18 騎士団長の息子は決闘をする
圧勝フラグ
放課後、俺とアリスとリンスとマリアは訓練所に向かうと、えらい人だかりが出来ており俺は思わずげんなりしながら言った。
「これは・・・えらいギャラリーがいるな」
「まあ、それはそうだろうね。何しろ一人の女をかけて戦うんだから盛り上がらないわけがない」
「その言い方はやる気なくすからやめてくれ。俺はアリスのためにしか剣はとらない」
「だろうね」
リンスの言葉にさらにやる気が削がれるがなんとか頑張らないと。しかし、後々アリスのためになるとはいえ、ヒロインのために動かなきゃならないというのはかなり精神的には負担があるな。アリスのための苦労ならむしろご褒美なんだけど。そんなことを思っているとアリスが心配そうに聞いてきた。
「大丈夫ですか?エクス」
「ん?大丈夫だよ。そう簡単には負けないから」
「そうではなくて・・・なんだかいつもより元気がないので少し気になりまして。私に出来ることがあればなんでも言ってください」
そんなことを言うアリスに俺は一気にテンションが上がってきた。え、何、もしかして細かい変化まで読み取れるようになったの。それはかなり嬉しい。しかも何でも言ってくださいって明らかな18禁のイチャラブフラグじゃないだろうか?そんな下心を表に出さずに俺はアリスの頭に手を置いて優しく撫でてから言った。
「ありがとう心配してくれて。それなら勝ったらご褒美をもらえるかな?」
「ご褒美ですか?」
「ああ。勝ったらアリスの口づけが欲しい」
そう言うとアリスは顔を赤くしてからしばらく視線をさ迷わせて静かに頷いた。
「わ、わかりました。それでエクスが少しでも元気になるなら」
「ありがとう。それならこの勝負は負けられないね」
俺はそう言ってアリスに微笑んでからファン少年に向き合う。すると、彼は俺を見て挑発的な笑みを浮かべて言った。
「よく逃げずに来たな」
「前々から言おうと思ってたけど、貴族ならもう少し口調を丁寧にしたらどうだ?」
「ふん!たかだか爵位で何が変わるんだ。所詮は国王が決めた単なる序列に過ぎないだろう。でなければ俺が男爵などという地位にいるわけがないのだ」
自信過剰もそこまでいけば大したものだが、しかしこの子はやはり危ういな。この思想、いずれは国を裏切りスパイとなって哀れに道化として踊ることが宿命付けられているようだ。実際、この光景を見てる王太子のリンスも彼の危うさに気づいたのか眉を潜めている。まあ、だからこそ早めに処分するべきなのだが・・・
「最後に確認する。お前が勝ったらマリアを解放。私が勝ったらなんでも望みを聞く。この言葉に異存はないな」
「当たり前だ、貴様こそ後で無効にすることは出来ないからな!」
「そんな見苦しい真似はしませんよ」
多分。まあ、アリスの前で格好悪い姿を見せるつもりは毛頭ないので、確実にないが、物事はいつだって起こってからじゃないと実際に判断は出来ないものだからな。そう言うと彼は腰の剣を取り構える。俺も借りた剣を腰から抜くが、少しだけげんなりしてしまう。とにかく軽すぎる。訓練用のものだからか安い剣だからかかなり軽いもので、正直相手の剣よりも遥かに頑丈さが低いのがわかる。これは打ち合いは無理か?何回かは出来そうだけど、基本回避で剣は受け流すくらいで丁度良さそうだな。こんなことなら自分の剣を持ってくれば良かったかもと思うがその必要性を感じなかったから仕方ない。
そうして互いに構えると、審判を頼んだ生徒がある程度の距離に立ってから大きな声で開始を告げた。
「はじめ!」
「はぁ!」
その合図と同時に斬り込んでくる彼だが、エクスの身体能力は化け物並み、この程度の速度は止まって見えており俺は苦もなく避ける。その一撃を避けたことにより、驚愕する彼にこのままチェックをかけることもできたが、そんな不粋なことはせずに俺はゆっくりと彼に話しかけた。
「戦いの中でそんなに悠長に驚いてちゃいけないよ?」
「・・・!この!」
そうして第二撃がくるがそれを簡単に避ける。それから何度となく剣で襲いかかってくるがどれも簡単に俺が避けるので苛ついたのか彼は言った。
「逃げてばかりないで戦え!」
「そんなことをしたらすぐに終わるでしょ?それじゃあ君と戦ってあげる理由がないだろ?」
「ふざたことを!」
「本気だよ。私はね・・・君に教えたいんだよ。実力差というものをね」
「・・・!くそが!」
そう言ってから斬り込んでくる彼に俺は剣を収めてからその軌道を読んでゆっくりと両手でタイミングよく受け止める。所謂白羽取りだ。
「なっ・・・!」
「わかったかい?今の君は力がなく単に喚くことしか出来ない子供だということが」
「黙れ!卑劣な貴様に負けるわけがない!」
「君が本物ならそうだろうね。でも君はまがい物だ。マリアへの想いを言い訳にしてただ暴れることしかできない偽物なんだよ」
そう言ってから俺は彼の剣を真っ二つにすると、驚く彼の胴体に拳を放ってダウンさせる。
「ぐぁ・・・!」
「だから・・・本当に本物になりたいなら努力しろ。偽物でいいならそれもまた努力しろ。結果的に自分を変えられるのは自分だけだからな」
その言葉を聞いていたのかわからないが彼はなんとなく諦めたような表情を浮かべてから気を失った。すぐに呆気にとられていた生徒が俺の勝ちを宣言したことで周囲は盛り上がりをみせるが、俺はため息しか出なかった。




