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青みかん  作者: リュウ
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真冬の夜の夢

 冬休み中のある夜、俺が眠っているときに、嫌な臭いと人の気配がして目を覚ましてしまった。俺はこの悪臭が何か、すぐにわかった。酒とタバコが入り混じった、おとんの臭いだ。

 おとんのやつ、酔っ払って俺の寝室に来たのだろうか。良い迷惑だ。案の定、俺のベッドには夢うつつなおとんがいた。

「おとん、ここは俺の部屋や。さっさと自分の寝室に戻ってくれや」

 おとんに対して文句を言ったが、おとんには効いていないようで、おとんはへらへら笑いながら

「晴男、ただいま」

なんて言って、俺に抱きついてきた。

「気色悪いな変態。離せ!」

 夜中なので大声は出せないが、俺はそう言ってしまった。このまま朝までおとんと同じベッドで過ごすなんて、考えるだけで吐き気がする。俺はおとんの湯たんぽになんてなりたくない。

 仕方ない、おとんの寝室に連れて行くしかないか。とはいえ、おかんを起こして一緒におとんを運びたくはない。それに、そんなことをしなくても、俺一人でこの身長185㎝の大男を運べるのだ。

 さて、おとんをどうして運ぼう。寝ぼけている状態だから、背負うのは難しいか。じゃあ、抱えた方が良いか?でも、おとん相手にお姫様抱っこなんて、誰にも見られないとしても、したくない。あれこれ考えて、俺は、片腕でおとんを担いで、おとんの寝室まで歩いた。

「もう俺の部屋には来るな」

俺はそう言って、おとんをベッドに投げ捨てた。

「晴男?ありがとう…」

おとんを雑にベッドに投げたせいか、おとんが寝ぼけながらそんなことを言っていた。

 さあ、俺は自分の部屋に戻ってまた寝よう。そう思っていたが、その力もないくらい、眠くなっていた。

 考えてみれば、元々寝ていたうえに、一人でおとんをここまで運んできたのだった。それで、疲れていないわけがなかった。


 「晴男、晴男」

目を覚ましたら、俺はおとんの腕の中にいたからぞっとしてしまった。ということは、俺はあのままおとんの部屋で寝てしまったのか。そうわかったときに、とてつもなく悔しくなった。

「おめ、寒くねが?おらが目覚めたとき、おめは布団を被んねで腹出して寝でたから、ベッドさ入れて、ずっと抱っこしてたんだ」

おとんにそう言われた俺は、恥ずかしくて逃げ出したくなった。そのとき、初めて自分が毛布でぐるぐる巻きにされていることに気づいた。結局、おとんの湯たんぽになっていたということか。ずっと俺を抱きしめていたなんて気色悪いぞこの変態。

 そんな俺とは裏腹に、おとんは不思議そうに

「なしておめがこごで寝てたんだ?」

と聞いてきた。昨夜、俺の部屋で寝ていたおとんにそんなことを言われたくない。

 俺は、おとんに変な誤解をされたくなかったので、いやいやながら昨夜のことを全て話した。

「へば、おらは一晩中おめと一緒さ居たんだな」

おとんが嬉しそうにそう言っていた。

「黙れド変態!」

目覚めて早々吐き気がしてしまった。

「おめが運んでけれたおかげだべが、夢の中でおめが笑顔で駆け寄ってきたんだ」

おとんの夢の中のことなんて知るかよ。現実では絶対にない話だな。そもそも、どうして俺に対してそんな話をするのだ、このおっさんは。

 起きたばかりなのに、この時間そのものが夢だったらいいのにと思ってしまう。夢なら早く覚めてくれ。

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