52 騎士団長の息子は婚約者を愛でまくる
アリスターン
日の出と共に俺は家へと到着する。わりと本気で走ったお陰か予想より早く着いたので素早く汗を流してから着替える。使用人の人達が予定より早い帰りに驚いていたけど、一刻も早くアリスに会いたいので仕方ない。
そうしてしばらく色々とやってから俺はいつもの登校の時間より少しだけ早めにアリスを迎えに来ていた。しばらくアリスが出てくるまで気長に待とうと思っていたが、予想よりも早く準備を終えたアリスが出て来て驚いたように言った。
「エクス。確か今日は休みじゃなかったのですか?」
「アリスに会いたくてね。早く戻ってきた」
「えっと・・・嬉しいですけど、確かエクスはサルバーレ王国に行くと言ってましたよね?どうやってこんなに早く戻ってきたのですか?」
「俺くらいになると、生身で馬車より早くに走れるからね」
「そうなのですか?でも、嬉しいです。エクスがいないと寂しいですから」
そう微笑むアリスに俺は思わず反射的に抱きしめていた。なんでだろ。一睡もしてない上に結構動いたのに眠くもないしむしろこれからアリスとゆっくりできると思うだけで元気になれる。徹夜明けのテンションみたいなものではない。むしろ徹夜自体は大してきつくはなく。アリスに会えなかった時間が辛かったくらいた。やはり1日会えないだけでかなり辛いものだったからね。
「え、エクス。こんなに早くに大胆ですよ・・・」
「ごめん。やっぱりアリスに1日会えないだけで凄く辛かった。我が儘かもしれないけど、俺はアリスと一緒にいたいんだ」
「エクス・・・」
俺の言葉に照れながらもアリスはポンポンと背中を叩きながら言った。
「私も1日が凄く長く感じました。変ですよね。エクスに会えない時間がこんなに辛いものだなんて知りませんでした」
「色々話したいことはあるけど・・・その前に言いたいことがあるんだ。ただいまアリス」
「はい。お帰りなさい。エクス」
微笑むアリスに俺はようやく帰ってきたことを実感する。色々と問題は山積みだけど、原点は忘れないでおこう。俺はアリスに笑顔でいて欲しいのだ。だからそのためならなんでもする。でも今はこうしてアリスの笑顔に心を安らげても構わないだろう。
「リンス殿下が婚約ですか?」
「ああ、戻ってきたら正式に公表するだろうね」
馬車の中で話すのはアリスにとって面白そうな話題。闇の部分は見せずに女の子が好きそうな恋話をする。
「そうなんですか。あ、あの・・・サルバーレ王国の王女様は二人なんですよね?エクスは大丈夫でしたか?」
「俺なんて相手にもされないよ。むしろアリスのことで有名人ではあったけどね」
「私のことですか?」
「ああ、向こうの国でも俺がアリスを奪ったことが噂で流れていたよ。だから向こうでもアリスのことを王女様に話したら是非とも会いたいと言っていたよ」
可愛い心配をするアリスにそう言うとアリスは少しだけ驚きつつも笑って言った。
「そうなんですか。エクスが向こうで王女様に目移りしないか少しだけ心配してたんですが・・・」
「ん?俺がアリス以外の女の子に興味を持つと?そんな可愛い心配をするなら」
ふにふに、ほっぺを両側から軽くつまんで言った。
「この可愛いほっぺたを食べちゃうけどいいかな?」
「ふぁ!?」
顔を真っ赤にして反応するアリス。そうそう、こういう可愛い反応を期待していたんだよ。やっぱりアリスはこうして照れてる表情も世界一可愛い!
俺がしばらくアリスほほっぺたで遊んでから離すとアリスはこほんと話を変えるように言った。
「こちらでは特に大きな出来事はありませんでした。ただ、マリアが・・・」
「何かあったの?もうしそうなら今度こそ斬るけど」
「ち、違いますよ!えっと、実は執事のベリスといい雰囲気なのを見かけたのです」
思いがけない情報に少しだけ驚くが、まあ、ある意味予想通りの展開に納得する。
「まあ、相性がいいんだろうね。俺はあの女のどこがいいのかさっぱりだけど」
「エクスもマリアと仲良しじゃないですか。少しだけ嫉妬したくなるくらいに」
「アリス。冗談でも嬉しくないよ。あんな女と仲良しなんて本当に嫌だ。俺はアリス以外とは仲良くなりたくないからね」
ヒロインとは利害が合うからこそ組んでるだけだ。それ以外に組むメリットなんて一切ない。だからこそ俺は必要最低限のことだけやり取りして連携しているだけだ。
「ま、そんなことはさておき。アリスに相談があったんだ」
「相談ですか?」
「うん。結婚式なんだけど、どこでやろうかと思ってね。どちらかの領地かいっそのことランドリー王国の王族専用の式場を借りることも考えたんだけどどうかな?」
「そ、それって大丈夫なんですか?」
「まあ、向こうも俺にはかなり借りがあるから断れないと思うよ。アリスが望むならそうするけどどうかな?」
そう聞くとアリスはしばらく考えてから首をふって言った。
「私は・・・なるべく小さな式で構いません。知り合いだけの小さな式でエクスとささやかに結ばれたいです。貴族としてというよりもエクスのお嫁さんにその・・・なりたいなって思いまして」
そう照れつつ笑うアリスにかなりぐっとくる。うん、やっぱりアリスは最高だな!




