男性から1ミリも変わっていないので、そう言うと髭を触りながら言った。
「ジジイはそう易々と変わらんとて。時にエクスよ。もうすぐ学園を卒業して騎士団に入ると聞いたが誠か?」
「まだ早いですが、あと数ヵ月でそうなりますね」
転生してから半年くらい経つが、時期的にはもうそんな季節になりつつあった。アリスとイチャイチャしていると時間を忘れてしまうのは仕方ないことだろう。ここ最近はアリスが我が家に来ることも多くなり、俺も乙女ゲームのフラグ潰しやら、『プロメテウス』の陰謀に巻き込まれそうになったり、はたまた世界の終焉を望む謎の悪の組織の企みを潰したりと忙しい日々を送っている。
なんか転生してからラノベ主人公並みに忙しい日々を送っているが、俺としてはアリスとのイチャイチャに全力を出したいのでそういう展開はご遠慮願いたいところが本音ではある。まあ、そんな本音を抱きつつも何故かその過程で色々と世界の真実に近づいたりしたが、まあそれは別の話。異世界転生の謎にも迫ったけど、そんなのはどうでも良くて俺はアリスとの出会いが運命であったと信じているからだ。何よりそんな世界の真実なんて誰も興味ないだろうしね。
「それでだ、エクス。本日はお主に問うことがあって呼んだのじゃ」
「なんでしょうか?」
「エクス、お主子供は好きか?」
「人並みです」
質問の意図を掴みかねて無難に答えるが子供自体は嫌いじゃない。もっとも一番はアリスと俺の子供なのだろうけど。というか、やっぱりアリスとの間に確かな形としても欲しいけど、母親アリスを見てみたいという気持ちも強かったりする。まあ、でも妊娠、出産は母体にかなり負担がかかることなので無理強いはしたくない。もし出産の時に立ち会えないようならこの国を滅ぼそうかと思うほどに悩んでしまう。そんな俺の回答にお祖父様は微笑んで言った。
「ならば頼みを聞いてもらえるか?」
「内容にもよります」
「ほほ、なあに、大したことではないよ。お主にある子供達の教師をお願いしたいのだ」
「拒否権はありますか?」
思わずそう聞いていた。面倒な展開にまたなりそうだという予感にそう言うとお祖父様は少しだけ驚いたような表情を浮かべてから笑って言った。
「断る理由を聞いてもよいか?」
「婚約者との時間を少なくしたくないので」
「婚約者・・・そういえば、お主はミスティ公爵令嬢と婚約したのじゃったな。道理で」
何やら納得したように頷いてからお祖父様は言った。
「実はな、お主と同じように魔法を使える子供なんじゃが、出来れば力の使い方を教えてやってほしいのじゃ」
「何故私なんですか?」
「なあに。今のお主ならワシやベクトルなんかよりも強いだろからの。だからこそ頼みたいのじゃ」
「お二人にはまだ敵いませんよ」
「謙遜するな。お主おそらく違う世の理を見たな?」
その言葉に驚いてしまう。転生のことを言い当てた。いや、近いことを読み取ったことに驚いているとお祖父様は笑って言った。
「なあに。そのことは今はよい。それよりもお主にしか頼めないのじゃが・・・ジジイの頼みを引き受けてくれるな?」
その言葉にしばらく思考を巡らせてからため息混じりに言った。
「規定の時間以外はしませんからね」
「それで構わん。それと、本日はお主に渡すものがあったのだ」
そう言いながらお祖父様は近くの棚から飾られていた剣を掴むとそれをこちらに渡してきた。
「その剣の名前は『ゼロ』あらゆる魔法を無効化できる力を持つ我が一族の秘宝じゃ」
「それを何故私に?」
「なあに。可愛い孫が最近あっちこっちで大変だと聞いてな。少しでも力になりたかったからじゃよ。それにベクトルの奴はこの剣と相性が悪いしの」
相性?首を傾げるとお祖父様は説明してくれた。
「その剣は持ち主の気持ちに応じて力を示す。より真っ直ぐな思いが力になるのじゃ」
「父上とは相性が悪いと?」
「あやつは良くも悪くも不器用じゃからの。母親に似た器用なお主ならこいつと相性もいいじゃろう」
そう言われて剣を鞘から抜くと確かに何やら変なプレッシャーを感じた。やがてそれは馴染んで途端に剣が軽くなる。何度か振るが全く重さを感じずに尚且つ確かにそこに力が溢れてるように感じる。それを見てお祖父様は頷いて言った。
「どうやらお主の何かの気持ちに反応しているようじゃの。その剣を持ってゆけエクス」
気持ちねぇ・・・アリスへの気持ちかな?にしてもまた変な武器を手にいれてしまったものだとため息をつきたくなる。まあ、あるに越したことはないなと思いながら俺は鞘に剣を仕舞うのだった。




